ワインと言われたら、まずイメージするのは赤ワイン。特に冬のリッチな料理が並ぶテーブルには、ちょっといい赤ワインを寄り添わせたくなのが人情。その気持、分かります。そこでビッグイーターな赤ワインを4本、紹介させていただきます。

スーパータスカンがやるとこうなる
テヌータ・ルーチェ
ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ

https://www.nlwine.com/winery/lucedellavite/
21,000円

個人的に「ふっと口に出すとワインわかってるぞ感が出るワード」トップ3に入るとおもっている「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」。イタリアのモンタルチーノという場所で「サンジョヴェーゼ・グロッソ」というブドウ品種を100%使ったワインを指し、実質、トスカーナの最高峰に君臨するワインの称号みたいなものである。

「ルーチェ」は、カリフォルニアワインの立役者ロバート・モンダヴィが仕掛けたプロジェクトのひとつで、1995年に、トスカーナの名門、フレスコバルディ侯爵家のヴィットリオ・フレスコバルディとともに興したワイナリー。このラグジュアリーワインのレジェンド2人が仕掛けて安っぽいワインを造るわけもなく、そのワインはいずれも世界最高峰。メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨンにサンジョヴェーゼを加えた、いわゆる「スーパータスカン」スタイルのワインを造っているのだけれど、モンタルチーノを拠点としている高級ワインの造り手なのだから、ということで、後から造られたのが、この『ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ』。スーパータスカンスタイルとは明らかに違い、世界最高峰のワイナリーが造ると「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」はこうなるのかぁ、としみじみしてしまう。

酸味、タンニン、苦味、熟した果実の甘み、スパイシーさ、いずれもが高度で高級。そしてすべてのバランスが完璧にとれているので、突出した要素がなく印象はとてもやさしくまろやか。

生産量はごくわずかながら、日本にも少量、入ってきていて、あまり注目が集まっていないのか、ダークホース的に普通の値段で買えてしまうハイクオリティワインだ。

元祖 ブルネッロ・ディ・モンタルチーノが手軽に楽しめる
カステッロ・ディ・モンテポ
サッソアッローロ

 

https://www.jetlc.co.jp/wine/30673/
4,500円

一方こちらは、同じ「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」でありながら、価格もテイストもかなりフレンドリー。とはいえ、あなどることなかれ。

なにせ「サンジョヴェーゼ」というブドウから、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノのブドウ「サンジョヴェーゼ・グロッソ」を生み出した人物、フェルッチョ・ビオンディ・サンティのひ孫にあたるヤコポ・ビオンディ・サンティが興したワイナリーが「カステッロ・ディ・モンテポ」だからだ。元祖サンジョヴェーゼ・グロッソである『クローンBBS11』というブドウ樹を唯一使用するワイナリーであり、最もスタンダードな『サッソアッローロ』もサンジョヴェーゼ・グロッソ(BBS11)100%。

香りの印象は、けっこうガツンと力強いけれど、口に入ると穏やか。甘みと酸味がはっきりとあって、これぞサンジョヴェーゼ!

カロリー高めなお料理とともに楽しく飲んで「ああ、美味しかった」から、暖かなベッドでぐっすり眠りたい一作。

オーストラリアのディフェンディングチャンピオンの傑作
ペンフォールズ
セント・アンリ シラーズ

https://www.penfolds.com/ja-jp/st-henri-shiraz-2019-8072675.html
15,000円(最新の2019年ヴィンテージは2023年2月以降に日本市場登場予定)

イギリスから移住した医師が1844年にオーストラリアで始めた医療用のワイン製造所を起源にもつ老舗「ペンフォールズ」。いまや、オーストラリアワイン界のリーダー的存在ゆえに、手軽なテーブルワインからワインマニアのコレクションアイテムまで幅広く揃うけれど、そのラインナップのなかでも高級路線に属する『セント・アンリ シラーズ』にはいつも心惹かれる。

オーストラリアの「シラーズ」というと、ヘヴィーな印象を持つ人もいるかもしれないけれど、実際は、色々な表現が可能なブドウで、この『セント・アンリ』は、複数の産地のシラーズをブレンドし、オーク樽の香りをつけず、繊細に仕上げたワイン。ヘヴィーな印象はまったくない。

口に入ってきた時点で、液体の奥ゆかしさ、柔らかさ、甘みで「あ、いいワインだ」とすぐに期待が高まる。そしてその期待は一切裏切られない。控え目なタンニン、旨味を支えるしっかりとした酸味、ちょっと香ばしいナッツのような雰囲気をともなう余韻まで、スキなく上質。

1.5万円という価格も、ペンフォールズの最上位『グランジ』(12万円)と比べればお買い得なことこの上ない。公式には飲み頃は5~20年後、とされているけれど、若くして飲んでも問題なく美味しいのも魅力。

ペンフォールズの中でも個性的で、ダークホース的存在ではないかとおもえてならない。

今年こそあけちゃおうじゃないか!
ドン・メルチョー

https://donmelchor.com/
20,000円(ヴィンテージにより変化。写真は2019年ヴィンテージ)

最後はこちら。正真正銘スーパーハイエンドワインながら、お値段は0が一個足りないような気がしてならない『ドン・メルチョー』。

いやもちろん、チリワインも高くなった高くなったと言われるのは事実。しかし考えてもみてほしい。ナパはもともと高いし、ボルドー、ブルゴーニュの名門の作品は高額化・希少化に拍車がかかっている現在の情勢において、この価格は良心的と言わずになんと言う。

ドン・メルチョーは、創業1883年の老舗にしてチリワイン躍進の立役者かつ現在もチリワインをリードする「コンチャ・イ・トロ」の創業者の名を冠する世界最高のワインの一角。日本市場での最新は2019年ヴィンテージで、来年には2020年ヴィンテージが登場、ということになるのだけれど、もう何年でもいいから、見つけたものを買うべしと申し上げたい。

なにせ、このワインに変じるブドウが育つ、プエンテ・アルトは、造り手が「世界最高のカベルネ・ソーヴィニヨンの産地はナパでもボルドーでもない。プエンテ・アルトだ」と豪語する場所で、この場所にブドウ畑をもっているのは、コンチャ・イ・トロの関連ブランドである「アルマヴィーヴァ」と「ドン・メルチョー」、および『セーニャ』というこれまた素晴らしいワインを造る「ヴィーニャ・エラスリス」の3軒だけなのだけれど、この3軒がリリースしたワインは、ここ数年、国際的なワイン評価で100点満点を連発しているのだ。ゆえに、ここが世界最高の産地という表現には根拠がある。そして、ヴィンテージ差はあんまり考えないでいい。実際、環境的にも造り手の技術的にもヴィンテージで大きく差が出ることはない。

で、そんなすごいワインが2万円程度で買えちゃうわけだから、そりゃあ、我が家にもFromプエンテ・アルトが溜まっていくというもの。一人で飲むのはあまりにもったいない。いざという時に飲もう、飲もうとおもっていたものの、なにぶん、ご時世的にみんなで集まってパーティーなんていうのもやりづらい月日が続いておりました……が、今年はもう、いいんじゃないだろうか!  腕に縒りをかけた料理とともに、一切の妥協のない、世界最高のフルボディの深みをシェアしようじゃないか!

お疲れ様2022。ようこそ2023。乾杯!