プロゴルファーのスポンサーを務める企業は多数あるが、そうではなく、隣で一緒に戦う“プロキャディ”の支援に目を向けた企業がある。NTTデータ グローバルソリューションズ(以下、NTTデータGSL)だ。
同社は2023年3月、一般社団法人 日本プロキャディー協会(以下、JPCA)とスポンサーシップ契約を締結した。JPCAは、プロキャディが果たす役割の認知浸透と職業としての確立、そして育成などを目的に設立された協会だ。かたやNTTデータGSLは、日本企業の経営を支えるITシステム導入から運用保守などをサポートしている。プロキャディとIT。なぜこのような組み合わせのスポンサーシップが生まれたのだろうか。その経緯や狙いについて、NTTデータGSL取締役の鈴木紀幸氏に聞いた。
最初は「JPCAも戸惑っていた」スポンサーのアイデア
今回のスポンサーシップについて、最初にNTTデータGSL から提案したとき、JPCAは驚いていたという。「JPCAの代表理事を務める森本さん(森本真祐氏)も、『意外なお話で戸惑いました』とおっしゃっていましたね」と、鈴木氏は笑顔で振り返る。しかしその後、「私たちがこの提案に至った理由や考えを説明すると、納得していただけました」と話す。
改めてJPCAとは、プロキャディという役割や職業の認知浸透や普及、人材育成を目的として、2019年に設立された組織だ。なぜNTTデータGSLは、JPCAとのスポンサーシップ締結に動いたのだろうか。鈴木氏は、その経緯をこう語る。
「当社ではより多くの方に企業のブランドイメージを伝えていきたいという考えから、ビジネスパーソンに愛されているスポーツへのスポンサーシップを一つの策として検討していました。その中で、IT面からお客さまをバックアップする私たちの事業を伝えるには、同じように選手をサポートする方々の支援をするのが良いのではないかと考えたのです。その観点で見ると、プロキャディとプロゴルファーの関係性は、私たちとお客さま企業のそれによく似ています。この気づきから、今回のアイデアが生まれました」
プロゴルファーは、さまざまな情報の中で“次の一打”に向けた判断を迫られる。コースや距離のほか、風や芝の状態、気温や湿度といった自然条件も加味しなければならない。それを支えるのがプロキャディの存在だ。コースの特徴を事前に調べ、自然条件や選手のコンディションを見て、判断をサポートする。調子が悪いときは無理をさせず、冷静に対処すべきと助言する場面も出てくるだろう。
「同じように私たちも、ITのプロフェッショナルとしてお客さまを支え、ビジネスを成功に導くパートナーです。特にプロキャディの方のお話を聞いて共感するのは、決して一方的な関係ではないということです。仮に意見が食い違っても、プロとしての責任と矜持を持って自身の考えを述べる。それは私たちがお客さまと向き合う姿勢にも通じております。お客さまの要望通りに作られたシステムが必ずしも最適解になるとは限りません。現場が使いにくいものや、その後のメンテナンスが難しいものになる可能性もあります。だからこそITのプロとして、お客さまにきちんと意見を伝える。これが、あるべき姿だと考えています」
言いなりにならず、最適な意見を伝えるからこそ、長期にわたる揺るぎない信頼関係が生まれる。それは同社のビジョンである「Trusted 3G」(Trusted Global Company, Trusted Growing Company, Trusted Good Company)にも込められており、グローバルに成長する「信頼される良い会社」を目指している証といえる。
「お客さまの事業や現場の業務、課題まで深く理解してこそ、信頼が生まれ、本当の最適解を提案できると考えています。単なる契約関係ではなく、お互いの考えや状況を深く共有し、長い関係性の中でプロジェクトを進めていく。私たちはよく『同じ船に乗る』と表現しますが、その姿勢がプロキャディに重なったのです」
コーチやトレーナーが選手に関わるのは、基本的に“試合前”まで。しかしプロキャディは試合中も一緒に戦う。実は個人スポーツにおいて稀有な存在であり、鈴木氏はこの点にもNTTデータGSLとの近さを感じた。
「ITの分野も、システムを導入したら終わりではありません。システム導入後の運用保守というフェーズでも、お客さまを支えるサービスを当社は提供しています。さまざまな共通点があり、だからこそ私たちがスポンサーとしてサポートできればと考えました」
「プロキャディの課題解決」を、私たちもバックアップしたい
JPCAは、代表理事の森本真祐氏と、副代表理事の清水重憲氏が中心になって設立された。2人とも数々の実績を残してきたプロキャディだが、この職業に対するいくつかの課題も感じていた。たとえばプロキャディの認知を高めて志望者を増やそうにも、あるいは働く環境の整備や待遇改善をしようにも、プロキャディは基本的にみな個人事業主であり、組織として動く仕組みがなかった。
