大塚は地元の名店案内が人気

「OMO5東京大塚」ご近所マップ

 OMOの2号店となる「星野リゾート OMO5東京大塚」(東京都豊島区)は、JR山手線池袋駅と巣鴨駅の間にある大塚駅前に2018年5月に開業した。大塚は駅を中心にして南北に商店街が広がり、OMOは北口駅前にある125室のホテルだ。多くの人がその立地にまず驚き、価格が7000円〜(2名1室利用時1名あたり、税サ込み)であることも話題になった。

 大塚でも宿泊客を街へ案内するアクティビティ〈ご近所ガイドOMOレンジャー〉が行われていて、参加をした。大塚駅前に完成した新しい広場から創建約700年の天祖神社を参拝し、参道を中心にして広がる個人商店で人情にふれる。ここが東京であることを忘れてしまう下町感は大塚ならではだ。ナイトツアーではディープなレビューショーや隠れ家バーに立ち寄るなど、知る人ぞ知る店のはしご酒は旅行者を虜にするはずだ。

 大塚のある豊島区は、劇場や公園開発、観光周遊バスの設置など、経営再建の区として近年注目を浴びるエリアだ。東京さくらトラムこと都電荒川線が走り、手塚治虫ゆかりのトキワ荘の再建など漫画とアニメの聖地であり、話題に事欠かない。OMO5東京大塚では、これらを活用した官民連携のイベントなどを行なっている。

「OMO5東京大塚」の客室のひとつ、YAGURA Room

 OMOの旭川と大塚に滞在し、街散歩に参加して思ったことは、この新しい旅の提案の鍵は、星野リゾートのスタッフ力にかかっていることだ。誰よりも地域に精通し、コミュニケーション力を磨き、仕事としての完成度と情熱を持ち続けられること。とてもやりがいはあるだろうが、心身とも大変だとも感じる。

 星野リゾートは国内外に拠点が増え続ける中で、スタッフの人材育成は追いついているのか。星野代表に質問をぶつけた。

「スタッフが重要なのは、OMOに限らず全ての施設で同様です。私たちはやる気のあるスタッフを採用の第一に考え、研修を繰り返し、運営施設の増加に備えています。2020年の内定者は過去最高の約600名です。観光で自分のキャリアを育てていきたいという、やる気ある若者が、地域の魅力をお客様にお伝えしていきます」と星野代表は話す。

星野リゾート初の都市観光ホステル

「OMO3東京川崎」(イメージ)

 2020年2月4日、同年6月に神奈川県・川崎駅から徒歩約10分の場所にリニューアルオープンする「星野リゾート OMO3東京川崎」の詳細が記者発表された。星野リゾート初の都市観光ホステルで、1泊2818円〜(1名1室利用時、税別、食事別)である。227室のうち、メインはドミトリータイプで、ほかに一人用と二人用の個室タイプを用意する。大きなダイニングテーブルがあるパブリックスペースは「OMOベース」と呼ばれ、近隣施設によるワークショップの開催やイベントも予定しているそうだ。

 川崎は羽田空港から最短16分でアクセスでき、浅草や横浜へも電車一本で行ける好立地。歴史的にも東海道五十三次の宿場町という側面を持ち、日本初の鉄道開業をはじめ奥行きが深く、現在も、企業・人・モノが行き交う「ミックスシティ・川崎」として色濃い。

 場所柄、インバウンドを意識しての開業かとの疑問に星野代表は、「川崎を選んだ理由は、訪れる価値があり、その価値を表現することが私たちのノウハウでできると考えたからです。今まだ川崎にいらしていないお客様に向けて、土地の魅力を形にして紹介していきます。一番大事なのは日本のお客様と考えています」と話す。

「OMO7大阪新今宮」(イメージ)

 昨年着工の「星野リゾート OMO7大阪新今宮」(大阪市浪速区)をはじめ、今後各地でOMOの展開が予想される。「旅先に友人がいると旅はもっとディープになる」と星野代表が語る通り、地域と旅行者をつないでくれるのはそこにゆかりのある人の力だ。

 ちなみに「OMO7旭川」「OMO5東京大塚」「OMO3東京川崎」のホテル名についている数字は、提供するサービスの幅を示しているという。7はレストランや宴会場がある、3はホステルという風に。それからOMOの名付けの背景には、意味は特にもたせず、言葉の響きが馴染みやすいかを大事にしたとのこと。

 次回は星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」について、2020年以降オープンラッシュが続くその現場をお伝えしたいと思う。