文=酒井政人

2021年5月3日、日本選手権男子10000m決勝での田澤廉(中央)、鈴木芽吹(右) 写真=松尾/アフロスポーツ

4月から始まるトラックシーズン

 10月の出雲駅伝、11月の全日本大学駅伝、1月の箱根駅伝は「学生三大駅伝」と呼ばれている。では、学生ランナーたちは4~9月に何をしているのか。駅伝しか観ない方はさほどご存じないかもしれない。チームとしては箱根駅伝を最大の目標に掲げながら、それぞれのステージでいくつもの戦いを繰り広げている。そこで駅伝シーズンを前に今季の前半戦を振り返ってみたい。

 4月からトラックシーズンが本格的に始まり、箱根を目指すランナーたちはトラック種目(主に5000mと10000m)で記録を狙う。例年は5月後半の関東インカレが最大のターゲットになるが、今年は5月3日に日本選手権10000mがあった。田澤廉(駒大3)が日本人学生歴代2位の27分39秒21、鈴木芽吹(駒大2)が同3位の27分41秒68で走破。優勝した伊藤達彦(Honda)に続く、2位と3位に入り、駒大コンビがそろって表彰台に立っている。この種目での〝大学生表彰台〟は大迫傑以来、9年ぶりの快挙だった。

2021年5月3日、日本選手権男子10000m表彰式。左から、田澤廉、伊藤達彦、鈴木芽吹 写真=松尾/アフロスポーツ

 

5000mも速い三浦龍司

 関東インカレは5月20~23日に行われた。個人レースではあるものの、チームとしては総合得点の争いがあり、1部(16校)と2部が毎年2校入れ替わる。また駅伝シーズンを占う意味で「総合力」を推し量ることができる重要な大会だ。

 なお長距離種目は1部と2部のレベルが拮抗している。1部で一番目立ったのは三浦龍司(順大2)だろう。メイン種目の3000m障害には出場せず、1500mで優勝、5000mでは13分48秒90で日本人トップを奪った。いずれも圧巻のラストスパートを披露している。

2021年5月21日、関東インカレ男子1500m決勝での三浦龍司。写真=アフロスポーツ

 10000mでは石原翔太郎(東海大2)の走りが熱かった。ケニア人留学生に食らいつき、28分05秒91の自己ベストで日本人トップの2位に食い込んだ。日本人では藤本珠輝 (日体大3)が5000m(6位)と10000m(4位)の2種目で唯一入賞している。チーム別でみると、長距離種目(1500m、5000m、10000m、ハーフ、3000m障害)で早大が延べ9人、順大が延べ8人の入賞者を出した。

 2部はエース田澤を温存するかたちになった駒大の強さが際立っていた。10000mでは学生駅伝未経験の唐澤拓海(駒大2)が1部と2部を合わせて関東インカレの日本人では歴代最高タイムとなる28分05秒76をマーク。唐澤は5000mでもチームメイトの鈴木芽吹と競り合い、日本人トップに輝いている。なお5000mと10000mを制したのは箱根駅伝の2区と3区で区間記録を保持するイェゴン・ヴィンセント(東京国際大3)で両種目とも圧勝だった。