【藤原公任】道長にも一目置かれた「三舟の才」
藤原公任は、康保3年(966)に生まれた。道長と同じ年である。
父は、橋爪淳が演じた関白藤原頼忠。母は、代明親王(醍醐天皇の皇子)の三女である厳子(げんし)女王である。
同母姉の中村静香が演じる遵子は、坂東巳之助が演じる円融天皇の皇后となった。
秋山竜次が演じる藤原実資は、頼忠の弟・藤原斉敏の子である。
永祚元年(989)、24歳で蔵人頭となり、27歳で参議、寛弘6年(1009)、44歳で権大納言に至った。
父のように関白になることはなかったが、和歌、漢詩人、管弦などの才を兼備し、有職故実学にも長じていた。
中古三十六歌仙の一人であり、公任が完成させた『北山抄』は、平安時代の三大故実書の一つといわれる。
「公任は、どの船に乗るのだろうか」
歴史物語『大鏡』第二巻「太政大臣頼忠」によれば、ある年、道長は大堰川で、舟遊びを催した。
そのとき、漢詩の舟、管絃の舟、和歌の舟と三つの舟に分け、それぞれの道に秀でた人々を乗船させた。
そのとき道長に、「公任は、どの船に乗るのだろうか」と言わしめたという。
この「三舟の才」の逸話にみられるように、公任の多才博識はよく知られていた。
道長も一目置いていたといわれ、道長は黒木華が演じる正室の倫子との間に生まれた藤原教通の妻に、公任の娘を迎えている。
公任は万寿2年(1025)、60歳の時、洛北の長谷に籠居し、翌年に出家した。
その後、道長、行成、斉信が没していくなか、76歳まで生き、長久2年1月1日(1041)にこの世を去った。