本コンテンツは、2021年3月16日に開催されたJBpress主催「第8回DXフォーラム」Day1のセッション「DX時代の基幹システムとECOシステムの活用とは?」の内容を採録したものです。

株式会社NTTデータ グローバルソリューションズ
ビジネスイノベーション推進部ソリューションセールス室・室長
八木 将樹 氏

2018年から変わらないDXの課題

 本日は、基幹系システムにおけるDXの課題と「ECOシステムの最大活用するための機能配置」と題した、当社が考える構想策定、DX全体アプローチについてお話しさせていただきます。

 当社は、2012年7月に設立された会社です。設立当初の従業員数は100名ほどでしたが、現在は約400名になりました。グローバルにビジネスを進めるNTTデータグループの一員で、SAP事業の中核会社となっています。

 海外グループ会社と連携し日本企業のお客様の導入から運用保守までを対応しておりまして、アジア・アメリカはもとより、世界のニッチなエリアへも展開をしております。

 SAP専業ベンダーではありますが、SAPシステムだけではなく、周辺の仕組みの導入も一体化して進めています。我々はこれを、「基幹系システムを中核としたECOシステム」と呼んでいます。コアは基幹系業務システムですが、何が何でもSAPソリューションで実施するわけではありません。SaaSの優れたソリューションがたくさん出てきていますし、コストも安いケースもありますので、これらを混ぜ合わせて全体感をもった仕組みをつくっていきます。

 2018年に経済産業省から「2025年の崖」という話が打ち出されました。2025年の崖とは、「経営者の方々はデジタルトランスフォーメーションの必要性を理解しているものの、事業部門ごとに構築された仕組みが原因となりデータ活用が進んでいなかったり、過剰なカスタマイズによって複雑化したりしている。業務自体を見直し、経営改革を起こしていかなければならない。それができない場合は2025年以降、最大12兆円の経済損失が生じる可能性がある」という話です。

 これについて、2020年末に中間報告が出ていますが、なかなか経営改革まで踏み込んで実施できていない企業が多い、という結果でした。

部分最適で複雑化、サイロ化したシステム

 お客様からよく聞く課題として、次のようなものがあります。

 1つ目は、基幹系システムの保守が徐々に複雑化してしまい、改修に多額の費用・工数がかかるということ。2000年代初頭、当時考えた全体最適で進めていったものの、部門ごとの要望を取り入れたことで徐々に部分最適になってしまっていた。結果として改修に工数がかかり、使いづらい仕組みになってしまった、という話をよく聞きます。

 2つ目は、周辺作業をExcelで実施しており、一部のメンバーしか対応できない状況になっていること。例えば管理連結を行う際には、全世界のデータを集めた上で製品別に分解して見たい、連結損益を見たい、といったニーズが出てきます。そういったところは全部を仕組み化しているのではなく、Excelのマクロで作りこまれているケースがあるのではないでしょうか。

 3つ目は、BIツールを入れたものの、データの集約基盤として扱われているということ。データソースの粒度が同じまま分析ができるとよいのですが、集約したデータを基幹システムに入れてつないだり、集約したExcelデータをダウンロードしてBIシステムに入れたりしているのでは、データの元がない状態なのです。

 データがシームレスにつながっていないために、シミュレーションができず、体系的にアクションまで落とし込めないことは課題といえます。例えば、データがバラバラになって、いろいろなExcelシートで分析されているので、損益分析がなかなかできない、といったことです。

 4つ目は、ワークフローの承認がバラバラになっていて連携が取れておらず、毎回システムにログインしないと状況がわからないこと。データ入力をしっかりやっていただく為には、ユーザビリティは非常に重要です。ワークフローの承認が面倒だからシステムを使わないということになると、最終的には使われない仕組みになっていってしまいます。

 5つ目は、海外を含めた業績管理データを可視化しようとプロジェクトを進めているものの、道半ばであるということ。経営者は業績管理と予実管理のデータをもとめていますが、Excelでないとできない、基幹系の仕組みとつながっていない、あるいは海外の拠点のデータの出どころがわからない等、データがとりづらい。また頑張って加工しても元のデータがおかしいということでみることができないという課題が発生しています。

 こうしたDXの課題は、2018年からあまり変わっていないのが現状です。課題解決のためは、事業部ごとのシステムの撤廃が重要になってきます。これまでは自部門だけがDXしようという動きが多く、サイロ化された仕組みになっているケースが多く見受けられました。このように、いつの間にか複雑化していった結果、DX化が単なる業務改善になってしまうのです。

 データのアップロードを自動化するだけがDX化ではありません。データの粒度がしっかり揃っているか、そのデータは本当に入力する必要があるのか。二重入力になってないか。そういったところを考慮した仕組みにしなければいけないと考えています。

DX化のジレンマがシステム連携を阻む

 具体的に、「連携されていないシステム」とは何かをお話しします。

 例として、PSI(Production:生産、Sales:販売、Inventory:在庫)計画で考えます。売上データに応じて生産データが作られる時、データの連携を電話やExcelで行っているケースが多いのではないでしょうか。購買部門との連携についても、厳しい現状があると考えています。

 また、実際の生産データや販売データを入力するときに、その粒度が合っているのかどうかも難しいポイントです。このような問題が重なり、業務システムがバッチ連携に近い状態になっているケースが多く見受けられます。

