2023年3月27日(月)から4月2日(日)までの1週間開催された世界の時計の祭典「WATCHES AND WONDERS 2023」に参加して19ブランドのプレゼンテーション等に参加した鈴木・福留のJBpress autograph編集チーム。個別のブランド・時計の紹介の前に、感想をそれぞれのブランドについて振り返る、編集部対談企画、最終回

PIAGET(ピアジェ)

鈴木 いよいよ最終日です。最初はピアジェからでしたが、朝から刺激的でした。ExtravaganzaとEleganceを組み合わせてExtraleganzaという造語をつくって、それをテーマとしていました。

福留 ピアジェは宝飾と時計との歴史がありますが、スタート地点は1874年で、ムーブメントの製造をやっているサプライヤーでした。意外という人も多いのですが、時計の歴史の方が圧倒的に長いんです。腕時計では1957年に9pという、厚さが2mmしかないキャリバーを生み出したように、特に薄型のモデルには定評があります。

Altiplano アルティメート コンセプト ウォッチ

福留 ジュエラーとしての歴史は1959年にジュネーブのブティックでジュエリーと時計のクリエーションを披露した「サロン ピアジェ」にはじまります。その後はご存知のようにジュエラーとしてもトップブランドとなります。それもピアジェウォッチの強みですね。1969年には前衛的な「21st Century」を発表。これはパリのオートクチュールのランウェイから生まれたらしいです。それでファッションにあわせた腕時計を、ということで、ソートワールウォッチやカフウォッチが誕生。今年はその頃をイメージしているということでした。時間のジュエラーですね。

鈴木 最初に見せてくれたのが、そのソートワールでしたね。フランス語で長いネックレスみたいな意味ですが、ペンダント部が時計になっている。

福留 ピアジェの金細工のスゴさがわかりますね。僕はジュエリーのことはよくわからないのですが、実際に手にとって見てみると相当なものだというのはわかりますね。

High Jewellery Swinging Sautoir
28,380,000円(税込予価)

鈴木 チェーンが凄まじいことになっていて、細い金のワイヤーを編み込むところから始まって、熟練の職人が100時間もかけて作り上げるとのことです。

時計の下に垂れ下がるタッセルにはダイヤモンド(ソートワール全体で6カラット分使用されている)

福留 文字盤を囲むベゼル?もツイストゴールドを使用していて、バランスが取れてますよね。

PIAGETのロゴが上下逆さまなのは、持ち上げて時計を見るため。つまり、12時は首から下げているときには下に来る

鈴木 時計のダイヤル部の波状の仕上げはピアジェに2人いる彫金職人さんの作品で「パラス・デコール(パレス装飾)」と呼ばれているそうな……

福留 この時計?は、受注生産で、ピアジェの技術のデモのような形で今回見せてもらったものですね。ピアジェは自前で金を溶かす装置を持っていて、彫金工房もある。それが同じ工房内にあるのもこのブランドならではの強みですね。

鈴木 つづいてのカフウォッチもブレスレット部がゴールドで「パレス装飾」です。

Limelight High Jewellery Cuff Watch
23,760,000円(税込予価)

福留 シルクのように見えるゴールド、という説明でした。パレス装飾は、時計のギューシェ彫りからインスパイアされ、1960年代に誕生した装飾だそうです。

LIMELIGHT AURA HIGH JEWELLERY WATCH
137,280,000円(税込予価)

鈴木 こちらは「オーラ」と呼ばれている時計のひとつ。「オーラ」は1989年に登場したそうです。手巻きの薄型ムーブメント「430P」を搭載し、そのおかげで、ふんだんにサファイアとダイヤモンドをセットできているとのこと。それらは非常に小さな爪で固定されています。今回のピアジェの作品のなかでも最高級品で、作ってもらいたい場合は1億4千万円くらいになるとのこと……

福留 これだけきれいにグラデーションしていくサファイアを手に入れることがまず困難を極めるようです。石を揃えるだけで8カ月かかるそうですね。

Piaget Polo パーペチュアルカレンダー ウルトラシン
10,032,000円(税込)

