6月には全日本予選と日本選手権

 6月は学生ランナーにとって〝大切なレース〟がふたつある。全日本大学駅伝関東学連推薦校選考会(以下、全日本予選)と日本選手権だ。全日本予選は文字通り、11月の全日本大学駅伝の出場がかかっている。一方の日本選手権は国内最高峰の戦いであり、その年の夏に行われる国際大会(五輪、世界選手権、アジア大会)の最重要選考会になる。

 全日本大学駅伝は前回大会で8位までに入った大学(今年は駒大、東海大、明大、青学大、早大、東洋大、帝京大、順大)にシード権があり、残りの関東枠「7」が選考会で争われる。エントリーした大学のうち10000m8人の合計タイム上位20校が出場。ひと組各校2人ずつが10000mレースに出走し、8人の合計タイムで争われる。今年は6月19日に行われた。総合結果は東京国際大がトップで、以下、國學院大、法大、拓大、中大、中央学大、日体大の順で通過。8位は駿河台大でボーダーラインに約29秒届かなかった。しかし、駿河台大は箱根駅伝の初出場に向けて大きな弾みになった。

 日本選手権は6月20~24日に大阪で開催された。男子3000m障害では三浦龍司(順大2)が終盤に転倒しながら自身の持つ日本記録(8分17秒46)を更新する8分15秒99で優勝。5000mには7人の学生ランナーが参戦して、千明龍之佑(早大4)が8位(13分39秒04)に入った。

 

学生ランナーに“バカンス”はない

 7月は北の大地・北海道を舞台に行われているホクレン・ディスタンスチャレンジで記録を狙うチームが多い。今年は士別、深川、北見、網走、千歳と5つの会場で開催。5000mでは14日の北見大会で三浦が日本人学生歴代8位の13分26秒78、 10日の網走大会で鈴木芽吹(駒大2)が同9位の13分27秒83、 17日の千歳大会で田澤廉(駒大3)が13分29秒91をマークしている。

 7月下旬から始まった東京五輪では3000m障害で出場を果たしたに三浦が大活躍。予選で日本記録を8分09秒92まで短縮すると、決勝では日本人初入賞(7位)の快挙を達成した。

2021年8月2日、東京五輪、陸上男子3000m障害決勝での三浦龍司 写真=ロイター/アフロ

 大学生の夏休みは2か月ほどあるが、学生ランナーに〝バカンス〟はない。どちらかというと〝鍛錬の日々〟が待ち構えている。なぜなら、「夏合宿」に突入するからだ。夏合宿は部員全員で行うもの、選抜メンバーだけ、選抜メンバー以外の合宿と、大きく3つに分類される。選抜合宿は各大学15~20人ほどで行うことが多い。箱根駅伝のエントリーが16人なので、夏合宿でAチームに入ることができるかどうかが、箱根への最初の〝関門〟になる。

 そして例年9月中旬には日本インカレがある。「大学一」を決める大会だが、箱根を目指すランナーにとっては、非常に悩ましい大会でもある。総合優勝を狙う大学は長距離も総動員するものの、夏合宿で走り込んでいる期間のため、スピードが問われるトラックで戦うのは難しいからだ。走り込みを優先するために、出場を回避する大学も少なくない。

 今年の日本インカレは9月17~19日に埼玉・熊谷で行われた。10000mは6人の留学生が飛び出す展開になり、日本人トップ争いは、上田颯汰(関西学大3)と嶋津雄大(創価大4)の一騎打ちに。ラスト勝負を制した上田が28分52秒63で日本人最上位の5位に入った。5000mは丹所健(東京国際大3)、篠原倖太朗(駒大1)、近藤幸太郎(青学大3)、アニーダ・サレー(第一工大3)が残り1周で争った。近藤が13分46秒98で青学大の長距離種目では初の日本インカレ王者になった。3000m障害は三浦が悠々と連覇を果たして、順大が総合優勝に輝いている。

 次なる戦いは10月10日の出雲駅伝。それから10月23日には箱根駅伝予選会も待ち構えている。最後に9月末時点の今季学生ランキング(日本人10位まで)を掲載する。これから始まる駅伝シーズン観戦の参考になれば幸いだ。

 

【5000m】 13.15.15 Y.ヴィンセント(東京国際大2)/ 13.26.02 S.ディランゴ(流経大1)/ ①13.26.78 三浦龍司(順大2) ②13.27.83 鈴木芽吹(駒大2) ③13.29.91 田澤廉(駒大2)/ 13.30.44 P.ムルワ(創価大3)/ ④13.30.98 石原翔太郎(東海大3) ⑤13.31.51 手嶋杏丞(明大4) ⑥13.31.51 千明龍之佑(早大4) ⑦13.32.58 藤本珠輝(日体大3) ⑧13.32.58 唐澤拓海(駒大2) ⑨13.34.88 近藤幸太郎(青学大3) ⑩13.34.91 鈴木聖人(明大4)

【10000m】 27:25.65 J.ラジニ(拓大3)/ 27.30.24 Y.ヴィンセント(東京国際大2)/ ①27.39.21 田澤廉(駒大3) ②27.41.68 鈴木芽吹(駒大2)/ 27.43.58 S.ディランゴ(流経大1) /27.52.70 B.ジェームス(駿河台大4) /27.53.39 P.ムルワ(創価大3)/ 27.58.88 N.キプリモ(日本薬科大3)/ ③27.59.74 井川龍人(早大3) ④28.02.52 唐澤拓海(駒大2) ⑤28.03.37 市村朋樹(東海大4) ⑥28.03.39 栗原啓吾(中央学大4)/ 28.04.93 R.ヴィンセント(国士大4)/ 28.05.26 C.ドゥング(日大3)/ ⑦28.05.91 石原翔太郎(東海大2) ⑧28.06.26 伊豫田達弥(順大3) ⑨28.06.33 中谷雄飛(早大4) ⑩28.08.58 藤本珠輝(日体大3)