KDDI株式会社 経営戦略本部 KDDI DIGITAL GATE センター長 山根隆行氏
2009年、KDDIに入社。以来、法人向けサービス企画に従事。2013年、アジャイル開発チームの立ち上げに、企画メンバーとして参画。2017年までアジャイル開発手法の一つである「スクラム」のプロダクトオーナーを務める。2018年4月、経営戦略本部に移り、「KDDI DIGITAL GATE」の立ち上げに参加し、同年9月より現職。

※本コンテンツは、2019年3月1日に開催されたJBpress主催「Digital Innovation Forum 2019 <春> ~デジタル変革によるイノベーションの実現~」での講演内容を採録したものです。

KDDIが実践してきた最大のチャレンジは
自らを根底から変えること

 デジタルとビジネスの融合はどんどん加速しています。成功事例として多くの方が注目するAmazonやUberなどを筆頭に、既存のビジネス境界線を超えたディスラプターが登場し、グローバルな異業種間競争が激化しているわけです。日本企業も大急ぎで変わっていかなければなりません。

 KDDIは光栄なことに、有力ベンチャー企業481社を対象に実施された「ベンチャー連携を通じたオープンイノベーションに積極的に取り組んでいる大企業人気ランキング調査」(イノベーションリーダーズサミット実行委員会、経済産業省)において、「イノベーティブ大企業ランキング2018」で第1位という栄誉を授かりました。これは私たちがこれまでさまざまなチャレンジを実践し、試行錯誤してきた結果です。本日はKDDI自身が実行してきたトライの一端についてお話をさせていただきます。

 私たちが最初に突き当たった課題は「今のままのKDDIで本当にデジタル変革できるのか」という根源的なものでした。例えば米国の先進企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を成功させているといっても、そのまま同じやり方を持ち込めば良い、ということにはなりません。

 そもそも、ユーザー企業に72%のIT技術者が在籍する米国に比べ、日本はその逆。IT技術者の75%はITサービス企業に在籍しています。つまり、そもそものIT環境が大きく違うわけです。それでも「新しいことをしなければ」ということで、企画部門はどんどん新しい要件を詰め込もうとし、開発部門は作ること自体が目的化していったのです。気が付けば時間ばかりがかかってしまい、新規サービスを運用するチームに下りてくる頃には市場のニーズが変化してしまっていた、という失敗事例を重ねていたのです。

IT環境の違い|出典:独立行政法人情報処理推進機構「グローバル化を支えるIT人材確保・育成施策に関する調査」2011年3月、2012年10月「ITpro EXPO」メインシアター中田敦氏講演
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 そこで2013年から取り組んだのが、KDDIの組織そのもの、働き方そのものを変革しよう、というものでした。つまり「小さく、早く、トライ&エラーをいとわない」というアジャイルな組織への変貌です。企画・開発・運用の役割を部門横断で包含した複数のスモールチームを構築し、このビジネスとデジタルが一体となった自律的チームのそれぞれが高速回転していく「スクラム」という手法を採用。当初5名で立ち上げたこの取り組みを、約5年間で200名/20チーム体制にまで拡大したのが、当社のアジャイル開発センターです。さらにその過程で、IT・デジタル領域の有力ベンチャー企業との共創関係もまた広げていったのです。

 私たちのチャレンジは今もなお続行中ですが、それでも一定の評価をいただいたことを誇りに思っていますし、自分たちの組織や働き方に変革のメスを入れ、そこに共創パートナーという力強い味方を得たことで達成したものと自負しています。そして、私たち自身が体感した変革プロセスと、そこで得た知見をより多くの企業の方々と分かち合うべく、2018年の9月、新たにオープンしたのが「KDDI DIGITAL GATE」です。

DXのゲートを開く共創の場
KDDI DIGITAL GATE

 KDDI DIGITAL GATEには、当社が持つアセットの粋(すい)を結集しています。通信事業者として培ってきた知見やノウハウ、さらには5GやIoTといった最先端のデジタルテクノロジーを用意すると同時に、アジャイルな組織へと生まれ変わる過程で得たデザイン思考やスクラムといったアプローチなども集約。DX達成のために参画いただいた企業の皆さんに、「仮説、構築、改善」を小さく高速で繰り返していくプロセスを、実体験しながら習得していただく場としています。2018年9月に開設したばかりですが、すでに大企業を中心に140以上の企業が参画してくださっています。

 具体的に何が行われるのかというと、大きく3つのステップに分かれます。1日で実施するステップ1では、1~2時間の簡易的なワークショップへの参加やKDDI DIGITAL GATEの開発チームが1日で開発したプロトタイプのレビューなどを通して、KDDI DIGITAL GATEの機能を知っていただき、どう活用できるかを考えていただける場としています。4〜8週間かけて実施するステップ2では、デザイン思考の専門家によるファシリテートに基づくUX(ユーザー体験)デザインのワークショップなどを含んだアジャイル型PoC(概念実証)のプロセスを実際に体験していただきます。そしてステップ3では、8~12週間かけてアジャイル・スクラムを用いたチーム開発を、KDDIのスクラムメンバーと一緒に実践していただきます。

KDDI DIGITAL GATEが提供するサービス開発プロセス ~ 仮説、構築、改善を小さく高速に繰り返す ※1 Minimum Viable Productの略:顧客にとって価値のある最小限の機能を持った製品
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 もちろん、参加していただく企業の方々の状況やご希望に応じて、KDDIやパートナー企業が持つ多様なアセットをご提供させていただき、自社だけでは実現困難な目標に向かって共に考え、DX達成の支援や連携をさせていただく準備を整えています。例えば2011年の創設以来、多数のベンチャー企業の発掘・支援・共創を展開してきたインキュベーションプログラムである「KDDI ∞ Labo(ムゲンラボ)」や、2012年から稼働しているハンズオン型のコーポレートベンチャーファンドである「KDDI Open Innovation Fund」などがあります。その他にも、KDDIとアクセンチュアがそれぞれの強みを持ち寄って設立した、国内最大級となる約150人のデータサイエンティストが所属するデータ分析企業「ARISE analytics」などのノウハウも活用いただけます。

 多くの企業がそれぞれの理想を持ってDXを達成しようとしている今、そのための実行プランを見つけ、必要となるノウハウやアセットを獲得していく“GATE”として活用していただくことを、私たちKDDIは願っています。今後も本当の意味で日本のデジタルビジネスが花開くためのサポートをさせていただき、共に実りを得ていきたいと思っています。

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