DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む企業が増えている一方で、なかなか成果が出ず苦労している企業も散見される。「その要因は社内外のデータ連携ができていないことにあります」と語るのは、セゾン情報システムズの石田 誠司氏だ。その意味はどのようなことなのか。また課題解決のためにどのような方法があるのかを聞いた。

DXが進まない大きな理由は「組織の壁」

 DXという言葉が一般に聞かれるようになって久しく、企業経営者が口にする機会も多い。だが、その一方でなかなか成果が出ないと語る企業も少なくないようだ。

 多様な企業のDX推進の支援を行っているセゾン情報システムズ 取締役 事業推進管掌 の石田誠司氏は次のように語る。

「社長が旗振り役となってプロジェクトを立ち上げ、『全社一丸となってDXを推進するんだ』と力を入れているようなところでも、実は失敗例が多いのです。『DX推進室』のような組織を作ったり、DX人材を採用するといったところもありますが、伝統的な大手企業ほど『組織の壁』に直面しがちです」

 石田氏によれば、「組織の壁」の典型的な例として、それぞれの組織が別々の方向を見ていることがあるという。何のためにDXをやるのかという目的があいまいなまま、それぞれの組織の理論でDXを捉えようとするのである。当然ながらKPI(成果指標)も部署ごとにまちまちになる。

「『組織の壁』としてさらに問題なのは、権限の集約がなされないことです。このため、データの連携が進みません」

 DXにはデータ活用が不可欠だが、特定の部署が「そのデータを渡したくない」と言い出すとそれが実現しない。

「人口減少による労働力不足が社会課題となり、要員不足が原因で引き合い案件を辞退しなければならない、人材コストが上がり営業競争力が低下するなどと言ったことも起きています。人材を最大限活用するため、タレントマネジメントを導入する企業も増えています。タレントマネジメントでは、社員の異動歴などの人事情報のほか、経験、スキル、リスキリング(学び直し)などさまざまなデータを一元管理する必要があります。しかし、実際には過去に携わったプロジェクトが全体で共有されていない、スキルアップ研修の受講履歴が反映されていなかったりする。そうすると、今この時点で必要なスキル・人材はどこにいるのかわからず、人材を適切に活用できません。組織間・プロジェクト間でデータが共有できていないと、本当の意味でのタレントマネジメントはできないのです」

「組織の壁」がそのままデータ連携を妨げる壁になってしまうわけだ。

 さらに、昨今は新たな課題も生じているという。「クラウドでソフトを提供するSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の普及にともない、各事業部がばらばらにSaaSを導入している企業も珍しくなくなっています」

 例えば名刺管理アプリ一つとっても、同じ企業内でありながら、ある事業部ではA社の名刺管理アプリを使い、別の事業部ではB社の名刺管理アプリを使っているといった現象も起きている。データの共有も容易ではないだろう。

 企業によっては全社指定のアプリ以外の導入を禁止するところもあるが、石田氏は「そのときに鮮度の高い優れたアプリを使えるのがSaaSの魅力。アプリを無理に一つに絞ってしまうと、そのメリットも享受できません」と指摘する。

セゾン情報システムズ 取締役 事業推進管掌 石田 誠司 氏

社外とのデータ連携が求められる時代に

「今後は社内だけでなく、社外とのデータ連携が求められる時代になってきます。例えば電子契約です」と石田氏は語る。

 政府主導の脱ハンコの動きを受け、電子契約サービスも数多く登場している。契約書のほか、請求書や領収書などの電子化も進むだろう。だが現行は、複数の企業が異なるサービスを利用している場合、互換性がないものある。

 さらに石田氏が注目するのは、サプライチェーンのあり方だ。「脱炭素化が世界の潮流になっており、大手企業の中で国際基準である『GHGプロトコル』に対応しようとするところが増えています。ここでは、CO2の排出量を『スコープ1(自社の事業から排出されるもの)』『スコープ2(使用する電気から排出されるもの)』『スコープ3(サプライチェーンから排出されるもの)』の3つに区分けして算出する必要があります。『スコープ3』はまさに、サプライチェーン全体の企業のデータを連携しなければ算出できません」

 このほか、例えば食品ロスを削減するためのトレーサビリティー(流通履歴の追跡)など外部とのデータ連携が必要な場面も増えると石田氏は予測する。こういった企業内・企業間のバラバラなデータや仕組みを、データ連携によってスルスルにするというのがミッションだという。