鈴木 つづいてはパーペチュアルカレンダーの新作です。普通の時計でほっとしている自分がおります。

福留 それでも超高級品ですけどね。こちらもピアジェならではのわずか4mmの極薄ムーブメントを搭載しています。なのでケース厚も8.65ミリ!ステンレススティールのバージョンもあり、いずれも、簡単にストラップが交換できます。ピンクゴールドのものにはアリゲーターストラップ、ステンレススチールのものにはブレスレットが標準でつき、交換用のラバーストラップが付属しています。

Piaget Polo パーペチュアルカレンダー ウルトラシン
7,700,000円(税込)

鈴木 ただ、このモデルにも、ロジウム加工された18Kホワイトゴールド製ケースにラウンドブリリアントカットサファイアをあしらい、ダイヤルはブルーオブシディアンという、特別バージョンがありました。

PIAGET POLO パーペチュアルカレンダー オブシディアン
14,960,000円(税込予価)

福留 時計では今年はポロがメインのようですね。ピアジェには以下の写真のモデルのように、ムーブメントのブリッジ部にダイヤモンドがセットされているような時計もあります。これは、ジュエラーとしても時計技師としても優れた職人がいて、お互いにバランスを取りながらでないと作れない。なかなか、よそではできない時計です。

IWC

メルセデス・ベンツが1978年に発表した実験的車両『C111-Ⅲ』がひときわ目を引く

鈴木 1970年代のインダストリアル・デザインをテーマとしたIWCのブースはいつ見てもすごい賑わいで、人気の高さがうかがえましたが、時計としては『インヂュニア』一本勝負といった雰囲気でしたね。

福留 IWCは毎年1コレクションのみをフューチャーするのが恒例。今年は『インヂュニア』でした。

IWCのアーカイブから最近発見されたという、ジェラルド・ジェンタのデザイン画

鈴木  『インヂュニア』といえば耐磁性が高い時計、というくらいの知識ですが……福留さん?

福留 『インヂュニア』は、1955年に初代が登場しました。インヂュニアはエンジニアを意味し、ルーツはパイロットウォッチにあります。なので耐磁性は必須。ということで軟鉄製インナーケースが嵌め込まれており、抜群の耐磁性を誇ります。もちろん堅牢な腕時計なのですが、この時代のモデルはベゼルも細く、いまで言うとドレスウォッチのような雰囲気でした。僕はこの頃のデザインも好きなんですけどね。現在のモデルは1974年に天才デザイナー、ジェラルド・ジェンタがデザインし、1976年に『インヂュニアSL』として発売されたものがベースになります。

1976年の『インヂュニアSL』

鈴木 今回、登場したのはその2023年バージョン、といっていいのか……

インヂュニア・オートマティック40
1,567,500円

福留 もう50年近い月日が流れ、時計の中身はマイナーチェンジのたびに進化していますが、今年のモデルは復刻ということです。76年の、通称「ジャンボ」へのオマージュですね。デザイン上は、全体の雰囲気もそうですが、ベゼルの5つのビス、格子柄のダイヤル、H型のブレスレットといったポイントを踏襲しています。

鈴木 アイコニックなデザインですよね。

福留 いまでこそそうですが1976年は、いわゆるクォーツショックの真っ只中です。最初は生産本数も少なく、売れてないんです。ヴィンテージ市場でもこの年あたりのモデルはほとんどないようですし。あとはサイズですね。今回も40mmですが、当時はこれはかなりデカい時計だった。

鈴木 今回発表されたのはステンレススティールでダイヤルの色違い3モデル(ブラック、アクア、シルバーメッキ)、さらにチタンモデルが登場しています。

インヂュニア・オートマティック 40(チタンケース)
1,958,000円(税込)

福留 先代モデルでは省かれていた耐磁性が復活。モバイルや電子機器が欠かせない現代人にとっては心強い機能ですよね。

MONTBLANC(モンブラン)

鈴木 モンブランは社長と時計の責任者のインタビューができたので追って詳しく紹介しますが、新作、多かったですね

福留 『ゼロ オキシジェン ザ・ 8000』、『アイスシーオートマティック デイト』の新作、『スターレガシー』の新作、そしてミネルバから新しい機構を積んだクロノグラフが発表された、というのが概要ですね。

