太郎坊詣でのハイライト「夫婦岩」
石段を登り詰めたところに、太郎坊詣でのハイライトとも言える巨岩「夫婦岩」がある。高さ数十mの巨大な岩盤が二つ並んでおり、昔、神様がそのお力でひとつの岩を左右に押し開いたものと言われている。
実際には、太古の昔に何らかの自然の力によって割れたものであろうが、その神秘的な姿を見ると、自然とは神の意志のことなのかも知れないと思えて来る。巨岩の隙間は幅約80cm、高さ約12m。ここを通って本殿に参詣できれば病苦が取り除かれ、所願が成就するが、悪い心がある者は岩にはさまれてしまうと言われている。心を鎮め、願いごとをしながら通ろう。
夫婦岩を抜け、石段を昇ると御祭神が鎮座する御本殿がある。京都の清水寺本堂と同じ懸け造りで、舞台からの眺めが素晴らしい。天気がよければ鈴鹿山脈や奈良県の山々まで見えるという。すぐ下に広がる平地は古くは蒲生野と呼ばれていた。古代には大和王権の御狩場だったところで、額田王が「あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る」という歌を詠んだのもこの場所だ。現在は豊かに作物が実る田園地帯となっている。
そこから裏参道と呼ばれる石段が続く。傍らの七福神像にお参りしながら下っていくと、一願成就社がある。参拝者自らが願掛け神事をするところで、特に病気平癒、受験合格などの祈願をする人が多い。天井には蒲生野に咲く四季の花々を描いた美しい天井ががある。この社の脇からお百度詣での道に入ることもできる。
最後に、下界からもよく見える巨大な建物、参集殿について。ここは研修道場として建てられたもので、結婚式や披露宴、各種の展示会などにも使われている。1階には百畳敷きの大広間があり、窓から湖東平野を見渡すことができる。茶道体験、香袋作りなど、気軽に参加できるイベントも数々行われている。
中でも興味深いのは、おまもりづくり体験だ。100種類以上の袋が用意されており、好きな袋と好きな色の紐を選び、神様のみたまと願いごとを書いた紙をその中に入れて、オリジナルのお守りを作る。これにより、おまもりをより身近に感じて大切にする人が多いという。
毎年春には、参道の桜が見事に咲き誇り、参集殿の立派な姿が映える。四季ごとに美しく、楽しいイベントも多い太郎坊。ぜひ一度出かけてみて欲しい。