シチリアでの感じたこと

 シチリアに2週間も滞在したのははじめてだったので、自分たちが生活をしている北イタリアとの違いを知る好機にもなりました。

 シチリアは美しいマーレがもちろん最大の魅力なのですが、様々な文化が入り混じっている島です。地中海のほぼ中央に位置し、要衛としていろいろな勢力が覇権を競い合った地。9世紀後半にはイスラムが掌握し、パレルモはイスラムの中心拠点となり急成長し繁栄したのです。その後ノルマン人が征服しフランス、スペインなどに次々に支配され、1861年にイタリア王国の一部になったということもあり、街並みからその歴史が感じられます。様々な文化が入り混じっていることと美しいマーレに囲まれていることが相まってか、北イタリアのヒトや時間の流れとのちがいを肌で感じました。

パレルモの中心にあるクアトロカンティ

 シチリアの街を日中散歩しているとき、通りがかりのおじさまに道を尋ねると、「きみたち、今日はとても暑くなるんだよ。街なんか歩いてはだめだよ。マーレに行くか、ウチにいなきゃ」と、ゆっくりとした口調で話してくれる。

 また、ボートの船長は「奥さんから電話がかかってきて、どこにいるの? と聞かれる。天気が良いのだからマーレきまっているよって。いつもあたりまえのことを聞かれるんだ」と笑顔で答えてくれたのが印象的でした。羨ましいほど、自然と共存し日々を生きているのです。

 そんなシチリアに、どちらかというと仕事という時間軸をメインにして生活している、多くの北イタリアのひとたちが、今夏、シチリアを訪れていたのは、美しいマーレで過ごすことと、この地のどこか自由で、ゆったりとした時間に心身をゆだねたいと潜在意識からくる気持ちが強かったのではないでしょうか。

 まだまだリモートワークが続き、感染者が減っているとはいうものの、完全に戻ったとはいえない日常生活。そしてあらたなグリーンパス問題など、ウイルスとの共存からくる、ストレスも少なからずとも影響しているように思えるのです。

 自然とともに暮らしている人たちの方が、うまくストレスを回避しているように、船長の笑顔からも感じました。そして、北イタリア人のミオ・マリートがシチリアを選んだことを、旅のおわりに理解ができた気もしました。

マーレと共に生きている船長
船長がまるでプールみたいというファビリアーナ