ストーブ列車の満喫ポイント

 さてハード面はさておき、ストーブ列車の真の楽しさを味わうためのポイントをこれからいくつかお教えしよう。ストーブ列車には専用のアテンダントさんが乗務しており、津軽弁で観光案内をしてくれる。最近はSNSなどで津軽弁の難解さが人気になっているが、実際にリアルで聞くとその理解不能さに納得する。

 またどこかのタイミングで車掌さんが数回ダルマストーブに石炭をくべにやってくる。メラメラと炎がたなびくなかへリズム良く石炭を投げ入れるシーンがみられるのも、この列車ならではの光景だ。

ストーブへ投炭の様子。ただし写真を撮るときには一声かけてからにしておこう

 そしてこの列車最大の魅力といえば、ストーブの上の網で焼くスルメである。日本海で獲れたスルメは車内で700円で販売しており、購入するとアテンダントさんが自ら網の上で丁寧に焼いてくれる。焼き上がると食べやすいように細く割いて渡してくれるサービスには感激する。お酒が呑める人であれば青森の地酒とともに食すと良い。ストーブの網から立ちこめるスルメの香ばしい香りとお酒の甘い匂いが旧型客車の車内で絡みあい、令和時代の鉄道旅とはとても思えないほどの高揚感と充実感が味わえるだろう。

音、香り、味などストーブ列車のスルメは五感で楽しめる。冷めないうちにいただこう

 乗車日は比較的空いている平日がおすすめだが、土休日しか乗れないというときは、上りの154もしくは156列車が良いだろう。そうしておけば、もし津軽中里駅からバスツアーなどの団体客が乗り込んできても金木駅で下車する確率が高いので、その後は終点までのんびり過ごせる。団体客などで車内が混雑してしまうと、せっかくスルメを買っても焼いてもらうための順番待ちが必要で、最悪の場合は下車駅まで順番が回ってこないこともあるからだ。

 あと午前中2本のストーブ列車はDD350形機関車が連結されないことが多いので、もし都合がつくなら午後の列車に乗車したい。客車はオハフ33形の方が製造当時の姿を色濃く残しているため、こちらの車両に乗りたいところ。

 ちなみにストーブ列車に乗るには乗車券の他に500円のストーブ列車券が必要だ。全席自由席のためダルマストーブ前の席にみんな座りたがるが、経験からいうと暑すぎて汗をかくほどなので、個人的にははす向いの席を推奨しておく。

ストーブ列車で古き良き昭和の汽車旅を体験してみよう

 そして最後はストーブ列車が生まれた理由。津軽鉄道が全線開業した昭和初期の時代は、機関車から客車へ暖房の元となる蒸気や電気を取りこめなかったため、仕方なく車内にダルマストーブを置いたのがきっかけだという。それが今では冬の津軽の人気列車になっているのだから、全国の赤字ローカル鉄道の活路も、実は身近なところに潜んでいるのかも知れない。