※本コンテンツは、2021年6月23日に開催されたJBpress主催「第9回DXフォーラム」のセッション5「推進を阻む壁を突破する!『DX人材マップ』から描くDXプロジェクトの見取図」の内容を採録したものです。

株式会社アウトソーシングテクノロジー
ソリューションサービス事業本部 イノベーションプラットフォーム部
シニアDXコンサルタント
峯尾 岳大 氏

DX企画の障壁、そしてデジタル人材の不足

 株式会社アウトソーシングテクノロジーでは、約4,000社に及ぶ企業に対して技術人材を提供し、常駐先の企業が日々直面する現場の課題に基づいた実効性あるDX推進を提案しています。世界中にある最先端のテクノロジーから最適なものを選び出し、それを生かせる人材と組み合わせて提供できることが当社の強みです。

 経済産業省「DXレポート2」によると、日本企業の90%以上は、DX推進に未着手あるいは、一部部門で実施の段階にとどまっている状態にあります。特に企業のDX推進においては、何から始めればよいのか分からないという、企画段階での壁があると推察できます。

 実行段階を含め、DXを推進していく上で欠かせないのが「デジタル人材」です。情報処理推進機構(IPA)の「IT人材白書2020」では、量・質ともに「不足している」とする企業の割合が約9割に達しました。また、日本ビジネスプロセス・マネジメント協会のアンケート調査でも、DX推進のために必要な体制として「DX人材を確保、育成する」と回答した企業が半数以上を占めました。

現場のDXによる課題解決の事例〈京セラ株式会社様〉

 このように「人材不足」という課題があるなか、企業はどのように解決を図っていけばよいのか。当社が支援させていただいている、京セラ株式会社様の事例をご紹介します。

 同社は素材から部品デバイス、機器、サービスやネットワーク事業に至るまで、多岐にわたる事業をグローバルに展開しています。同社の物流部門では、DX着手に至る二つの背景がありました。一つ目は、コロナ禍をきっかけとして「現場のアナログ業務を見直したい」。そして二つ目は、10年先に数千人規模で定年退職者がでるとの予測から「若手社員に自拠点の枠を超えた視点で業務改革を行う経験を積ませたい」というものです。

 改革プロジェクトの対象となったのは、「受入業務」と「出荷業務」です。これらの業務工程では、多くの時間と労力がかけられていました。これに対し、ARソリューション「TeamViewer Frontline」とスマートグラスを活用し、業務フローに改革をもたらしました。

 受入業務では、荷物の受け入れを確認するために倉庫と事務所を往復しなければならないところに課題がありました。下図の「ハンディスキャナー→Excelで手動照合」の部分です。

 「Excelで手動照合」の際にエラーが分かると、現場に戻りハンドスキャナーで読み直さなければなりません。それが、スマートグラスと指先に装着する小型のリングスキャナーによって、全ての作業を現場で完結できるようになりました。

 また、出荷業務では、紙のピッキングリストを使った手書き作業とダブルチェックの部分です。

 受入業務と同様にスマートグラスとリングスキャナーによって、ピッキング対象の製品情報をスマートグラス上に表示させ、対象の製品を探し出したらそのままリングスキャナーでピッキングのチェックができるようになりました。

 このPoCを6カ月間行い、すでに、事務作業まで含めたトータルの作業時間を短縮できる目途が立っています。今後の展開としては、出荷業務の年間作業時間15%削減を目標に、主要4工場での横展開を検討しています。