ビジネス環境が刻々と変化し、迅速な意思決定が求められる中、経理・財務部門の重要性が増している。だが、従来業務に追われ、経営戦略のための分析や戦略的アクションに時間が取れないと悩む企業も少なくない。従来業務を効率化し、付加価値の高い業務にシフトするにはどのような変革が必要なのか。2024年7月24日にオンラインで開催された「第8回ファイナンス・イノベーション」では、日本オラクルの大城秀暁氏が「未来のファイナンス部門に向けたAI活用」と題して、最新のAI、データ、クラウドを駆使した会計業務や経営管理の変革方法を解説した。ここではその内容を紹介する。
決算早期化を実現した抜本的な変革
「多くのS&P500企業の決算発表が約1カ月であるところ、グローバル各拠点に支社を持つオラクルコーポレーションは9日目で決算発表をしています。日本法人も四半期決算発表を、コロナ前の会計年度と比較して、3日短縮して決算発表を行っています」と大城氏はセッションの冒頭で紹介した。
従来のマニュアル作業を35%も削減し、各種の照合作業を40%も自動化することができたという。その背景にはオラクルが実際に自社で取り組んだ、抜本的な変革の実現がある。大城氏は、経理・財務部門が直面する課題として以下のような点を指摘する。「週の大半はデータ集計やスプレッドシートの編集に追われ、業績の分析や評価といった戦略的な業務に時間を割くことができていません」
経理・財務部門が業務の実行部隊にとどまらず会社を戦略的に分析し成長へ導く組織へと変わるためには、新しい業務スタイルが必要だろう。「そのための方法の一つがAI(人工知能)の活用です。AIを活用した自動化を促進することで、データ集計を短時間で終え、業績評価・分析、意思決定や事業部とのコミュニケーションなど、今までできなかった他の活動に時間を割けるようになります」(大城氏)。
会計業務プロセスの課題とAI活用
セッションでは、多くの企業の経理・財務部門が直面する課題を例示し、その解決のためにAIがどのように活用できるかも解説された。具体的には「日常経理業務」、「決算処理」、「予測・分析」、「監査」、「開示・報告」の5つの業務である。
まず、「日常経理業務」では、紙の請求書情報や勘定科目を手で入力していると、打ち間違いが起きたり時間を多く取られたりしてしまう、また、細かい計上ルールを経理マニュアルにその都度確認するのが面倒だ。
「Oracle Fusion Cloud ERPであれば、請求書を読み込んで請求書データを自動入力、勘定科目を過去のデータから自動導出することが可能です。チャットボットに質問を投げると、直ちに適切な回答を返してもらうこともできます」と大城氏は紹介した。実際に、請求書の自動読取り機能を活用することによって30%もの業務の効率化が図れ、ミスも削減されたという。
「決算処理」業務では、マニュアルで大量の照合作業に苦労している話をよく聞く。Oracle Fusion Cloud ERPであれば、細かい照合ルールを設定して自動照合することが可能だ。実際、照合業務の40%の自動化を実現できたという。
「ある飲食店では、デリバリーサービスの普及に伴い、他社からのデータと自社で保有している売上データの照合が発生していました。2つのデータソースをクラウドにアップロードすることによって、照合ルールによる自動照合を実行することで、調整業務は差異が発生したもののみとなり、大幅に業務を軽減できるようになりました」(大城氏)。ビジネス環境の変化に対応して、いかにシステムでの自動化を図れるかが競合企業との差別化になるだろう。
このほか「予測・分析」業務では、人間が感覚的に行っていた予測業務を統計に裏打ちされた結果を参考にすることで、より情報に基づいた予測を立てることができるようになった。加えて複数の分析シナリオを定義して、シミュレーションを実行し、販売計画の精度向上や戦略立案に貢献できるようにもなった。これらのAIによる予測を活用することで、予算策定業務にかける時間を50%削減できたという。
「監査」領域では、異常や不正を検知しアラートを出して改善を促すことができる。「従来なら、現場から経営へ報告があり、それで初めて経営層が問題の発生に気づく。そして、その報告をきっかけに詳細の分析を行い、その後、リカバリープランを考えていく、という流れで、時間をかけてアクションを考えていく必要があったと思います。
Oracle Fusion Cloud ERPの場合、そこが抜本的に変わります。重要な項目で異常データが発生した場合には、それが初期の少額の金額であっても、システムがアラートを出してくれるようになります」と大城氏は紹介する。アラートされた情報に基づき、すぐに詳細な分析を行い、また影響度を確認して、素早くアクションを実行することができるようになるわけだ。
「開示・報告」業務についても、生成AI機能を活用すれば、ERP(統合基幹業務システム)に保持する情報を基にして、レポートを自動生成することが可能だ。このように、生成AIの活用は、ファイナンス部門の定常業務を削減することはもちろん、ガバナンスの向上・経営を支える重要データの分析にもつながっている。
未来の経営に寄与するファイナンス部門の姿
オラクルは5年以上前に動画投稿サイトにて『近未来のCFO』という動画を公開し、未来のファイナンス部門像を描いた。そこでは、スマートフォンに入ったERPに「製品ごとの収益を見せて」と話しかけると、経営ダッシュボードが瞬時に出力され、またある会社の買収を検討するシーンでは、「入札額の引き上げに伴う財務への影響は?」と話しかけると、買収に伴う複数のシナリオをERPがシミュレーションした。
「公開当初はSFの世界観として受け止められていましたが、今となっては生成AIの急激な進化によって、こうしたシナリオにも手触り感が出てきました」と大城氏は話す。
セッションで紹介された変革を実現するOracle Fusion Cloud ERPは、まさに顧客企業の変革を実現するために設計されており、顧客の変革を後押しするAI機能を提供し、成功にコミットするERPである。
むろん、「Fit to Standard」は現行の業務フローから変わることになるため、不安感を持つ人も多いだろう。大城氏は「オラクルでは、『Fit to Standard』でのERP導入を実現させるために、システム検討から、システム導入、運用と各ステージで、標準化をサポートするサービス体制を整えています。ぜひお気軽にご相談いただきたいと願っています」とセッションを結んだ。
最新の情報を発信
オラクルクラウドアプリケーションのブログはこちら
顧客の変革、成功にコミットする
Oracle Fusion Cloud ERPの詳細はこちら
<PR>