取材・文=吉田さらさ

北海道神宮 手水舎 写真=アフロ

明治時代に創建

 今月はやたらと暑い日が続く東京を離れ、涼しい札幌の神社に行ってみよう。北海道の総鎮守である北海道神宮は、札幌市民の憩いの場の円山公園に隣接している。市の中心部から地下鉄と徒歩で30分もかからないのだが、さすがは北海道。すでに自然の真っただ中だ。周辺の散策も兼ね、ゆっくり時間を取って出かけることをお勧めしたい。

北海道神宮 鳥居 写真=フォトライブラリー

 まずは由緒の話から。北海道の神社は本州の神社とは成り立ちが違う。それはもちろん、この地がもともと日本とは別の国だったからである。神社は一般的に言って古くからその地の人々に信仰されてきた神を祀る場として生まれたものが多いが、かつて蝦夷地と呼ばれていた北海道にはアイヌの人々の暮らしがあり、独自の信仰が根付いていたため、それはあり得ない。北海道神宮は、明治になってから創建された新しい神社なのである。

 明治2年、北海道の開拓・経営を行うために開拓使が設置され、蝦夷地は北海道と改称された。同年9月に東京で、明治天皇の勅使により大国魂神、大那牟遅神、少彦名神の開拓三神を祀る「北海道鎮座神祭」が催行された。これが北海道神宮の始まりである。大国魂神は大国主神と同じ神様であるという説と別々の神であるという説があり、定義があいまいである。

 しかし各地で国を治めてきた神々の総称とも言われるため、この地でも北海道の国土の神と見なされる。大那牟遅神は大国主神と同じ神で国土経営・開拓の神、少彦名神は国土経営・医療・酒造の神。大国主命と少彦名神が国造りの同志であることは、古事記や日本書紀の記述でもよく知られている。

 この三柱の御霊代は東京から船で函館に運ばれ、明治3年に札幌の仮社殿に祀られた。そして札幌神社という社名となり、明治4年に現在の円山の地に建てられた社殿に遷座した。昭和39年には明治天皇が御増祀されて御祭神は四柱になり、北海道神宮と改称された。

 

珍しい形の注連縄

 では境内を歩いてみよう。隣接する円山公園には円山という標高225mの山があり、周辺には円山原始林が広がっている。北海道神宮境内もほとんどが森林だ。野鳥やエゾリスなどが普通に生息しているので、自然観察が好きな方にもおすすめである。

北海道神宮に出没するキタキツネ 写真=アフロ

 表参道をまっすぐ歩いたところにある神門には巨大な注連縄がかかっており、その上に二段の俵と御幣が飾られている。この珍しい形の注連縄は「フラヌイ大注連縄」と呼ばれ、北海道中富良野町の農家などで結成する中富良野俵神輿同志会が定期的に奉納しているものだ。

北海道神宮 神門の注連縄 写真=松岡幸月/アフロ

 神門をくぐると、広々とした空間の奥に本殿がある。この建物は三代目である。最初の建物は明治4年に円山に遷座した際に建てられた仮本宮。二代目は大正2年、伊勢神宮御正殿の古材の下附により造営された由緒ある建築物だったが、昭和49年に火災で全焼。現在の建物は昭和53年に復興されたものだ。

 立派な拝殿の奥に本殿、左右は回廊に囲まれている。回廊の前に、奉納品の酒樽ならぬビア樽が積みあげられているのがいかにも北海道らしいところだ。

北海道神宮 本殿 写真=田上明/アフロ