(写真左) ファシリテーター/テックタッチ株式会社 Vice President, Sales 西野 創志 氏
(写真中央) 大日本印刷株式会社 情報システム本部 本部長 宮本 和幸 氏
(写真右) 大日本印刷株式会社 情報システム本部 システム企画部 佐藤 裕司 氏

本コンテンツは、2022年11月24日(木)~25日(金)に開催された「Techtouch DAY 2022『Maximize the power of tech』~システム利活用によるDX&デジタルビジネスの最新事例」のセッション「大日本印刷が描く DX戦略~脱自前主義に向けたSaaSの積極活用~」の内容を採録したものです。

「P&Iイノベーション」による価値創出に取り組む

 大日本印刷株式会社(以下、DNP)について、印刷物をつくっているというイメージを持つ人も多いだろう。だが、同社情報システム本部本部長の宮本和幸氏は「世の中にインターネットが出てきてからは、当社も大きく変化しています」と話す。

 その言葉通りDNPは、印刷技術を応用・発展させることにより、事業領域を拡大している。出版関連事業・情報イノベーション事業・イメージングコミュニケーション事業などの「情報コミュニケーション部門」、ディスプレイ関連製品事業・電子デバイス事業などの「エレクトロニクス部門」、包装関連事業・生活空間関連事業・産業資材関連事業などの「生活・産業部門」など、さまざまな業種業態の企業や生活者、社会の課題を解決する事業を展開しているのだ。

「モノづくり(プリンティング)(P)と情報(インフォメーション)(I)の強みを掛け合わせる『P&I』で事業領域を広げ、新しい価値を世の中に届けています」と宮本氏は話す。さらにDNPでは現在、生活者に直接向き合いさまざまな社会課題を解決する新しい価値を創出し続ける「第三の創業」を掲げた変革を推進している。

「DXにおいても、DNPの基本方針である『P&Iイノベーション』による価値創造こそが、オールDNPで取り組むDNPのDXです」と宮本氏は紹介する。

 DX推進による「付加価値の創出」には、新たなビジネスモデルの構築に限らず、働き方改革や営業革新・生産革新・業務革新も、企業競争力の強化という点で含まれるという。  

 その中での情報システム部門の役割について宮本氏は「ICT利活用を支える『社内システム基盤革新』、ICT活用による『生産性の飛躍的な向上』です」と説明する。「P&Iイノベーション」による価値創出を実現するために、デジタルを最大限に活用し、働き方をアップグレードすることが、情報システム部門の役割とミッションだという。

 ミッションを実現する打ち手についても大きく変化しているという。「『働き方』や『組織風土』を大きく変革させる必要があります。例えば、『働き方』については、受動的なところから提案型に変えました。また、業務システムについてしっかり作り込むことから安く早く作るやり方に変えました。『組織風土』については、社外リソースの積極的な活用や、自前主義からオープンイノベーションへ舵を切りました」と宮本氏は説明する。

 SaaSの活用についても、お客様の情報を扱うビジネスを行っている事もあり慎重なスタンスだったというが、徐々に導入を始めている。「まず海外のDNPグループ会社でoffice365などのSaaSを活用し成功体験を蓄積しました。その後は、セキュリティ対策などの基盤、モバイルデバイスで利用するための基盤などを整備し、国内でも段階的にSaaSの活用を広げていきました」(宮本氏)。

経費精算業務に「テックタッチ」を活用

 DNPは現在、脱自前主義を掲げ、これまでスクラッチ開発にこだわっていた業務アプリケーション領域においてもSaaSの積極活用を促進しているという。すでに多様なSaaSを導入しているが、「その中で、経費精算業務には『テックタッチ』を活用しています」と宮本氏は話す。

 講演ではその背景と課題解決に向けての取り組みが紹介された。経費精算は全従業員が実施する可能性のある業務である。宮本氏は「キャッシュレスやペーパーレスといった波も来ていて、社員へのアンケートでも刷新への要望が多い業務領域でした。そこで当社では『経費精算DX』をテーマにSaaSを導入しました」と語る。同時に、経費精算DXの改革テーマとして、コーポレートカードの活用、モバイルによる承認、電子帳簿保存法(以下、電帳法)対応も進めることにしたという。

