九谷焼の様式美

 施設内には九谷焼窯元の住居兼工房として使われた築200年程の古民家(加賀市指定文化財)があり、現在は展示棟になっています。ここで古九谷や再興九谷の作品を見ることができます。

 古九谷にはいくつかのデザイン様式があります。「青手(あおで)」は緑の色絵の具を印象的に配色して、絵付けされたものです。余白をほとんど余すことなく、器全体に色絵の具を塗る「塗り埋め」も青手の特徴で、再興九谷にも多く見られます。

江戸時代に吉田窯で焼かれた「青手」 

「九谷五彩」と呼ばれる、緑・黄・紫・紺青・赤の色絵の具を使って絵付けされたスタイルが「色絵(いろえ)」です。五色使うことから「五彩手(ごさいで)」とも呼ばれます。器の中央にモチーフを描くことも「色絵」の特徴のひとつです。

 また、白地の上に藍の染付けをしたものが「藍九谷(あいくたに)」です。以上の三様式が古九谷を代表するもので、多くの名品が残っています。

 江戸時代後期になって完成するのが、「赤絵(あかえ)」の様式です。赤の色絵の具を使って器全体に「細描」と呼ばれる細かい描き込みをします。金の飾り付けを施すことが多く、このスタイルは赤絵のなかでも「金襴手(きんらんで)」と呼ばれています。

九谷焼の様式、「色絵」(左上)、「赤絵」(右上)、伊万里焼を写した九谷焼「大聖寺伊万里」(左下)、藍一色で表現した「染付」(右下)

 

五色の絵の具を使った絵付け

 嶋田副館長のご指導のもと絵付けにも挑戦しました。

 本焼きした器に、まずに表面に膠(にかわ)を塗ります。そこに墨などで下絵を描き、透明感と美しい色調を持つ九谷五彩の絵の具で色をのせていきます。単体で発色する赤以外は、上絵呉須(うわえごす)という茶色の顔料で輪郭線を描いて、その上に絵の具を盛り上げるようにのせていきます。輪郭線は焼くと黒色になります。

絵付けの様子

 絵の具はガラス板の上に水と糊の成分を混ぜて角乳棒で摺り、粒子を細かくします。とくに赤は「赤に摺り過ぎなし」と言われ、粒子が細かいほうが良いとされています。糊の成分などは窯や作家によって違うそうです。

 絵付けに集中している時間はまさにマインドフルネス。煩雑な日常から一時離れられる、貴重な時間です。ぜひ体験してみてください。

完成品は後日送ってもらえる

 魯山人が陶芸の道に入ったきっかけとなったのが、須田菁華窯での作陶体験でした。今も古総湯のそばに窯を構え、四代目を中心に昔ながらの工法で器をつくっています。工房は関係者以外立ち入り禁止ですが、畳敷きの店内では器を買うこともできます。

須田菁華

 そして現在、加賀市には九谷焼の作家が約40人所属しています。街を歩けばきっと気に入るステキな九谷焼の作品に出合えると思います。