資源を一方的に消費するだけの線形経済から、再利用をはかる循環型経済へ。地球環境保全が課題となっている現在、この転換が社会の命題となっている。この命題に対し、プラスチック資源を循環させるためのデジタルプラットフォームを開発しているのが旭化成だ。同社が「BLUE Plastics」と呼んでいるプラスチック資源循環プロジェクトのリーダーは、「材料メーカーが資源循環を指揮する立場になることを目指す」と意気込む。
<連載ラインナップ>
■【第1回】「創造期」を経て「ノーマル期」へ、旭化成が挑んだ超速デジタル化
■【第2回】「どうしちゃったの旭化成さん」顧客が驚いた合成ゴムスピード開発の勝因
■【第3回】製造IoTプラットフォームを自前で構築、旭化成が目指す「良い工場」とは?
■【第4回】医師たちの情報収集チャネルを確立、コロナが前進させた旭化成の医療ビジネス
■【第5回】業務改革と新規事業創造を実現、旭化成が導入した「革新を共創する方法論」
■【第6回】循環型経済のプラットフォーマーに名乗り、旭化成が取り組む社会の命題(今回)
■【第7回】旭化成の「人」の育て方から見えてくる、日本の未来に広がる大きなチャンス
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プラスチック資源循環プロジェクト、始動
循環型経済(サーキュラーエコノミー)は、これまで捨てられてきた材料や製品を資源と位置づけ、循環させたり再利用したりする経済の仕組み。2015年、欧州委員会が提唱したことで、考えが広まった。従来の、原材料から製品をつくって使い、あとは捨てるだけという線形経済(リニアエコノミー)から脱却した先の形として、循環型経済の姿が描かれている。
この転換には企業間の連携が欠かせない。資源循環を1社が行うわけではないからだ。そのため、資源が循環する仕組みをつくる主体者の役割が求められる。この役割を「循環プロバイダー」と呼ぶこともある。
循環プロバイダーになると名乗り出た企業の一つが旭化成だ。同社は2050年までを見据え「カーボンニュートラルでサステナブルな世界の実現」を目指すことの一つに掲げている。その取り組みの一環として、プラスチック資源循環プロジェクト「BLUE Plastics」を2021年5月に開始した。企業それに消費者。資源循環にかかわるステークホルダーたちを巻き込み、デジタル技術を駆使して循環の仕組みを構築しようとしている。