なぜ日本の羊毛は廃棄されてきたのか?
現在、北海道で飼育されている羊は1万頭(日本全体では1万7千頭)。オーストラリアの7000万頭、中国の1億6000万頭と比べると、零細ぶりが際立つ。羊毛となると、実はほとんど活かされていない。
たとえば、北海道の羊はサフォーク種を中心にポールドーセット種などさまざまだが、ほとんど食肉生産のみに利用され、毛の9割は廃棄されてきた。ポールドーセット種はコシハリの強い貴重な羊毛であるというのに、なんと、もったいない。
なぜ、これまで羊毛が廃棄されてきたのか。
毛刈り後の工程と物流に莫大な経費がかかるからである。北海道の零細な牧羊業では、とてもそこまでは手が回らないというのが実情で、泣く泣く捨てられてきたのだった。羊毛には泥やごみ、油が付着しており、羊毛としての商品化を困難にしていたという事情もあった。
伊藤さんは、京都で羊毛輸入業を営む本出ますみさん、名古屋の毛刈り職人山本雪さんら旧知の仕事仲間に相談し、協力をあおいだ。牧場に赴き、毛刈りの技術や選別、管理の知識を指導し、捨てられている原毛を商品化したうえで、羊毛を国島が買い取る。これをジャパン・ウール・プロジェクトと命名した。
プロジェクトでは、毛が汚れにくい飼育方法も羊飼いたちに伝授していく。これまでは原毛の買い取り先がないために、せっかくの原毛が捨てられていた。国島が買い取りを保証することで、羊毛の扱い方の知識も広めていくことができるのだ。