AIを活用し、
顧客との距離を縮める

 皆さん、こんにちは。インフォマティカ編集部です。今回のブログはAXA XL社でCDO(Chief Data Office)を務めるDr. Henna Karnaによる投稿です。同社がどのようにDXに向き合い、顧客との距離を縮めてきたのか綴っています。

 AXA XLは、国際的な保険大手AXAの関連会社として、損害保険(P&C)や専門分野のリスクを取り扱います。中堅企業から世界最大級の多国籍企業にわたり、非常に複雑な案件にも対処できる会社として知られています。

 私は現在、AXA XLでデジタルトランスフォーメーションを先導しています。今回は、私たちがデジタルトランスフォーメーション(DX)にむけて歩んできた「道のり」と、その過程で起こった様々な問題にどう対処したのかということについて述べたいと思います。最初に私がお伝えしたいのは、顧客と向き合うことこそが最も大事であるということです。また、先ほど述べた「道のり」というのは、苦悩にまつわる有名な5段階のサイクル(否認、怒り、取引、抑うつ、受容)と酷似しています。

 このモデルは1969年にエリザベス・キュブラー・ロス博士によって提唱され、トラウマ的喪失に直面した人間の行動を理解するのに役立てられてきました。DXの過程では、サービスを提供する方法を根本的に変えることを要求しなくてはなりません。そのような状況において、このモデルを役立てることができるのです。私たちは、大げさに「慣れ親しんでいる今までのやり方を捨ててください」と頼むわけですが、そう言われるのは顧客にとってはストレスを感じます。

 テクノロジーや組織の構造に焦点を当てていると、顧客とのやり取りが円滑に進まない場合があります。是非、あなたや顧客をとりまく感情の流れを大切にしていただきたいのです。

真の転機をもたらすデジタルトランスフォーメーション

 以下の図は、キューブラー・ロスモデルに基づき、現状を崩した場合のサイクルの流れを示したものです。

 最初の段階では、多くの場合、あなたの顧客は現状を変えることに否定的だと思われます。安定、消極的な段階です。ある意味、現状に固執しているとも言えるでしょう。今の状態で安定を保っているため、とても快適に感じているのです。この時点でのDXを勧める側の役割は、信頼を築くことです。つまり、やりとりをする価値があると顧客に信じてもらえるよう働きかけるのです。ただし、顧客は現状を変えたがらないことを心に留めていてください。この段階では、特に大きな問題は見当たらないと思います。顧客との信頼を築くことができたら、顧客が拒否段階にあっても、変更の必要性を非常に明確かつ具体的に述べる必要があります。デジタルトランスフォーメーションがもたらす新たなビジョンを説明するのです。顧客の主要な利害関係者やその優先順位を把握し、「今までそんなことは考えてもみなかった」といった言葉を引き出せたら、この段階を突破したと言えるでしょう。

 この次は注意が必要です。というのも、ここからは怒りの段階に入ります。顧客からは「こんなことをする必要がある?」といったことを言われるでしょう。この時点で大切なのは、極めて合理的になることです。別のやり方に変えることでのメリットを数値で表し、ビジネスの実例を示すのです。顧客は「今までこんなにお金を無駄にしていたのか」と身もだえするかもしれません。

 続いて、取引の段階に入ります。顧客は「代わりに何か他の方法をとるのはどうだろう?」と考え始めます。ここから抑うつの状態へと繋がるので、サイクルの中でも乗り越えるのが最も難しい部分であると言えます。顧客からは「本当にする必要があるのか?」といった、避けられない抵抗をうけるでしょう。この段階では、顧客と感情の部分で分かり合うことで、合理的な議論から感情的な議論へと移ることが重要です。顧客の抱える悩みは現実的なものであり、あなたが力になれるのだと分かってもらうことを目標にしましょう。

 次の段階は私が付け加えたもので、キューバー・ロスモデルとは何の関係もありません。顧客は抑うつ状態から回復すると、あなたの提案にどのような価値があるのかを知ろうとします。ここでのポイントは、説得力のある議論の準備をしておくことです。現状では良くないのだと顧客が認めたら成功です。

 そして最後に「なるほど、これは私たちにとってプラスになる。」という受容の段階へと突入します。これまで述べてきた利点を、改めて強調して伝えてください。

データとAIが求められる場所

 これらすべてのことを念頭に置いた上で大事なのは、顧客に同意してもらうというだけでなく、顧客の環境を進化させるということです。しかし大抵の場合、現状と目指している場所の間には大きな隔たりがあります。そのため、データ、人工知能(AI)、機械学習などの高度なテクノロジーを活用します。

 なぜなら、私たちが求めているのは単に豊富なデータではなく、業務のDNAとなるような、洞察ができるデータであるためです。インフォマティカのインテリジェントなCLAIREエンジンは、まさにこの需要にこたえるものです。

 変革とデータ主導の企業について考える際は、2つの軸を持つ以下の図が役に立ちます。

 「進歩パラダイム」の軸では、既存/レガシーの状態から段階的変化を経て、変革の状態へと移行します。そして「組織への影響」の軸では、データ主導モデルを確立するところからデジタルへ移行する中間状態を経て、最終的には従来のやり方をデジタルで覆す状態へと移行します。この図の右上にあたる部分がデジタルトランスフォーメーションの完成している状態であり、私たちが目指す場所です。ただ、私たちは「革命を起こす」のではなく、あくまで「進化」するのだということを忘れないでください。そして、AIはその手段となります。

 AIには、高次の複雑さを取り込み、それを非常にわかりやすいパターン認識へと変換する機能があります。それを活用することで、最終的に目標の状態へと到達することができるのです。従来、私たちはそれぞれのデータをサイロ化してとらえていたと思います。しかし、AIを使用して点と点を繋ぎ合わせ、差別化要因を探って新しいIPを作成することで、トランスフォーメーションの状態へと進化することができます。

結論:自分たちとの戦い

 これらすべてを念頭に置いたうえで、私たちがいま参戦しているレースについてお話ししましょう。それはつまり、私たち自身との戦いなのです。私はかつて陸上競技をしていましたが、在籍していた学校には女性のチームがありませんでした。そのため、男性のチームに混ざって走っていたのです。女性は私しかおらず、最初の頃はいつもレースで負けていました。しかし、良かったのは自分のタイムときちんと向き合えたことです。以前のレースで自分のタイムを把握し、女性チームがある学校が公開しているタイムを知り、それらを目安にしての自分自身を高めることができました。

 これと同じように、業界内での競争も、つまりは自分自身との競争なのです。こう考えることが、私たちが顧客をどれだけ大切にしているかを理解する手助けとなります。さらに、データの精度に対する理解度を深め、私たちの創造性と競争力がAIによってどのように強化されているかも把握することができるのです。以上のことを踏まえたうえで、AXA XLではCLAIREを非常にうまく活用できていると思います。

 Informatica Liveの Intelligent Data Summit for AI-Powered Innovation series premiereにてDr. Karnaが行ったプレゼンテーションを、オンデマンドでご覧ください。

本ブログは2020年7月23日のDr. Henna KarnaによるEmpowered by AI to Get Close to Customersの翻訳です。

出典:インフォマティカ「AIを活用し、顧客との距離を縮める

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