ダイアナ妃生誕60年にあたる2021年。1986年、来日した妃のドレスをデザインしたYUKIこと鳥丸軍雪さんに当時のこと、イギリスに最も長く住む日本人としての思いを中野香織さんがインタビュー。最終回となる後編は鳥丸さんから見た日本の印象や自らのデザインについて、現在の取り組みをご紹介します(全3回)。

文=中野香織 

デザイナー鳥丸軍雪インタビュー(前編)
デザイナー鳥丸軍雪インタビュー(中編)

*新聞など大手メディアでは「ダイアナ元妃」と表記しますが、離婚後もPrincess of Wales の称号を保っていることと、「人々の心の王妃になりたい」という意志をくみとって、私の署名原稿ではすべて「ダイアナ妃」と表記しています。

鳥丸軍雪

たくましさを感じた東京五輪の開会式

——ダイアナ妃の話題から少し離れて、イギリスに最も長く住んでいる日本人としての軍雪さんに伺います。コロナになってイギリス人のメンタルに何か変化はありましたか?

鳥丸 みんなは親切になりましたね。以前よりももっと、助け合っていこうじゃないというフィーリングを強く感じます。

——それはすてきなことですね。日本ではむしろ分断が進み、行政への不満も募って、どこか殺伐とした部分も増えた気がしています。ロンドンからご覧になった東京オリンピックの印象はいかがでしたか?

鳥丸 東京オリンピックは、苦難をのりこえてオルタナティブなスポーツを考えてくれた、と好評ですよ。東北の地震があったときもそうでしたが、イギリス人は、日本人のたくましさを高く評価しています。日本人ってすごいね、誇りに思わなくちゃいけないね、と言われます。

 オープニングセレモニーのとき、質素だけどその裏にたくましさを感じました。涙が出るくらい感動しましたよ。華やかなオープニングではなかったとしても、厳しさに直面している状況からして、あれ以上に華やかなのはだめですよね。本当のオリンピック精神をまっとうしていたのではないですか。シンプルだけど、団結して新しいスポーツの提案をする、という精神が感じられたから、イギリスではみんな感動していますよ。

——ええっ? そんな好評価を聞いたのは、初めてです。多くの日本人からはむしろ酷評を浴びていました。

鳥丸 マイナスをうまくプラスにもっていった、世界に希望を与えたイベントでしたよ。日本から発信されたということは、外国に住む日本人にとっては、とてもうれしいことです。

 私は63年、イギリスに住んでいて、おそらく最も長くイギリスにいる日本人です。国籍はイギリスだけど、自分が日本人であるということを、一日も忘れることはありません。私の言動を見て、日本人がみんなそうだと思われてしまうので、日本人を代表しているような気持ちになってしまいます。日の丸の旗をしょって生きていると言われますが、ほんとうにそうなのです。

 

タイムレスな美を創るとは

——軍雪さんは日本人のいいところを凝縮したような方ですよね。

鳥丸 責任感を感じるのです。私は有名ではありませんが、デザイナーだから注目されます。いやな奴だと思われることをしたくない。63年ずっとそのように考えてきたので少しは身についているかな。