それらを実現するための装備のひとつがAHC(アクティブ・ハイト・コントロール・サスペンション)で、これはランクルには採用されていないLX独自の機能です。AHCは使用状況に応じて車高を自動調整(あるいはマニュアル調整)するもので、例えば高速巡航時などでは車高を下げて直進安定性を向上させたり、ワインディングロードなどでも車高を下げれば重心も下がり、操縦性の向上が期待できます。この機構の特徴は、ガス・油圧併用ばねと金属ばねの2種類のばねを装備している点。オフロード性能をウリにするSUVの多くは、車高調整機構としてエアサスペンションを使っている場合が多く、このほうがシステムとしてはシンプルなのですが、LXはあえてちょっと複雑なAHCを選択しています。その理由は、万が一主に車高を調整するガス・油圧併用ばねにトラブルが生じたとしてもまだ金属ばねが残っているので、走行不能状態には陥らないからです。LXは中東地域でも人気が高く、砂漠地帯など場所によってはクルマが走行できなくなると生死に関わる場合もあり、フェイルセーフとしての観点からもAHCは頼りになるシステムなのです。

インテリアのデザインもLX独自のものとなっている。センターには上下ふたつのモニターを設置。路面状況を映し出す機能も備えている

 ランクルにはないもうひとつのLX独自の仕様は、“EXECUTIVE”というグレードの設定です。これはいわゆるショーファードリブンとして使われることを想定した仕様で、後席を独立式2座とした4人乗りとしています。この後席、48度までリクライニングする他、レッグスペースは最大1000mmまで拡大可能。シート自体も専用設計で身体を優しく包み込むヘッドレスト/バックレスト/座面となっています。専用のセンターコンソールにはさまざまな機能や装備を一括でコントロールできるパネルを設け、スマートフォンの充電スペースやノートテーブルなども完備。さらに天井には上部から風が降り注ぐシャワー空調を実現するエアコンの吹き出し口も配置されました。なお、悪路走破性を最大限に高めた“OFFROAD”と呼ばれるグレードも用意されています。

“EXECUTIVE”仕様はショーファードリブンを想定した仕様。独立2座式のリヤシートやいくつもの装備はすべて専用設計

V8からV6へダウンサイジング

 エンジンはこれまでの5.6リッターのV8から3.5リッターのV6にダウンサイジングされています。V8消滅を惜しむ声も少なくないようですが、サスティナビリティやカーボンニュートラルといった時代の流れに対応するにはやむを得ない判断でしょう。でもパワースペックはV8の377ps/534Nmよりも向上し、415ps/650Nmを発生します。オートマチックトランスミッションは従来の8速から10速へと刷新されました。

 ところでランクルやLXといえば一般の人だけでなく「クルマ泥棒」にも大人気の車種で、オーナーとしては気が気ではなかったはず。レクサスとしては初となる指紋認証式プッシュスタートスイッチを採用し、盗難リスクの低減を図っているあたりにも、このクルマ特有の事情がうかがえます。

悪路走破性を考慮してラダーフレームを踏襲しているものの、新しいGA-Fプラットフォームとして刷新され、軽量化や高剛性化を実現している