本コンテンツは、2020年8月31日に全編オンラインで開催された「Digital Innovation Forum 2020 <夏>」での講演内容を採録したものです。
日本オラクル株式会社
テクノロジー事業戦略統括 ビジネス推進本部 部長
大橋雅人氏
直面する“非連続な変化”をDX進展の“好機”とするための取り組み
ニューノーマルの時代を迎え、新しいビジネススタイルや生活様式が求められる一方、データを活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)には、より一層の加速が求められています。そこで本セッションでは、新たなDX関連事例やオラクル自身の取り組みを元に、そのヒントをご紹介したいと思います。
そもそもDXとは「競争優位の創出」というゴールに向かい、2つの軸で進めるべきものでした。1つはデジタル技術の導入を軸とする“デジタライゼーション”。もう1つは働き方の改革、ビジネスモデルの変革、組織・文化の変革、業界・商習慣の変革といった“経営領域の変革”です。
ふり返れば、これまではともすれば“デジタライゼーション”が先行する中で、“経営領域の変革”の方はその変化の速度は遅かったところが否めないかと思います。前者に比べ後者は多大な工数と時間を要する難しい変革だけに、やむを得ないという捉え方もあったでしょう。
ところが、コロナ禍の発生によって世界中の状況は一変。昨今社会が直面している、“非連続な変化”はさらに加速し、企業にとって“経営領域の変革”を進めることが急激な必須項目、最優先事項となりました。
もちろん簡単なことではありません。このセミナーに参加されている多くのDX関係者の方々もご苦労をなさっていることと思います。しかしながら、視点を変えればこの“非連続な変化”の急加速が、企業経営にとってのDXを“最優先の必須の取り組み”へと押し上げたとも言え、この急激な変化をDXに取り組む機会と捉えるべきと考えています。
では、今、直近の経営状況下で企業に求められるDXとはいかなるものなのでしょう。私たちは「Digital Resiliency=事業継続性を担保」するためのDX活用だと捉えています。いくつか当社が絡む事例をお伝えしましょう。
オラクルは世界中で続く新型コロナウイルス(COVID-19)との戦いに、積極的に携わってきましたが、医師と患者が有望な医薬品によるCOVID-19の治療の有効性を記録できる治療薬学習システムを、Oracle Cloud Infrastructureを使って構築し、米国政府に寄贈しました。膨大な患者データと治療データの集約・活用を通じ、最も効果的な治療薬の選択と投与量とを素早く発見できるシステムを、Oracle Cloud Infrastructure によって短期間で構築したのです。
また、リモートワークの実行を余儀なくされる状況下で、オンラインコミュニケーションツールの利用もまた急激に拡大しました。オラクル自身も、Oracle Content and Experienceと呼ばれるコンテンツ管理ツールを使い、直近のリモートワーク配下にありながらも、社内セミナーの動画配信や、ドキュメントファイルの共有、社内サイトによるコミュニケーションの活性化を実現しています。また、当社でもリモートワークで利用し、ビデオコミュニケーションツールとして広く知られているZoomは、1日の会議参加者数が3億人を数えるほどのスケールへと急変しましたが、そうしたサービス需要急増の負荷をインフラ面で支えたのが、実は私たちOracle Cloud Infrastructureだったのです 。(※)
(※)Zoom、オラクルをコア・オンライン・ミーティング・サービスのクラウド・インフラストラクチャ・プロバイダーに選定
オラクル自身も精力的かつ継続的にDXを推進してきました。例えば決算業務においては、これまでも“月次決算の自動化”の目標を掲げてきましたが、2020年3月にはリモートワークの状況下であったにもかかわらず、子会社の1社で月次決算にかかる時間を20%短縮しました。Oracle Cloud ERPのクラウド技術というテクノロジーの恩恵とともに、財務・会計担当者の働き方改革も重要な要素として機能したのです。