企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の実務者は従業員たちだ。いかにデジタルのリテラシーをもった従業員からなる組織をつくるか。いかにデジタルの技術を駆使して変革を起こせるプロフェッショナル集団をつくるか。その鍵は「育成」にある。旭化成は、「デジタル活用人材4万人」「デジタルプロ人材2500人」という大きな2つの目標を掲げ、それに向けた施策を行い、社内で設定した2024年以降の「デジタルノーマル期」に備えている。DXを推進する役員からは、これらの取り組みから「日本のチャンス」まで見えてきたとの声が上がる。

DX人材不足に対し「育成」という手段

 企業が抱えるDXの課題について、「DXに必要な組織変革や人事制度改革を行っていないことにある」といった指摘がある。外部からのDX人材獲得に限度がある以上、企業、とくに大企業はDX人材が育つ効果的な仕組みの導入と実践をする他ない。

 連結の従業員がグローバルで4万8,897人(2023年3月時点)にのぼる旭化成は、「デジタル活用人材」と「デジタルプロ人材」の育成という2つの大きな方針を立てて施策を導入。従業員をそれぞれの人材に育成しようとしている。

「デジタルを使っていない会社と思われたくない」

「デジタルの基本知識を従業員みんなが身につければ、自分の職種以外の人たちがデジタルでどう仕事をしているのか分かる。一つの仕事に様々な部署が関わる中で、これは重要なことです。その上で、自身をデジタルでアップスキルして現場を変えていく、プロフェッショナルなデジタル人材が多くいることも大切です」

 こう話すのは、旭化成上席執行役員の原田典明氏だ。1988年、旭化成工業(現・旭化成)に入社し、化学メーカーでは当時少ない存在だった情報技術系の担当となる。イメージセンシングを用いた製品欠陥検出機器の開発・導入や、国内化学メーカー初とされる統合基幹業務システム(ERPシステム)導入などを手がけた。2018年より、生産系のデジタル化推進に管理者の立場で関わる。そして2021年、同社にデジタル共創本部発足後は生産系だけでなく、営業・マーケティング領域まで業務を拡大、2022年から社内各部門の戦略をデジタル技術で支援するDX経営推進センターの長に就いた。

【キャプション】旭化成 上席執行役員 兼 デジタル共創本部 DX経営推進センター センター長 原田典明氏(撮影:酒井俊春)

 原田氏が話す「デジタルの基本知識を身につけた人材」と「デジタルのプロフェッショナルな人材」は、社内でそれぞれ「デジタル活用人材」と「デジタルプロ人材」とよばれている。同社は、この2つの柱で人材育成を進めているのだ。