30年以上の実績と高いシェアを誇る「HULFT」

 日本企業にとって、今後ますます社内外のデータ連携が求められるようになりそうだ。だが、前述したように複数のSaaSが導入されているだけでなく、企業の中には依然として、いわゆるレガシーと呼ばれるような大型の汎用機を併用している企業もある。

 これらのデータ連携は可能なのだろうか。その問いに対して石田氏は「当社が提供している『HULFT(ハルフト)』が、それを実現できると自負しています」と語る。

「HULFT」は、ファイル連携やデータ連携の基盤となるソリューションである。というと、最近生まれたものだと考える人もいるかもしれないが、発売開始は1993年。実に30年前に誕生しているのだ。

「まだインターネットが普及する前から、異なる環境のデータを連携する仕組みを提供してきました」と石田氏は話す。

 おりしも当時は、メインフレームに加え、UNIXベースのPCが数多く誕生していた。さらに、汎用機からオープン系へダウンサイジングも一気に進んだ時代でもある。「HULFT」はそうした中、OSの違いにかかわらずデータを連携できることが高く評価された。

「ビジネスの現場でインターネットが活用されるようになると『HULFT』の運用の利便性はさらに際立つようになりました」と石田氏は話す。

 当時はまだネットワークが脆弱だったため、データの転送が途中で切れてしまうこともよくあったという。そこで「HULFT」は接続が中断したところからリスタートする機能を備えるなど「かゆいところに手が届く」(石田氏)使い勝手のよさから、多くの企業に支持されるようになったのだ。

 その後、導入実績はさらに増え、2022年12月末時点で、1万社以上で23万本が採用されている。ファイル転送ツールとしては国内トップシェアであるだけでなく、グローバルでも売上シェアは4位となっている。国産のITソリューションが海外市場でトップクラスのシェアを維持しているのは注目に値する。

クラウド型データ連携プラットフォーム「HULFT Square」をリリース

「HULFT」が誕生して30年。時代の変化に応じて新たなニーズが生まれているが、「HULFT」や、当社が提供するデータ連携システム「DataSpider」はこれを先取りするように柔軟に対応してきた。

 新しいニュースもある。「2023年2月には、次世代クラウド型データ連携プラットフォーム『HULFT Square』(iPaaS)をリリースします。クラウド化することで、サプライチェーンの企業など、これまで以上に多くのお客様にご利用いただけるようになります。また、自社でサーバーを用意する必要もないことから、初期投資を抑えてデータ連携の仕組みを活用することができます」と石田氏は話す。

「HULFT Square」ではクラウド上で社内外のデータ連携、利活用が可能となる

「サプライチェーン全体での脱炭素化への取り組みなどは、数十年前には考えられなかったことです。このほか、企業や自治体をまたいだ取り組みも進んでいます。『HULFT Square』は地域をまたいだ防災にも貢献しています」と石田氏は紹介する。

 例えば河川は複数の県、国が管理する地区をまたいで流れている。「HULFT Square」を利用することで、複数の自治体が持つ、同じ河川に関する異なる形式、内容のデータを収集・変換し、統合することが可能となる。そうすることで、情報共有や避難誘導に活用できるようになるという。

「SaaS時代ならではの新たな課題も『HULFT Square』を導入することで解決できます。実は当社自身が『HULFT Square』を使ってその取り組みを進めているところです」と石田氏は話す。

 SaaSが普及する一方で、社内に数十本ものSaaSとオンプレシステムが混在する企業も珍しくない。セゾン情報システムズでも、さまざまな部署で数多くのSaaSやオンプレのシステムが利用されていたが、自社製品を活用し、これらを100%クラウド化する取り組みを推進しているという。

 まさに全社を横断するデータ連携・共有を実践しているわけだ。

 また、「DataSpider」の使い勝手のよさは折り紙付きだ。これまでもノーコード(プログラミングの知識がなくてもシステムを開発できる)など、スピーディーな開発を可能としていたが、「HULFT Square」の登場で、それがさらに進化することになりそうだ。

「『HULFT Square』を利用し、まずは小さな成功体験から生み出してほしいと思います」と石田氏が語るように、資金や人材に限りがある企業でも、データ連携の知見を蓄え、そのメリットをビジネスに生かすことができるだろう。

「政府もデータ連携基盤の必要性をうたっているように、今後、データ連携は不可欠になってきます。社会課題の解決や企業の競争力強化にも、『HULFT Square』が貢献できると考えています」と石田氏は力を込める。

 変化のスピードが格段に上がり、社会課題は企業、業界、国を跨り1人・1社では解決できない。そして、データの連携・共有・統合が必須の時代に、セゾン情報システムズはDX実現に向け挑み続けている。


<PR>