(座談会開始時間は3:35~)

 経営にデザインが必要だといわれて久しい。経産省・特許庁は、2018年に「デザイン経営」宣言を打ち出すなど、国家施策として力を入れている。ただ、なかなか実例が増えていないと感じる人も多いのではないだろうか。そもそも、デザインが経営にどう貢献するのか、まだ腑に落ちていない人もいるだろう。

 そこで、デザインマネジメントを理解し、未来のヒントを考えるイベントが行われた。HEART CATCH主催、IBM Future Design Lab共催で6月23日に実施された「デザインマネジメントを軸に見直す社会・経済・ルール〜西村真里子のオニワラ!『鬼と笑おう』〜未来をつくる座談会#5 powered by IBM Future Design Lab」だ。

 まずデザインマネジメントの力を説明したのは、この領域の第一人者であるエムテド代表取締役の田子學氏。同氏は、実際の事例をもとにデザインマネジメントの価値を紹介。三井化学と行ったオープンラボラトリー活動『MOLp®️』では、まだ知られていない化学素材を多数展示し、その魅力を新しいコミュニケーションで伝えた。結果、あるアパレルメーカーの目に留まった素材がパリコレで使用され、さらにフェンディの新作に取り入れられた。田子氏は「デザイン視点の発想」によるコミュニケーションが生んだ展開」だという。

 日本アイ・ビー・エム(以下、IBM)からは、デザインプリンシパルの柴田英喜氏が登壇。IBMが創業当時からデザインを大切にしていた歴史、その根幹にある「社会のために良いデザインが、最終的に良いビジネスにつながる、GOOD DESIGN IS GOOD BUSINESS」という考えを伝えた。

 一方、デザインによってこれから起こす変革を語ったのは、三菱UFJフィナンシャル・グループ系列のスタートアップ、Japan Digital Designの代表取締役CEOを務める河合祐子氏だ。

 日本銀行からスタートアップという異色の経歴を持つ河合氏は、他の分野に比べ、金融サービスのCX(顧客体験)が遅れてきたことを素直に認める。その遅れを埋め、さらに「新しい金融のあたりまえ」を作るために、デザインの重要性を説く。

 そのほか、日本IBM執行役員の藤原慶太氏も、独自の視点で分析。企業プロジェクトを数多く担ってきたビジネスプロデューサー・西村真里子氏が進行を務める。

 座談会では、デザインマネジメントの国際比較やデザイン戦略の歴史から、日本企業に不足している視点やアクションを深掘りした。また、企業が今後のビジネスにデザインを活用するための「はじめの一歩」を紐解いた。イベント終盤、田子氏は「日本人の多くはデザインと聞くと、色や形、意匠を思い浮かべるが、辞書には『計画』と書かれている」と指摘。この言葉は、テーマの核心でもある。90分のイベントの中に、その答えがあるはずだ。

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