今や運動靴という枠組みを飛び越え、1つのカルチャーとしても世界中で愛されているスニーカー。その魅力である軽快な履き心地と個性豊かなデザインは、一流の革靴を日々の相棒とする読者諸氏をも魅了してやまない。ここでは“本物”を知る大人の男が選ぶべきスニーカーを提案する。
写真=青木和也 スタイリング=泉敦夫 文=TOMMY 編集=名知正登
履いてリラックス、歩いてリフレッシュ
タイトルで唐突に“シューズ界のアーユルヴェーダ”と提示され、「なるほどね」と即同意できる人間がどれほどいるかは疑問だが、前後の文脈を読み取っていただければ咀嚼も容易になるだろう。履いてリラックス、歩いてリフレッシュ…そこから導き出されるのが、今回のテーマ“リカバリースニーカー”である。
激しい運動や立ち仕事などによって疲れた足を回復させることを目的とし、足裏にフィットする中敷きやクッション性に優れたソールが特長。これによって脚や腰への負担を軽減させる機能に、現代社会の中で心身のストレスに晒されながら生きる人々からのラブコールが続出。近年では様々なブランドが参入し、一大ジャンルへと成長を遂げた。本稿ではその先駆者である「ホカ」を筆頭に、リカバリーシューズの大看板を集めた。
ついでに「アーユルヴェーダとは何か?」という説明もしておく。ギリシャ・アラビア医学、中国医学とともに世界三大伝統医学に数えられるインド亜大陸の伝統的医学であり、その名は寿命、生気、生命を意味するサンスクリット語の「アーユス」と知識、学を意味する「ヴェーダ」からなる。これには医学だけでなく生活の知恵、哲学などの概念も含まれ、病気の治療と予防だけでなく、より善い人生を目指すことこそが最終到達点。
要するにリカバリースニーカーとは、健康の維持・増進や若返り、さらには幸福な人生とは何かまで追求するアーユルヴェーダのごとく、履けば得られる悟りの境地というワケだ。健康で幸福な人生を歩む中で、溜まった疲れを癒やす救世主。それがこちらの5足。
1. HOKA「ORA RECOLERY SHOE 2」
“雲の上を歩いているような感覚”と“旅先での癒し”を両立
「リカバリーシューズという概念を教えてくれたのは、他でもないホカだった」という声は多く、同社のリカバリーサンダルは世界中で愛用されている。中でも近年は、足全体を包み込むスリッポンタイプの支持が急拡大。ランニング後の安らぎの代名詞となっている。
この「オラ リカバリー シュー2」はその最たるもの。心地良くフィットするメモリーフォーム搭載のヒール部分にはキルティングを採用し、足首に配された伸縮性のあるバンドが包み込むように足をサポート。
もちろん、ホカならではの“雲の上を歩いているような感覚”とも形容される履き心地は健在だ。フルコンプレッションのEVAミッドソールがクッション性と安定性を提供する。その上、コンパクトに折りたたむことができて、かつ軽量なダイナミックメッシュアッパーは、旅先で足を休めるのにも最適。