今回のオリンピックは多様性を受け入れるということに始まり、世界で起きている様々な社会問題を投影する形となった。大会関係者の過去での差別言動による相次ぐ辞任、選手たちによる自主的な人種差別反対の発信、LGBTQの選手の活躍など社会問題の大きな発信の場になった。

 また、参加選手の亡命や難民申請などの問題にも直面した。昔なら選手自身がそういった意見を表明することを懲罰の対象としていた国もいっぱいあった。そのように表現をはじめから制限している国やスポーツ団体があった。いや、今でもそのような国々は存在する。オリンピックは選手たちを中心に”モノ申す”ことができるチャンスがある場となってきている。

 TWISTIES と言われる演技やプレーでの心と体の不一致という問題も、幾人かの勇気あるアスリートたちにより明るみに出た。それに関連して選手に対するメディアのインタビューの在り方にも目が向けられた。もはや”有名税”を許さない時代に入ったのかもしれない。LGBTQのイギリスの選手は胸を張って金メダルを受け取り、難民選手団のソマリア出身の2選手が男子マラソンで銀メダルと金メダルを獲得した。競技中に他国の選手を気遣う光景はいろんなところで見られた。またジャマイカの陸上選手の窮地を日本のスタッフが助け、結果金メダルの獲得につながった。これらはやはりオリンピックの場でしか目にできない、美しい光景だと思う。

ドラマ・ブックショップが復活した。今年で創業104年目となる老舗で演劇関係の歴史的書物や台本など数千冊ある。一時は閉店の危機が騒がれたが、ブロードウェイミュージカルの中でも大人気の”ハミルトン”の主演俳優や監督などが店存続のため買収した。マンハッタンの老舗が守られた。ニューヨーカーにはうれしい話

Smile again, hug again,…復活するニューヨーク – New York Tough

 ニューヨーク市のワクチン接種率は、必要回数の60%近くになっている。接種する人達に現金給付も含めたあらゆる手段で、拡大しているデルタ株に対抗しようとしている。またファイザー社のワクチンに関しては基礎疾患を有する人、感染リスクのったかい環境にいる人、また65歳以上を対象として3回目の接種(ブースターショット)も2回目の接種後6か月経つと認められ、ほかのワクチンも三回目の接種の審査承認の手続きに入っている。

 マンハッタンを歩いているとマスクをしていない人が増えてきた。特定の屋内の場所や公共交通などを除いてマスク着用の義務化はなくなった。元気な人々の顔が見られるようになった。今まではいろんな制限から”NO”という言葉を使うことが多かったが、今は”YES”を使うことのほうが多くなった。多くのお店やレストランが廃業してしまったのは、買い物好きで食いしん坊のニューヨーカーにはさみしいことである。

 この数か月人々は着実に買い物に外出し、噂のレストランに足を向けるというニューヨークの生活の大切な一部が戻ってきたことはうれしいことであるが、それと同時に”日常”というものに幸せを感じ少し謙虚になっている自分に気が付く。マスクを外して吸い込む空気も、夏であればいつもならこのにおい何とかならないかと思うはずなのだが、すがすがしく感じる。ただニューヨーク市内のレストランは店内飲食の場合ワクチンパスポートが必要になった。また政府や企業でもワクチン接種の義務化が始まっており、新学期からの子供たちへのマスクの義務化とともに個人の自由とのからみで社会の中で軋轢がさらに深まる可能性もある。連邦航空局(FAA)はマスク着用を拒否し機内でのクルーや乗客への暴力行為に関して最高数十万ドルの罰金を科す法案も準備し、フライトに際してのマスク着用義務がある期間は酒類の機内提供もしないことになっている。

西39丁目に復活したドラマ・ブックショップの店内は”ハミルトン”の舞台デザインを担当したデヴィッド・コリンズ氏が手掛けた。店内の天井には演劇関係の本などが連なったアート作品が素敵な演出となっている。また、ゆったり座れるソファーやアームチェアーが何か所にも設置されゆったり本を選べる。カフェも併設してちょっとしたブレイクに最適である