鈴木 個人的に一番、興味深かったのは、「ミネルバ」のクロノグラフでした。

ミネルバ 1858 アンヴェイルド タイムキーパー ミネルバ リミテッド エディション
28本限定 7,202,800円(税込)

福留 「ミネルバ」は、2006年にリシュモングループ傘下に入り、2007年に同じくリシュモングループのモンブランと共同で研究機関を設立して以来、そのムーブメントはモンブランに独占供給されています。「ミネルバ」はかつて世界一のクロノグラフメーカーと称されたこともあり、いまだに熱烈なファンがいます。

鈴木 クロノグラフなのにケースサイドにボタンがないんですよね。代わりに回転ベゼルが備わっていて、1ノッチ回すと計測スタート、さらに1ノッチ回すとストップ、さらに1ノッチでリセット、となる。

ミネルバ 1858 アンヴェイルド タイムキーパー ミネルバ リミテッド エディション
100本限定 5,238,750円(税込)

福留 そのほかでいうと『1858 アイスシー オートマティック デイト』が印象的でしたね。普通ダイバーズとなると南の海を想起しますが、これは氷河のある寒い地域の海。文字盤は氷河のような質感で表現されています。グラデ・ボアジという古典的な技法で製作されているそうです。とくにグレーダイヤルは寒い!と感じるほどリアル。

モンブラン 1858 アイスシー オートマティック デイト
498,300円(税込)

ROLEX(ロレックス)

鈴木 いよいよWATCHES AND WONDERS 2023での取材も大詰めに入ってまいりました。最後から一つ前は「ロレックス」です。

福留 今年は『デイトナ』が発表されてから60周年、ということで、まずは『コスモグラフ デイトナ』です。現行からヴィンテージまで、圧倒的な人気を誇るモデルですね。60周年なので、何か特別なバージョンが出るのかと思っていたら、フルモデルチェンジでした。

鈴木 とは言っても、これほどのコレクションになるとそう大きくは変えられないですよね。

コスモグラフ デイトナ プラチナモデル

福留 セラクロムベゼルの縁にケースと同じ素材で縁取りが入ったそうで、これは1965年のデイトナのデザインを踏襲しています。

コスモグラフ デイトナ イエローゴールドモデル ブレスレットは「オイスターフレックス」を装着したもの
3,642,100円(税込)

鈴木 アワーマーカーが少し小さくなった、クロノグラフカウンターのメモリがスリムになった、という差異もあるそうですが……

福留 キープコンセプトですね。内部はキャリバーが「4131」という72時間パワーリザーブの新しいものに変わっています。2000年に搭載したロレックス初の自社製自動巻きクロノグラフムーブメント「4130」も、アップデートを加えてきましたが、フルモデルチェンジを機に新しいムーブメントに切り替えましたね。

コスモグラフ デイトナ プラチナモデル

鈴木 プラチナ、スチール、イエローゴールド、そしてスチールとイエローゴールドのコンビネーションの4モデルですが、このうち、プラチナが特別で、ケースバックがシースルーになっている。「コート・ド・ジュネーブ」という装飾が入り、ローターはイエローゴールド。

福留 プラチナモデルは当然ですが、重かったですね。ケース、ブレスレットとフルプラチナですから。

鈴木 ほかには『1908』という新コレクションが発表されました。

1908 ホワイトゴールドモデル
2,768,700円

福留 『チェリーニ』に代わるコレクションですね。1908年はロレックスが商標登録された年です。ダイヤルのデザインは1930年代の『オイスター パーペチュアル』からインスパイアされているそうです。

鈴木 シンプルでエレガントなスモールセコンドの時計ですね。デイト表示がないのもスッキリしていていいです。厚さも9.5mmということで薄い。ケース径は39mm。イエローゴールドとホワイトゴールドの2種類。アリゲーターストラップは裏がカーフスキンになっています。

1908 イエローゴールドモデル
2,619,100円(税込)

福留 その他、『ヨットマスター』のチタンモデル、アップデートして「9002」というムーブメントに変わった『スカイドゥエラー』、40ミリモデルが加わった『エクスプローラー』、いずれもジュビリーブレスのイエローゴールドとスチール&イエローゴールドのコンビネーションモデルが発表された『GMT マスターⅡ』とありましたが……

