左が『塩尻マスカット・ベーリー A2019 ミズナラ樽熟成 バレルセレクション』、中央が『登美の丘 甲州 2020』、右が『梓川アロマティックアッサンブラージュ 2021』。奥は『富士山』。

「ワインのみらい」を買おう

ショップにはサントリーの日本ワインがズラッと揃っている。そして、その多くが、貴腐ワインまで含めて、テイスティング用のワインサーバーでテイスティングできる(有料)のだけれど、ここにきたらぜひ、注目して欲しいのが「ワインのみらい」というシリーズ。

画像右手前にあるのが試飲用のワインサーバー。専用のカードにチャージして使う。

これは「登美の丘ワイナリー」かオンラインショップでしか手に入らない、数量限定のワイン。ワインの造り手というのは「こういうの面白いんじゃない?」「これは美味しいでしょう!」みたいなワインを思いついたり造ったりするものだけれど、これをサントリーのような大手が商品として製造・流通するとなると、そこには単なる作品としてのワイン造りとは別の課題が出てくる。「ワインのみらい」は、流通と数量を限定することで、プロトタイプを販売している、あるいは、言ってしまえばこれは、サントリーの中にある、小規模生産者、ブティックワイナリーの作品群だ。

造りたいから造ったを地で行っているワインだからか、説明にもかなり熱がこもっている。

取材当日も、ワインメディア関係者やジャーナリストにとってはこれが一番の注目株。筆者も例に漏れずで、試飲後、いそいそとレジに向かうことになった。具体的にインプレッションを紹介したい。

『登美の丘 甲州 若木園育ち 2020』と『登美の丘 甲州 古木園育ち 2020』

各限定1300本。前者が樹齢3~8年の若木を中心としたワインで、後者が樹齢30年~40年の古木を中心としたワイン。キラキラした美少年と渋い壮年ととるか、健康的な美少女と妖艶な美女ととるかはあなた次第だけれど、それぞれに魅力的。ワインの世界で話題になるブドウの樹齢差をストレートに体験できるから勉強にもなる。¥ 5,720と¥ 6,490。

『梓川アロマティックアッサンブラージュ 2021』

2100本限定。長野県松本市、安曇野のあたりを流れる清流、梓川の付近で栽培されたブドウを、サントリー塩尻ワイナリーでブレンドした一本。シャルドネ80.1%、ピノ・ブラン14.1%、トレッビアーノ3.4%、アルバリーニョ1.1%、ソーヴィニヨン・ブラン1.1%、ゲヴュルツトラミネール0.2%という、ワケ分かんないブレンドなのだけれど、飲んでみると「この手があったか!」と膝を打つ出来栄え。松本周辺のワインを知っている人なら、特に驚けるはず。¥ 4,730。

『高山村シャルドネ キュベスペシャル 2021』

栗で有名な小布施町の東のお隣、長野県で最近注目されている高山村のシャルドネを使ったワイン。上から目線な言い方で僭越だけれど「よくできている」。シャープネスよりはふくよかさ寄りでありつつも、フィネスも感じられるシャルドネ。本場、ブルゴーニュに持っていっても遜色ないはず。1300本限定。¥ 7,590。

『塩尻マスカット・ベーリー A2019 ミズナラ樽熟成 バレルセレクション』

これはサントリー塩尻ワイナリーの定番人気商品の最新版かつ「バレルセレクション」つまり選別品。マスカット・ベーリーA 業界は「このブドウはここまで出来るんだ!」を見せつける造り手渾身の「俺のマスカット・ベーリーA」が最近増えているけれど、これはそのサントリー版。王者の余裕、風格を感じました。2019年を今飲むのはまだ若い。ひとまず2、3年は寝かせたいので箱買いしたいくらいだけれど、1300本限定。¥ 6,820。

このほか『登美の丘 有機シャルドネ 2021』と『立科町 甲州 冷涼地育ち2021』が現在「ワインのみらい」シリーズには存在している。紹介できないのは、時間不足でちゃんとテイスティングできなかったから。とはいえ、このシリーズの出来栄えから察するに、懐事情と在庫状況が許す限りマストバイだ。

サントリーの日本ワインの妙技を味わえ!