おもちゃのフィギュアと勘違い?

 西山は現在19歳、高浪は20歳。学部は異なるが、早稲田大学に在学する。

 2人はそれぞれの場所でそれぞれにきっかけを得てスケートを始め、アイスダンスへと進んだ。そしてこれからを担うであろう期待も寄せられている。

 高浪はアメリカでフィギュアスケートと出会った。

「母の仕事の関係でアメリカに3年ほどいました。小学3年生の頃、お母さんに『スケートリンクに行ってみない?』と誘われました」

 それがスケートとの出会いになり、デトロイトスケーティングクラブで練習に励んだ。その頃からアイスダンスに触れていた。

「パートナーはいなかったけれど基礎のパターンダンスなどはシングルと並行してやっていて、4、5年生くらいからはダンスのレッスンも受けていました」

 帰国してからもスケートを続けていると、コーチから「アイスダンスをやってみない?」と声をかけられた。

「アイスダンスの経験があるコーチで、アメリカで習っていたのを知っていましたし、私がスケーティングが好きなのを知っていたからだと思います」

 パートナーがみつかり、滑ってみてアイスダンスの魅力を知った。

「2人だから伝えられるストーリー、プログラムに楽しみが湧いてきて、シングルよりもやりたいな、と思いました」

 中学2年生で初めて全日本ジュニア選手権に出場。それも合わせてアイスダンスでは女性スケーターとして史上最多の5回、同選手権に出ていることがアイスダンスのキャリアを物語る。アイスダンスの選手層の薄い日本では貴重な経験だ。最初に組んだパートナーとは異なるが、世界ジュニア選手権やジュニアグランプリシリーズにも出場している。

 西山は自身の来歴をこう語る。

「家族でスケート教室に行ったとき、そこにいたコーチの方に『君、フィギュアをやってみない?』と声をかけていただきました。そのときはフィギュアスケートの存在を知らなくておもちゃのフィギュアと勘違いをしていました。『この先生が一緒にフィギュアで遊んでくれるんだ』と思って、『やります』と言いました(笑)」

 勘違いから始めたフィギュアスケートだったが、やってみると楽しくて、続けてきた。

 全日本ノービス選手権(ノービスB)で優勝するなどの成績を残し、中学3年生の冬にクリケットクラブに移った。

 平昌オリンピックが終わったあとのことだ。クラブのアイスダンスのコーチであり、高浪と西山のコーチでもあるアンドリュー・ハラムから声をかけられた。

「日本はシングルが強いのに団体でメダルを獲れないのはカップル競技の弱さが原因にあるから、もし君がアイスダンスをやったら団体戦で貢献できると思う。やってみたら?」

 そのときを振り返りつつ、西山は語る。

「表現、スケーティング、ステップが好きで、ジャッジの方などにも表現やスケーティングを評価していただいていました。そういうところから向いているのではないかと思われたのかもしれません」

 そのシーズンの初めに怪我をしてシングルの大会に出場することができなかったこともあり、「トライしてみよう」と踏み切った。

 パートナーの紹介を受け、2019-2020シーズン、シングルも継続しつつアイスダンスに参戦。ユースオリンピック混合団体で優勝、世界ジュニア選手権では日本歴代最高位を獲得した。

 期間に長短はあっても、それぞれにアイスダンスに取り組んできた2人は、高浪が2020年2月にそれまでのパートナーとの関係を解消し、西山は今年1月に解消に至った。

 パートナーがいなければ、アイスダンスは始まらない。

 そして、高浪と西山は、出会った。(続く)