スカイドゥエラー ホワイトゴールドモデル
5,075,400円

鈴木 馴染みがあるのは、やはり『GMT マスターⅡ』ですかね。

福留 『GMT マスターⅡ』のジュビリーブレスっていまだに僕は違和感があります。

GMT マスターⅡ オイスタースチール&イエローゴールドモデル
1,958,000円

鈴木 今は、ジュビリー派も結構いるとのことでしたね。

福留 嫌いじゃないんですよ。昔からのイメージの問題ですね。『オイスターパーペチュアル デイト』なんかについてるジュビリーブレスはとても良いと思ってるんですが。

鈴木 違和感といえば、みんなが驚いていたのが、この『オイスター パーペチュアル』でした。

オイスター パーペチュアル セレブレーション モチーフ ダイヤル サイズは左から41mm、36mm、31mm

福留 2020年に出たカラフルなオイスター パーペチュアルの色が全部入っているそうです。ロレックスにもこういう面があるのか、という。個人的には36㎜のモデルが好きですが、実際に付けるとなるとぼくは41㎜の方が合うみたいです。

鈴木 サイズ感がわかるように3本並べて撮った写真を載せましたが、色がよく分かるように公式の画像も載せます。

PATEK PHILIPPE(パテック フィリップ)

鈴木 さぁ、福留さん、僕らにとってはこれがジュネーブ最後の取材ですよ。パテック フィリップ! 僕、入っていいんですか? やたら緊張します。

福留 最後に最高級ブランドが来ましたね。今回はパテック フィリップ ジャパントップの長野さんが説明してくれまして、ちょっと緊張感がありましたね。それにモデルが多いのと、機能的な説明も多かったので、日頃あまり使ってない脳がかなり疲れました(笑)今年パテック フィリップは新作が13リファレンス、17モデル。そのうち、全く新しいのは3でした。まずは24時間表示の時計『カラトラバ トラベルタイム』ですね。

鈴木 このモデルはダイヤルが印象的でした。

カラトラバ5224R-001モデル
7,711,000円(税込)

福留  1905年の『クロノメトロゴンドーロ』にこういうものがあって、それがインスパイアの元とのことです。トラベルタイムとは、要はホームタイムとは別のローカルタイム(第二時間帯)を表示できる仕組みで、多くのブランドがデュアルタイムと言ってるのと同じですね。ダイヤル表示では12時が上に、24時が下にあるのが特徴。これによって上部が昼、下部が夜、となっているので非常にわかりやすいんです。昼夜インジケーターが不要になり、ダイヤルが整理されました。ムーブメントはマイクロローターのCal.31-260ですね。 

鈴木 パテック フィリップのトラベルタイムは9時側のプッシャーで針を単独稼働させて時間を調整していましたが、昨年、これをリューズ操作へと変更。今年のモデルもリューズひとつで操作できるようです。昨年のモデルはトラベルタイムと年次カレンダーの組み合わせというスゴいものでしたが、今年はトラベルタイムのみというシンプルなモデルでした。

福留 特許を取得した3ポジションリューズでは、真ん中のポジションでローカルタイムを1時間単位で設定。もうひとつ引くとホームタイム、ローカルタイムを同時に設定できるようです。

鈴木この時計はダイヤルも特徴的。ネイビーブルーは3トーンあり、中心は同心円状の模様、スモールセコンドのなかも同心円状の模様、時刻帯はサテンフィニッシュ。単色で3トーンに見せている。上からメッキを重ねてコートしています。その後、アプライドインデックスの裏についた細いワイヤーを脚として24時間分、文字盤に開いている穴に入れるようです。その後、脚を曲げて外れないように固定する。パテックは接着剤は使わないのだそうです。

福留 インデックスの溝のなかには、ルミナス、つまり蛍光塗料を注射器のようなもので入れていく。ひとつでも間違えるとやり直し、という神経を使う作業をやっているそうです。

鈴木 これだけ精密なことをするならば機械を使えばいいのにとおもってしまうけれど、これを手作業でやるところが価値なのでしょうか?

