コンセプトは「藩主の御茶屋屋敷」
「星野リゾート 界 長門」は、温泉街の中心を流れる音信川(おとずれがわ)に沿ってゆったりとした敷地が広がる。客室は本館に30室、温泉露天風呂付きの離れ10室を用意する。本館客室からは、桜や柳が彩る川の流れや対岸の山や集落を眺める。のんびりとした風景の中、ゆっくりした時間が過ごせることが魅力だ。
長門湯本温泉はJR新山口駅から車で約1時間。萩市に隣接する長門市に位置する。開湯より約600年余を有する山口県最古の温泉地であり、江戸時代には毛利藩主が度々訪れた名湯として知られる。
その歴史を受けて、界 長門はコンセプトを「藩主の御茶屋屋敷」としている。長屋門のアプローチを設け、客室は全40室がご当地部屋「長門五彩の間」だ。五彩には客室を彩る5つの要素として、山口県の伝統工芸「徳地和紙」「萩焼」「萩ガラス」「大内塗」、「窓から見える四季折々の景色」を盛り込んだ。
界では地域文化を楽しむおもてなし「ご当地楽(ごとうちがく)」を毎日行なう。界 長門では山口県の伝統工芸「赤間硯(あかますずり)」に注目して、「大人の墨あそび」を実施。少人数制で1回30分、スタッフと一緒に伝統工芸と日本文化にふれるひととき。赤間硯を使って墨をすり、型紙に自身の思いを綴る。世界にひとつの土産物をつくる、学びと癒しの時間になっている。
泊まるほどに幸福度が増す温泉街へ
これまでの界にはなかった大きな特徴が、温泉街への出入り口となる宿泊者専用の長屋門「あけぼの門」を設けたことだ。そこには宿泊者以外も利用できる「あけぼのカフェ」があり、甘味や珈琲、ビールなどを提供する。カフェは大盛況で、川沿いのベンチや広場には人々の賑わいであふれた。
「そぞろ歩き」をテーマにする温泉街リノベーション。界 長門すぐの外湯「恩湯」は民設民営により素敵に新規オープンし、周辺には古民家再生によるカフェやショップ、飲食店やシェアハウスなど、地元内外の人が立ち上げた施設が続々オープンしている。
訪れる度に楽しめる、癒される。地域に愛されて、守られる。新しい交流が互いを幸せにする。そんな場所となるべく長門湯本温泉は今春、スタートを切ったように感じた。温泉旅館に泊まってこそ味わえる楽しい仕掛けが、今後どんどん展開していくことだろうと期待している。