開拓三神と明治天皇へのお参りを済ませたら、境内社巡りもしてみよう。よく知られているのは開拓神社だ。幾多の困難を克服して北海道の開拓に尽くされた人々を讃えるために祀った神社で、御祭神には、明治以降の実在の開拓者たちが多数名を連ねている。

 神社はその土地で敬われる神を祀る場なので、北海道で開拓者を神として祀るのは当然なのかも知れない。こちらは北海道神宮の中でも最強のパワースポットとされ、開拓者たちにあやかって人生を切り開きたいと願う人々にも人気のようだ。

開拓神社 写真=矢部志朗/アフロ

 歩き疲れたら、ちょっと甘いものでもいかがだろうか。こちらの境内には「神宮茶屋」と「六花亭参拝者休憩所」という二つの甘味店があるので立ち寄ってみよう。

「神宮茶屋」は令和に開店した新しい店で、神前に供物をささげる際に使われる柏の葉をかたどった「焼きたて福かしわ」というサブレとソフトクリームが人気。「六花亭参拝者休憩所」の名物は、粒あんたっぷりの「判官さま」という焼き餅である。道内に六花亭の支店は多いが、判官さまはこの店舗のみの提供だ。

 北海道には、この六花亭だけでなく、観光客に人気のスイーツ店が数々ある。小麦や乳製品、小豆などお菓子の原材料が豊富なためだが、そうなったのも、開拓者たちが原始林を切り開いて農地を作ったおかげなのだ。開拓者は甘いもの好きにとっても神なのである。

 

「判官さま」とは

 六花亭の焼き餅の名前になっている「判官さま」とは、開拓使判官に任命され、現在の整然とした札幌の街づくりを計画した島義勇のことである。この人は佐賀県出身の武士で、函館から札幌まで開拓三神の御霊代を背負ってやって来た。まずは神を祀るべき場所を確認し、札幌の中心部も定めて街づくりに取りかかったが、わずか4か月で解任されて佐賀に帰り、佐賀の乱の首謀者として打ち首になったという。

 しかし島義勇は札幌の開拓者たちにとって道を開いてくれた偉人であるし、北海道神宮にとっても御霊代を連れてきてくれた大恩人だ。本殿前の樹木の間に手を上げて前に向かうりりしい判官さまの銅像があるので、敬意を表しておきたい。

 北海道神宮は桜の名所としても有名で、毎年5月に約1100本のヤマザクラやソメイヨシノなどが咲き誇る。これは、明治8年、福玉仙吉という人が島義勇の死を悼んで150本のヤマザクラを植えたのが始まりという。判官さまは、今は桜となって札幌の街と人々を見守っているのかも知れない。