江戸〜明治時代のファッションアイテム

「サントリー美術館コレクション展 名品ときたま迷品」展示風景。《鼈甲台三味線棹形変り簪》一本 江戸時代 19世紀 サントリー美術館 通期展示

 江戸〜明治時代の簪や櫛を集めたコーナーも興味深い。一風変わった個性的なデザインの品が多く、こうしたファッションアイテムで江戸の娘たちは自分らしさの表現を楽しんでいたのだろう。《銀珊瑚入梅花鈴付びらびら簪》は、簪の先に鎖や短冊、鈴、花形、蝶鳥形などの飾りを吊り下げた華やかな一品だ。

「小さな鈴が連なり、これをつけて歩けば可憐な音を聞かせてくれます。こうした趣向は天明年間(1781~1789)頃から流行し、主に未婚の女性、なかでも裕福な商人の娘たちの間で流行したといいます」

「サントリー美術館コレクション展 名品ときたま迷品」展示風景。《平四目紋革羽織(一番組よ組)》江戸時代 19世紀 サントリー美術館 展示期間:4/17〜5/13

《平四目紋革羽織(一番組よ組)》は、江戸に48あった町火消のひとつ「よ組」が使用していた火事装束。素材に革が使われているのが興味深い。

「「よ組」は江戸の神田周辺を担当した町火消。江戸っ子気質で威勢がよく、喧嘩騒ぎも起こしています。本作はそんな「よ組」をまとめていた頭取が着用したものとみられます。19世紀中頃の短い期間、町火消では頭取のみに革羽織の着用が認められていたので、その頃作られたものなのでしょう」

 

メイヒン鑑賞の楽しみは尽きない

「サントリー美術館コレクション展 名品ときたま迷品」展示風景。(右から)《色絵赤玉雲龍文鉢》有田 江戸時代 17〜18世紀 《色絵桜文透鉢》古清水 江戸時代 18世紀 《色絵梅枝垂桜文徳利》古清水 江戸時代 18世紀 すべてサントリー美術館 通期展示

 変わり種では《織部唐草梅花文井戸車》。江戸時代後期に作られた織部風の井戸車(滑車)で、中央には軸を通す正方形の穴が開いている。

「本来水を汲み上げるための実用品。しかし後に茶人に見出され、井戸車としての役割を終えたものが釜の下に敷く釜敷などとして使われるようになりました」

 海外で生まれたガラス工芸品もユニーク。ドイツ製《鹿形パズルゴブレット》はワイングラスに大きな鹿形のガラス細工が付いており、グラスの縁に口をつけてワインを飲もうとすると、鹿細工が邪魔になって飲むことができない。どうしたらワインを飲めるのだろうか。

「台座の付け根に空いた小さな孔を塞いで鹿の口を吸うと、中央の管の中をワインが上昇し、飲めるようになっているのです。笑い声のなか、ああでもない、こうでもないと悪戦苦闘する姿を宴会の余興としていました」

 挙げ始めるとキリがないくらい、個性的なメイヒンにあふれた展覧会。サントリー美術館が誇る約3000件のコレクションには、まだまだメイヒンがあるのではないか。第2弾、第3弾の開催を期待したい。