フジテック執行役員 井﨑陽 生産本部長 (左)と同 深松伸夫 フィールドエンジニアリング本部長(撮影:宮崎訓幸)

 エレベーター、エスカレーター、動く歩道の専業メーカーであるフジテックは2020年、首都圏に新たな物流拠点「東京フィット」を開設した。今、この拠点が建設・物流の2024年問題への有効な対応策として機能していることが注目されている。

 同社は2024年問題にどのように対応しているのか。その最前線ともいえる東京フィットを訪れ、同社の取り組みについて担当者たちに話を聞いた。2ページ目ではダブル連結トラックの導入の模様を動画でお伝えする。

新たな物流オペレーションを可能にした東京フィット

 東京フィット(TF)が開設されたのは2020年10月。場所は東京都大田区の羽田空港の西側、東京モノレールの整備場駅と川を挟んだ向かい側の場所になる。2フロア計約1万5000平方メートルの施設の中には、物流倉庫、研修センター、メンテナンス部品保管施設などがある。

 TFはもともと、首都圏の建設需要の増加に対応するために設けられた施設だった。同社の工場や物流拠点はこれまで滋賀や兵庫などの西日本エリアにあり、首都圏でビルやマンションなどが建設される際には、西日本の拠点から10トントラックでエレベーターやエスカレーターなどの製品を搬送していた。だが最近、この物流に問題が生じていた。その事情を、同社執行役員の井﨑陽生産本部長がこう説明する。

フジテック執行役員 井﨑陽 生産本部長

「建設現場に10トントラックで入るのが難しくなってきました。現場の取り回しのために、2トントラックで入ってほしいとゼネコンなどから要請されることが多くなってきたのです。

 しかし、滋賀や兵庫から2トントラックで運ぶのではあまりにも非効率です。そこで首都圏に物流のデポ(物流拠点)を設けて、バッファ機能を持たせることにしたのです。これにより、滋賀や兵庫からデポまでは従来通り10トントラックで運び、そこから2トントラックに小分けして現場に入るというオペレーションが可能になりました」

 また、TFの開設は物流の平準化という効果ももたらした。

 建設業界では物流も製造も繁忙期に集中する傾向がある。一方で、閑散期には物流も製造も稼働率が低下する。繁忙期に必要になる製品の一部を前倒しして製造するという方法もあるが、建設現場側はジャストインタイムの搬入を求める。だが、繁忙期に入った途端、あらかじめ製造しておいた製品を西日本エリアから、まとめて一気に首都圏に搬送するのは難しくなる。

「前倒しして製造した製品を首都圏のデポに置いておけば、そこでバッファ期間を設けることができ、現場にはジャストインタイムで搬入できます。その結果、繁忙期を見越した計画的な生産が可能になり、物流も平準化できるようになりました」(井﨑氏)

 もちろんこうした施策は、2024年問題への対応策としても有効だ。