 では、「シームレスにシステム連携している状態」というのはどういうことでしょうか。簡単に申し上げると、購買・生産・在庫・品質・販売の各分野のデータが同じ粒度で上がってきて、原価・管理会計・財務会計につながる状態。そして、経営者が見る経営管理のデータにつながっていく状態を指します。

 理想は、仕入先から顧客までのデータが一元化されていることです。しかしながら、ここまでできているお客様はなかなかいません。これを阻む要因である「DX化のジレンマ」を3つお話しさせていただきます。

 1つ目は、小規模なDX化の範囲にとどまり、サイロを打破できないこと。経営者が「DXをしよう」とは言うものの、部門ごとに動くのが通常となっている日本企業では、現状の組織のままシステムを作ろうとしてしまいます。そうするとサイロのままとどまってしまう。その上からまた何かしよう、ということでいろいろやる。つまり、企業全体として何をすべきかを検討する機会がないまま過ぎてしまう。「DXに投資しました」という企業も、部分で終わっていることが多いのです。

 2つ目は、経営層の方が“Fit to Standard”にこだわりすぎてしまうことです。パッケージに合わせればいいという思考は、スピードの時代には、大局的には正しいのですが、対象をしっかり見極める必要があります。ここを間違えると、業務革新で経営改革をしなくてはいけない部分を忘れてシステム導入が目的になってしまい、うまくいきません。Fit to Standardについて我々は、どこの部分が合うか、ある程度の切り分けが必要だと考えています。

 3つ目は、「“ものさし”がない構想策定」です。Fit to Standardと真逆の発想で、ものさしを持たずに進んでしまったら本末転倒です。パッケージの良さは、ベストプラクティスがあるということ。それに合わせる必要があるのかないのか、というものさしを持ち、エリアごとに分けて見ていくことが重要です。

3つの機能を適所に配置し、ジレンマを解消

 続いて、当社が考える構想策定に話を移します。

 DX時代に必要なことは、「ECOシステムの最大活用するための機能配置」です。我々は「機能配置」というコンセプトを用いて、ジレンマを解消します。機能配置とは、機能ごとにグルーピングをして、システムのランドスケープをデザインする手法です。

 機能は、「基幹系内部システム機能」「周辺システム内でのシステム機能」「基幹系と周辺システム間のデータ連携」という3つに大別されます。

 「基幹系内部システム機能」は、原価計算・材料倉庫・出荷関連などのデータを扱います。先ほどお話ししたとおり、まずここでデータがつながっていないケースも多いと思います。

 原価計算一つとっても、SAP製品を使ったお客様でも、まだ標準原価の域を出ていないことはあります。生産データと絡んでくるところでもあり、入力が面倒だからデータが作れない、といったことも多く起きるエリアです。

 材料倉庫のエリアでいえば、伝統的にオフラインでやるところが多いようです。リアルタイムでのデータが取れず、各担当者が探す必要も出てきています。さらに、データもバラバラに入っていて、ロット単位にすぐに引き出せない、といったことも起こっています。

 「周辺システム内でのシステム機能」は、PSI連携や管理連結を扱います。PSI連携は、部門ごとの縦串でデータを取り、そこから電話等でやりとりしていることが多いため、うまくつながっていません。管理連結としても、各拠点とのデータのやりとりをExcelで行っているケースが多いのではないでしょうか。

 2つをつなぐシステムとしての、「基幹系と周辺システム間のデータ連携」は、E-BOM・M-BOM連携が1つの例となります。データ連携が取れていないことで、手作業がたくさん発生します。これらをなくし、データをつなぐ設計をしていくことが「機能配置」です。

 こういった機能配置は、プロジェクトの序盤にあたる「構想策定フェーズ」で取り組ませていただいています。ここで基幹系システム、ECOシステムでの役割分担を明確化しておくことで、その後の要件定義・実現化・稼働準備・稼働につなげていくのです。

 お客様が既存の仕組みを持っている場合には、切り替える必要があるところとないところを分け、柔軟に対応していきます。データの連携を妨げない範囲で、周辺の仕組みをいかに使いこなしていくか。こうしたことが重要だと考えています。

課題と解決策をマッピングし、
構想策定を推進

 当社のDX全体のアプローチとしては、「課題ソリューションテンプレート」というものがあり、これをデータとデジタル技術を活用する基盤構築に生かしています。基幹システムを中心とした基幹業務領域においては、DX化のポイントを意識した「課題ソリューション集」という、業務領域全般を網羅したマップを作っています。

 例えば、「課題」のカテゴリでは、「データ連携の不足」「自動化機能不足」「業務ルール不備」「業務プロセス不備」など、各社様でよく問題になるところを整理しております。

 一方で、「解決策」カテゴリには、「情報の一元管理」「業務の自動化」「操作性の改善」「業務契約プロセスの変革」などをリスト化しています。これらをマッピングし、構想策定を行います。

 進め方としては、まずはヒアリングをさせていただいて現状を把握し、「当社が考える機能配置」と「お客様の課題」を結び合わせることで、構想策定していく流れとなります。

 最後になりますが、DXには、やはりデータがしっかりつながることが重要です。バラバラの仕組みを持っていても、サイロ化しないような仕組みを考える必要があります。また、構想策定においては、真のFit to Standardを追及すること。フィットさせる部分とさせない部分があり、そうした部分を切り分けた上で進めていくことが非常に重要です。

 そういった意味で、サイロ化ではなく、ハーモニーがある機能配置が必要です。粒度を保ってデータを持ち、DXを現実化するために、皆様をご支援させていただきます。

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