 DNPが導入したのは外資系企業が提供する、世界トップクラスのシェアを持つ経費精算・管理クラウドだ。「ただし、海外勢のSaaSには大きな課題がありました。シンプルで機能的なUIである一方、電帳法などの日本の細かい要件に合わないことも少なくありません。従業員から不満も大きく、それに対応するために、私たちも膨大なマニュアルを整備し、長期間にわたる導入研修を行いました。さらに、ヘルプデスクの人員整備も必要でした。定着化に非常に時間と労力がかかるというのが大きな課題でした」と宮本氏は振り返る。

 課題に対して様々な対応を行うと同時により良いソリューションを模索していたという。そこでDNPが出会ったのが、システム上にデジタルガイドを作成することのできる「テックタッチ」だった。

「ただし」と宮本氏は加える。「実は当初、『テックタッチ』は単なるナビゲーションツールくらいにしか思っていませんでした」。DNPの経営陣も「経費精算システムが定着化したらやめればいい」といった話をする人もいたという。

 だが、その考えはいい意味での誤解だった。実際に「テックタッチ」が稼働している様子を見ると、「経費精算DXの本来のねらいに貢献する強力なツール」という見方になったのだ。「テックタッチ」により、従業員がシステムへのデータ入力業務を迅速かつ確実に行うことができることで、業務効率化や様々な業務のコスト削減、またデータ経営の促進につながる。

 実際に、経費精算システムへ「テックタッチ」を適用し、社内通達や電帳法要件の注意事項などを従業員へ周知したり、利用頻度の高い操作に半自動で精算が完了できる仕組みをつくったりすることで高い効果を得ることできているという。

 DNPでは、今後さらに「テックタッチ」の活用を広げていく考えだ。「まずは経費精算システムに蓄積されたデータを分析し、今後どのようなことをやれば効果が出るかを引き出していきたいと考えています。また、他の業務システムへの適用も考えています。当社では経費精算システム以外にも海外製のSaaSを多く活用しています。それらに対しても本来の効果を出すための補完ツールとして『テックタッチ』を活用できないかと考えています」

 興味深いのは、DNP自身のビジネスにおいても、「テックタッチ」の活用を検討していることだ。「当社の製品・サービスも、デジタルシフトを進めています。当社のお客様に提供しているサービスに『テックタッチ』を組み込むことでUI、UXで差別化したいと考えています。その点で、今後もさらにテックタッチ社と連携し、DXそのものを促進したいと期待しています」と宮本氏は結んだ。

「テックタッチ」のUI、UXの機能を最初からサービスに組み込み差別化

 講演では、テックタッチ株式会社 Vice President, Salesの西野創志氏がファシリテーターとなって質疑応答も行われた。

 西野氏が「『テックタッチ』について、当初はナビゲーションツール程度にしか期待をされていなかったとのことですが、どのあたりで認識が変わりましたか」と尋ねたのに対して、宮本氏は「経費精算システムに対する豊富な知見や、さまざまな効果的なテンプレートがあり、わずか3カ月でコンテンツ作成から導入まで完了できました。さらに、『テックタッチ』は、ユーザーの操作をめぐり、どこにボトルネックがあるのかといったことまで可視化できます。それを分析することで、SaaSのガイドだけでなく、さまざまな業務に活用できるのではないかと感じました」と答えた。

 また、西野氏の「現在は、経費精算システムに『テックタッチ』を活用されています。今後どのような展望や可能性を感じてらっしゃいますか」という質問に対しDNP情報システム本部 システム企画部の佐藤裕司氏は「今後、DNPの中で会計システムの刷新というのも控えています。ぜひとも最初から『テックタッチ』を活用することでマニュアルゼロを目指していきたいと考えています」と話した。会計システムの刷新などはユーザー部門にとってはかなり大きなインパクトだ。変わることに対してのアレルギーも多い。より使い易く提供するために、最初から設計上に「テックタッチ」のUI、UXの機能を入れることを検討しているという。

 宮本氏は「DNPグループのICT事業を拡大している中で、ヘルスケアやモビリティの領域では、当社がこれまで競合していなかったプレイヤーとも戦わなければなりません。当社の社内でも活用した『テックタッチ』のナビゲーション機能や自動化、ユーザーに対して気づきを与えるようなアテンションなどが、UI、UXとして組み込まれれば、当社としてのキラーコンテンツが生まれると考えています」と「テックタッチ」への期待を語った。

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