※本コンテンツは、2021年6月23日に開催されたJBpress主催「第9回DXフォーラム」のセッション4「組織で取り組むDX - イノベーションを起こすための『学習する組織』のススメ」の内容を採録したものです。

ストックマーク株式会社
代表取締役CEO
林 達 氏

DXが進まない理由は何

 ストックマーク株式会社はビジネスの世界で主役になりつつある「自然言語処理」を強みとしたスタートアップです。その強みを生かして、AIによってユーザーのビジネスに直結するニュースを届けることに加え、企業内の組織の情報感度を高め、ナレッジ共有を促進するソリューション「Anews」を提供しています。 

 2020年12月に経済産業省が発表した中間報告書『DXレポート2』によると、全社的なDXの変革に至っている企業はわずか5%。残り95%の企業は「DXにまったく取り組んでいないか、取り組みを始めた段階であり、全社的な危機感の共有や意識改革のような段階に至っていない」ことが分かっています。

 IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「IT人材白書2020」によると、「DXの前提となる将来への危機感が、企業全体になかなか浸透しない」「ビジネスや組織の変革に対する社内の抵抗感が強い」といった理由が挙げられ、こうした背景がDXの推進を阻んでいることが推測できます。

 これまでは企業にいるほとんどの社員が、出島的なDX推進組織をある意味で冷ややかに見つめながら、「彼らが新しいことやってくれる」「自分たちは関係ない」と感じていたように思います。しかし、これからの時代は、全社員でイノベーションを生み出していく活動をしなければいけない。それにも関わらず、依然として「今までやってきたことを変えられない」「新しいことに対応できない」「結果としてDXが後手になってしまう」といったマインドの社員が多いように見受けられます。

 同じくIPAのレポートには、DXに向けた「5つのアジェンダ」が明記されており、その中でも「企業文化や組織マインドの根本的な変革」に対する遅れが顕著であると指摘しています。私はこうした課題に対し、成果が見えるまで最も時間を要する組織づくり・人材・企業文化の変革に、今こそ着手すべきであると考えています。

経営環境の変化と企業文化の担い手

 では、企業文化変革は誰がやるべきか。それを明確にしていきましょう。さまざまな書籍やメディア、講演などで、下記のようなビジネスの在り方の変化がトピックになっています。

 このような経営環境の変化から、新しい時代に適応する組織能力の獲得が求められています。これらを詳しく見てみると、組織・チームに必要な能力と考え方は、下記のマトリックスのように変化しています。

 特に中心となるべきは「学習する組織」です。スピーディーに、そして現場の意思決定を重視し、VUCAと言われる時代で答えを出していく、そんな組織能力がこれから求められるでしょう。

 では、誰が企業文化変革を主導すべきなのでしょうか。答えはDX推進組織です。