そこで作られたのがJPCAであり、今回のスポンサーシップにより、プロキャディの環境整備や人材育成という動きをNTTデータGSLがバックアップしていく。
「JPCAの活動によってプロキャディという職業の重要性がより一層認知されていけば、ゴルフというスポーツ自体の盛り上がりにも貢献できるでしょう。もちろん、将来プロキャディを目指す人材の増加や、その育成にもつながっていくと考えています」
近年、プロキャディに脚光が当たる機会も増え、目指す人も多くなっている。しかし、プロキャディの“なり方”は人それぞれバラバラで、逆に「なりたくてもどこに行けば良いかわからない」という状況もあった。JPCAのような協会ができることで、興味のある人が相談する窓口にもなり得る。いずれはプロキャディの育成学校なども作れればと考えているようだ。
「NTTデータGSLとしても、JPCAの活動を後押しながらプロキャディの役割にもっと光が当たり、業界全体が盛り上がることを望んでいます」
スタイルもそれぞれ、プロキャディの奥深さを「特設サイト」で発信
現在、スポンサーシップの「特設サイト」が作られ、プロキャディに関するさまざまな記事コンテンツが掲載されている。鈴木氏も、いろいろな話を聞く中で「知らないことばかりで、日に日にこの職業の奥深さを感じましたね」と話す。
何より興味を引いたのは、ひとくちにプロキャディといっても、人によってスタイルや哲学が千差万別なことだ。
「スイングやグリーン上のライン読みなど、技術や戦略面まで踏み込んでプロゴルファーにアドバイスする方もいれば、そこにはあえて一切触れず、スコアが苦しいときに励ましたり、世間話で気を紛らわせたりと、メンタルのサポートに徹する方もいます。さらにはその両方を、相手の性格や場面に合わせて使い分ける方もいる。プロキャディそれぞれに個性があり、いろいろな引き出しを開けながら最適解を探しているのは興味深いですね。特に最近は女性のプロキャディが増えており、この職業に就いた経緯も人によってさまざま。そのストーリーを読むだけでも楽しめると思います」
本特設サイトでは、プロキャディ個人に焦点を当てたインタビューを順次公開し、それぞれの哲学やストーリーを紹介していくとのこと。先述した清水重憲氏のほか、女性キャディとして活躍する定由沙織氏、原田眞由美氏の記事がすでに掲載されている。
~プロキャディ・ストーリー vol.02~
優勝の喜びと昂りをもう一度経験したくて卒業を先送りにしました。
定由 早織氏
記事はこちら
~プロキャディ・ストーリー vol.03~
娘を見守る母親のように選手に寄り添いながら共に成長できる喜び。
原田 眞由美氏
記事はこちら
「もうひとつ、プロキャディについて知る中で印象深かったのは、海外と日本における文化の違いです。海外では選手との関係が比較的ドライで、プロキャディが関わるのはラウンドのみが多いようですが、日本はその後の練習にも協力するケースがよくあるようです」
また、日本のプロゴルファーが海外のツアーに参戦するとき、日本からプロキャディを帯同させることもあれば、現地で新たにパートナーを探すケースもある。「コミュニケーションのしやすい日本人と、現地のコースや気候に詳しい海外のプロキャディ、それぞれの価値観で選択しているのでしょう」と鈴木氏は話す。
「NTTデータGSLでも、日本企業がグローバル展開する際に、IT面からサポートさせていただくことが多くあります。日本企業は独自のシステムを持っているケースが多く、どこまでグローバルに合わせるのか、あるいは独自の強みを活かしていくのか、すり合わせが重要になってきます。スタッフの体制も、当社の国内スタッフが帯同するほか、事情を知り尽くした現地のグループ企業と組んで行うなど、ハイブリッドで進めています。こういった面でも共通項が見えてくるのは面白いですね」
また鈴木氏は「いままではプロゴルファーばかり見ていましたが、最近はプロキャディの方が何をしているのか、どんなタイミングでどうアドバイスするのか、そういったことに目が行くようになりました」と話す。「特設サイトの記事を読むと、プロキャディという職業の面白さやそれぞれのストーリーに触れられます。ぜひ多くの方に見ていただきたいですね」と続ける。
お互いの共通点から生まれた今回のスポンサーシップ。さまざまなコンテンツによってプロキャディの重要性や魅力を発信し、その地位の確立や、この道を目指す人を増やしていくとともに、お客さまのグローバルレベルでの成功をサポートするプロフェッショナルとして、パートナーシップのあるべき姿を追求していく。
日本プロキャディー協会スポンサーシップ特設サイトはこちら
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