※本コンテンツは、2021年6月25日に開催されたJBpress主催「第6回ワークスタイル改革フォーラム」のセッション1「デジタル企業へのNext Step ワークスタイル変革のカギは“健康管理のDX”」の内容を採録したものです。

株式会社アウトソーシングテクノロジー
ソリューションサービス事業本部 イノベーションプラットフォーム部
セールスディレクター
伊藤 幸弘 氏

健康管理で事故は防げる

 近年、健康管理で防げたはずの事故が後を絶ちません。

・バス・タクシー運転中の体調急変に伴う事故が急増。運転者の疾病が原因で運転を取りやめたケースは6年間で2.4倍に増えた*
・製造・建設・運輸業は労働災害死傷者の割合が多い業界の上位。転倒・転落、交通事故などの事故は、この3業種がそれぞれ上位を占める
・建設現場における実態調査**では「メンタルヘルス対策は安全に直結する」との結果が発表されている
* 国土交通省 統計 2019年
** 第36回首都高速道路工事に係わる安全管理講習会「労働災害の防止とメンタルヘルス」

 上記は、健康管理にまつわる懸念と実情を示した、一部の情報です。勤務中に事故が発生し労働災害となった場合、企業は多額のコストを負担する可能性があります。労災保険の休業補償は「給与の40%」が企業負担、慰謝料・見舞金は「100%」企業負担です。その他にも損害賠償請求、労災にあった従業員の解雇制限、労災保険料が上がる、行政の入札で指名停止処分を受ける、刑事罰を受ける、報道などにより社会からの批判を受けるなど、さまざまなコスト・不利益が発生する可能性があります。

 実際の企業損失の算出例としては、従業員約1,000名の企業で精神疾患者10名(退職3名、休職7名)が出たと仮定すると、トータル損失+コストは年間およそ5,500万円です。

健康管理のDXがもたらす相乗効果

 これらのリスク・損失を未然に防ぐにはどうしたらよいのか。それは、日々の健康管理によって前兆を把握すること、そして日頃から健康状態を把握することです。具体的には、健康管理のDXが鍵となります。客観的なデータをもとにした未然防止策の実施により、企業にとって重大なリスクとなり得る事故や生産性の低下を回避することができるのです。

 厚生労働省の「職場における心とからだの健康づくりのための手引き」にも、労働者の健康リスクを低下させるような、予防的な取り組みが重要であることが明記されています。健康管理のDXの必要性は、経営の大前提になっているとも言えるでしょう。

 企業活動の観点で考えても、健康管理のDXには従業員側(ワークスタイル改革)・企業側(経営課題の解決)の双方にメリットがあります。

 健康管理のDXの推進により、従業員が安心と快適性を手に入れれば、業務により集中できるようになるでしょう。その分、生産性そして労働力の質は向上します。他方で従業員は自らの健康状態を正しく企業(雇用主)に伝えられるようになり、企業は経営資源(ヒトとカネ)の損失を未然に防止でき、マネジメントが容易になります。

 従業員と企業の双方にメリットがあり、互いに作用しながら相乗効果をもたらす。健康管理のDXは、そのような魅力を持った取り組みです。