1495年にフィンランドにロシアの軍勢が進撃し、スウェーデン軍と戦争になると、オラヴィ城もロシア軍の攻撃に何度もさらされた。

 その後、オラヴィ城は16世紀、17世紀と戦いの舞台となり、18世紀にはロシアの手に渡った。ロシアは、スウェーデン時代の木造の建物を石造りに変えるなど、大規模な建設工事を施し、城を強化した。ロシアの侵攻を阻むために造られたオラヴィ城は、逆にフィンランドを脅かす城となったのだ。

 その後、オラヴィ城はフィンランドに戻ったが、1870年代に2回の火災に見舞われてしまう。19世紀後半から20世紀にかけて大修理がなされ、軍事要塞から展示施設やガイドツアーを備えた観光スポットに生まれ変わった。

 オラヴィ城には、観光スポット以外に、もう一つの顔をもつ。それは、次に述べる世界的に有名なオペラ祭「サヴォンリンナ・オペラ・フェスティバル」の会場である。

 

白夜のオペラ・フェスティバル

 サヴォンリンナ・オペラ・フェスティバルは、約7万人が訪れるというフィンランドが誇るオペラ祭だ。オラヴィ城の中庭を舞台に、毎夏約1ヶ月間にわたって開催される。

 定期的に開催されるようになったのは1967年からであるが、その歴史は1912年にまで遡る。

 当時、ソプラノ歌手として活躍していたフィンランドのアイノ・アクテは、オラヴィ城で催された式典に列席した。そのとき、湖に浮かぶこの城が、理想的なオペラの舞台であることに気づき、1912年にオペラ祭を開いたことが、サヴォンリンナ・オペラ・フェスティバルのはじまりだという。

 長きにわたり、世界中のオペラ愛好家を楽しませてきたサヴォンリンナ・オペラ・フェスティバル であるが、新型コロナウィルスの感染拡大の影響は避けられなかった。昨年(2020年)、今年(2021年)と、2年連続で中止の憂き目をみている。

 しかし、来年(2022年)は公演の再開が決定され、ヴェルディの『アイーダ』、ビゼーの『カルメン』、プッチーニの『トスカ』など、早くもラインナップが発表されている。

 日本のコロナ感染は収まりつつあるが、世界的にはまだまだ油断はできない。だが、来年にはきっと人類はコロナを克服し、サヴォンリンナ・オペラ・フェスティバルは、世界中のオペラファンの前で開催できると信じたい。コロナ禍の明けた白夜のオラヴィ城に、オペラの歌声はさぞかし美しく響くだろう。