ベストを尽くすことと、失敗を恐れない姿勢

2004-2005シーズン、中庭は全日本選手権で2位に。1位は本田武史(中)、3位は織田信成(右) 写真=アフロスポーツ

「まずは主体性ですね。言い換えると自主性。自らやるということ、自らうまくなる道を選ぶということ。それと、想像力を持つこと。もう少し付け加えると、近い未来の想像力ですね。つまり自分が今こういう行動をとっていたら近い将来こうなる、想像をすることによって今の自分がどうあるべきかという取捨選択をするということです。他の人に対しての想像力も含まれます。一緒に練習している仲間や親御さん、自分の周りでかかわる人たちに、どういう言葉や行動をとったらどう思われるか。そういったことを含めて想像力というのは僕の中ではとても重要です」

 同時に大切にしようと考えたのはベストを尽くすということ。そこには失敗することを恐れない姿勢も含まれる。

「僕はけっこう完璧主義者のところがありますが、完璧主義者って行き着く最終的なところというのは行動しないということです。いろいろなことが不安で、いろいろ準備をしなきゃと言って、気づいたら1カ月経っていることもあり得る。そうではなく、最初からうまくいく確証はなにごともないので失敗してもいいというところからスタートすること。そもそもコロナ禍だって誰も想像していないことだったですよね。

 別に失敗してもいいというところに立ち返りつつ、でも『失敗するからいいや』と適当にやるのではなく、可能な限りのベストを尽くそう、その結果としてのミスはかまわないという意味です。

 フィギュアスケートも結局、冒頭のジャンプで転倒しても残りの全部を決めて点数がいちばん高かったら優勝しますし、ショートプログラムが駄目でもフリーで挽回することもできるスポーツです。失敗を怖がり過ぎて、、最初のジャンプをミスしてそのままぼろぼろになってしまうケースも見受けられますが、そういう意味でも完璧を追い求めすぎる、失敗を恐れるのはよくないと思っています」

 福岡で指導者としての姿勢を確立し、MFアカデミーのヘッドコーチになるにあたって指導の方向をより突き詰め、アカデミーでの日々がスタートした。

 そこに加わったのが渡辺倫果や中井亜美らだった。

 中庭は2人の個性とその成長をどう捉えているのだろうか。(続く)

 

中庭健介(なかにわけんすけ)生まれ育った福岡市でスケートを続け、全日本選手権に12度出場し3度表彰台に上がったほか四大陸選手権やグランプリシリーズなどに出場。息長く現役生活を続け、2011年に引退しコーチに。2021年より千葉県船橋市でスタートしたMFフィギュアスケートアカデミーのヘッドコーチに就任。