熾烈な中国のシェア自転車市場で勝ち残った秘訣は何か。(筆者撮影、以下同様)

「ヒト・モノ・カネのリソース(資源)をいかに有効活用するか」がビジネスの勝利の方程式だ、と言われて久しい。

 しかし、本格的なIoT時代に突入した今日、すべての企業は事業環境のノンリニアな変化に直面し、もはや正攻法の事業戦略だけでは勝者たりえないのではないだろうか。

 例えば、デジタル化が進展する中で、企業とお客さまのコンタクトポイント(ブランド接点)がますます拡大する傾向にある。

 企業にとっては、お客さまのお財布を、オンライン・オフラインのコンタクトポイントを一気通貫しながら、いかに押さえていくか、ということも極めて重要なポイントだろう。

 そういう意味で、著者が出張先の中国・上海でたびたび目の当たりにすることとなった、シェア自転車ビジネス競争の顛末は、IoT時代の事業の成功モデルを考察する上で有益な示唆に富む。

 生存競争を勝ち抜いたのは「オッフォ(Ofo)」と「モバイク(Mobike)」の2つの企業。

 今回は、シェア自転車ビジネスの背景にある、決して偶然ではない、「必然的な勝利」の背景にある事実をレポートする。

今やシェア自転車で埋め尽くされる上海の路地

 かつて租界時代には「魔都」とも呼ばれた上海。

 過去・現在・近未来の3つの時代がひとつの空間に共存・並行する巨大都市。

 上海の「近未来」を象徴する風景といえば、圧倒的な第1位は2〜3年前にサービスを開始したシェア自転車の洪水、そして第2位は、やはり同じ頃から街区のいたる所で存在感を主張することになった監視カメラネットワーク「天網(ティエンワン)」だろう。