今や運動靴という枠組みを飛び越え、1つのカルチャーとしても世界中で愛されているスニーカー。その魅力である軽快な履き心地と個性豊かなデザインは、一流の革靴を日々の相棒とする読者諸氏をも魅了してやまない。ここでは“本物”を知る大人の男が選ぶべきスニーカーを提案する。
写真=青木和也 スタイリング=泉敦夫 文=TOMMY 編集=名知正登
2024年7月3日、以前から耳目を集めていた3組のニューフェイスが、遂にデビューを飾った。
といっても浮世の慰み、芸能の類ではなく日本銀行券。天下の回りもの、そう新紙幣の話である。新一万円札は渋沢栄一、新五千円札に津田梅子、新千円札が北里柴三郎。いまいちピンとこない顔ぶれも慣れさえすれば気にならないというが、今では話題にものぼらず、皆が慣れぬまま真夏の陽炎の如くスッと姿を消した二千円札。表面に沖縄の首里城守礼門を描き、裏面を『源氏物語絵巻』の絵図が優美に飾るこの紙幣の登場が、今を遡ること24年前。恐怖の大王はやって来ずとも訪れた世紀末・2000年だったことを諸君は覚えておいでか。
これぞ俗にいうY2K(Yはyear、Kはkilo=1000を意味する)。今や、ファッションに音楽といった様々なカルチャー界隈において、この2000年代の“レトロフューチャー”なデザインや世界観を落とし込んだスタイルが注目されている。
今回のテーマもまた然り。メッシュやメタリックなどの素材を使い、複雑なパーツ構成で仕上げられた近未来的なアッパーと、優れたクッショニングを視覚化したソールユニットの融合により、いつもの装いに懐かしくも新鮮なイメージを付加する。真夏の大冒険はさすがに言い過ぎだが、二千円札のように絶滅危惧種となる前にぜひ一度、挑戦をしてみてはいかがだろうか。
1. NIKE SPORTSWEAR「AIR PEGASUS 2005 EDGE」
全世代から愛される「エア ペガサス」シリーズの名作にY2Kな新色
Y2Kテイストが人気の理由の1つに、革新性と既視感の絶妙なバランスがあり、これにより得られる懐かしくも新鮮なムードを令和世代は“エモい”と表現する。
2005年に発売された本作でいえば、流線型のボディを覆う軽量性と通気性に優れたメッシュパネル、サポート性を強化するサイドパネルの4本ライン、ミッドソールに埋め込まれた快適性を高めるフルレングスのエアユニットのプラグが、この感覚を喚起させる重要なポイント。
昨年で発売から40周年を迎えてなお、全世代から愛される名作ランニングシリーズに属するだけあって、当然履き心地も優良かつフレキシブル。イエローからピンクへと移ろうグラデーションカラーも美しく、そのルックスは普遍的かつエッジー。モデル名の由来である天馬=ペガサスは霊感の象徴ともされるゆえ、ビビッときたら即購入を推奨する。