基本的にターボ・エンジンなので、軽く踏み込んだときにターボが効き始めると、わっと加速する。シートはやや小さめだけれど、気にならない。プロペラシャフトのセンタートンネルが、ラダー・フレーム時代より高くなっているのは、それだけフロアが下がっているからだろう。自然なドライビング・ポジションがとれるのは、ホイールベースがちょっぴり延びたことの恩恵だ。

 直6エンジンをおさめる長いボンネットの後ろで、リア・アクスルの直前に座っているから、高速コーナーではアンダーステアっぽい感じがする。そういうときにはちょっとアクセルを緩めてやると、ノーズがスッとイン側に入る。

 1500rpm以上回っていると、6気筒エンジンが排気管を通して、ぼおおおおおおおおおッという、アボリジニの管楽器、ディジュリドゥみたいに、のどかな音色を聞かせる。さらに回転を上げると、ディジュリドゥの野太い低音のボリュームが増し、ときにヒュイーンという高周波音が入る。

 

めちゃんこ軽いから、めちゃんこ速い

ハードトップのおかげで、きわめて快適。エアコンは標準装備する

 河口湖で降り、ちょっとしたワインディングで、いわゆるドライブ・モードをS+に切り替えてみるとシフト・ダウン時にブリッピングする。スポーツカー気分が横溢する。コーナーでは、ゆったり、穏やかに、いい感じでロールし、完璧な50:50がもたらす前後重量配分もあって、コーナーに軽やかに進入する。めちゃんこ軽いから、めちゃんこ速い。めちゃんこ軽いからブレーキも強力だ。

運転席からの眺めは映画の主人公気分。そういう意味ではバイクに近い

 新しい酒を古い革袋に入れる。という警句は、両方ともダメになるのでやめなさい、という意味だそうだけれど、それをやってのけたのがモーガン・プラス6だ。いや、ホントに古い革袋ではなくて、デザインが古いだけで、革袋自体は新品なのだから、この警句はあてはまらない。新しい酒を、一見古い革袋に入れたドッキリなのである、プラス6は。

 伝統と革新。モダンとクラシックの融合。サイコーにオシャレで、現代に対する批評精神もユーモアもある、あいかわらず職人さんが手づくりを続けるアンチ・モダンなモダン・スポーツカー。

 ハードトップがなければなぁ、と多摩川沿いの一般道を走りながら思ったけれど、1日走ってみて、ハードトップがあったおかげで、風にさらされることなく、楽ちんなドライブができた。エアコンも付いている。なにより、撮影中にこのハードトップがとってもカッコいいことに気づいた。

 車両本体価格は1419万円。「いいよなぁ、これ」と、「秋刀魚の味」の佐田啓二のようにつぶやくほかない。4気筒モデルのプラス4もまもなく登場するはずで、そちらも大いに期待大だ。

内装はシート表皮も含め、素材も色も選択肢が複数ある。悩んでみたい
プラス6のバッヂは高性能の証だ。強烈な加速に、頭がクラクラする
短いワイパーが3つも並ぶのは、フロント・スクリーンの上下が狭いから
フロント・ブレーキは4ピストンで強力。車重が軽いからいっそう効果を発揮
モーガン社の2018年の生産台数は850台。その70%を32カ国に輸出している