福留 ここは手作業じゃないと難しいんでしょうね。この繊細な作業を完璧にやり遂げる技術が目に見えない価値なんだと思います。

鈴木 ネイビーブルーの文字盤では、『アニュアルカレンダー・フライバッククロノグラフ』も美しかったですね。ローズゴールドケースのモデルでしたが。

5905R-010
10,098,000円(税込)

福留 これは21年にステンレススティールケースで出てますね。今年はローズゴールドケースが追加された、ということでした。このブルー文字盤も美しかったですね。21年のスポーティなモデルにエレガントな要素が加わった感じです。

鈴木 さきほど話していた『トラベルタイム』には自動巻フライバック・クロノグラフと年次カレンダーを組み合わせたパイロットウォッチも登場してましたね。

5924G-001
10,175,000円(税込)

福留 『カラトラバ』ですが、かなりパイロットウォッチに寄ったデザインでした。こちらはホワイトゴールド製ケースのみでしたが、ダイヤルが2色。カーキとブルーが用意されていました。

 

5924G-010
10,175,000円(税込)

鈴木 こちらのトラベルタイムは、ローカル、ホームタイムの昼夜表示を小窓で行います。昼が白で、夜が青です。トラベルタイムの操作は9時側のプッシャーで行うのですが、プッシュボタンがケースに埋め込まれています。これによってカラトラバの美しいフォルムを損ねることはないのですが、専用のペンシルで押す必要があるんですよね。

福留 それからフライバック・クロノグラフというのも見逃せません。使い方は計測時にリセットボタンを押すことで、瞬時にゼロリセットされ、再計測されるというもの。ただ、このモデルのクロノグラフはエネルギー消費が極めてエコで、クロノグラフ針が通常時は秒針の役割を果たしています。だから、このモデルにはスモールセコンドがないのです。

鈴木 そして『カラトラバ Ref.6007G』。若者には複雑式がオススメとのことでしたが、僕は若くないので、個人的に一番、ステキだな、とおもったのはこれでした。

6007G-001
5,093,000円(税込)

福留 1932年に登場した、いわゆるクンロク(Ref.96)が元祖で、ドレスウォッチのお手本のようなモデルですが、長い歴史の中ではさまざまなバリエーションのモデルを誕生させています。今年のモデルは大人の遊び心をクスぐるユニークさがありますね。

鈴木 スーツでいうなら、ちょっと着崩した感があって、それでも格好いいという感じですね。

福留 そんな感じで、僕もステキだなと思いました。文字盤の中央が市松になっていて、それを囲むレイルウェイのポイントにカラーが施されています。今回はレッド、ブルー、イエローが用意されていて、秒針、外周のポイントとともに差し色として入っています。オシャレですよね。

鈴木 このデザインだからこそ、アプライドなアラビアンインデックスが合いますね。そのバランスがいいと思いました。

福留 ジジイになっても派手すぎず、地味すぎないので、いい塩梅で欲しいな、と思ったんですが、財力が追いつかない(笑)でも目の保養にはなりました。

鈴木 いやぁ、ホント。高級品ですよね。買えてしまえば、お客さんに損はさせない、一流ブランドとしての徹底ぶりを感じましたが、その価値を裏付けるバランス感覚は難しいだろうなぁと、ここであらてめて考えました。精密機械でいいのであれば、それこそ半導体の世界などはもうナノメートルサイズで、分子一個分のサイズでしのぎを削っている。ただ、そこから、パテック フィリップのような価値は、いまのところ生まれて来そうにはない。じゃあ、時計の価値って何か? 人間の手作業の価値、芸術作品のような価値をもった工業製品。奇しくも今回の旅の最後に説明を受けたのがパテック フィリップだったことで、その自問がより明確になったと感じました……

福留 これで今回の取材については終了ですね。 

鈴木 疲れましたね、って毎日言ってますが(笑)お疲れさまでした。

福留 しばらく来てなかったからか、会場が広くなったからか、歳をとったからなのかわからないんですけど、とにかく疲れました。今回は空港近くに泊まっていて、あまり街に行けなかったので、この後、旧市街へ行きましょう。

鈴木 おお!ついに! じゃあスイスワインを探しに行きましょう!