新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、企業に大きな変革が求められている。新たな事業の創出も必須になるだろう。折しも9月29日、新規事業の創造を支援するビジネスプロデュース会社、ドリームインキュベータの野邊義博執行役員を招いたオンラインセミナー「アフターコロナの変化の読み解き方と新規事業の創出」が開かれた。セミナーでは、膨大な情報の中から、環境変化の潮流を捉え、先手を打っていくことの重要性も指摘された。ここではその方法も紹介しよう。業種業態問わず、多くの企業にとって参考になるはずだ。

「アフターコロナ」において、どのようにビジネスプロデュースを行うか

 オンラインセミナー「アフターコロナの変化の読み解き方と新規事業の創出」を主催したのは、世界中のニュースから市場の動向や競合の動きをAIが可視化、迅速かつ柔軟な打ち手創出をサポートするAstrategyを提供するストックマーク株式会社だ。

 ストックマーク 代表取締役CEOの林達氏は今回のセミナー開催の狙いについて、「今まさに、『アフターコロナ』が当たり前になりつつあると思われます。こうした中、野邊さんがどのように新規事業の創出支援やビジネスプロデュースを実践されているのかを聞き、参加者の皆さんと共有したいと考えました」と語った。

ストックマーク株式会社 代表取締役CEO 林 達 氏

 野邊義博氏が執行役員/ビジネスプロデュース担当を務める株式会社ドリームインキュベータ(以下、DI)は2000年4月、ボストンコンサルティンググループ(BCG)元社長の堀紘一氏が戦略コンサルティングファームとして立ち上げた(堀氏は2020年6月に退任。後進に道を譲る)。

 DIは現在、戦略コンサルティングおよびインキュベーションを通じて、日本企業とともに社会のあり方を変える「ビジネスプロデュース」に取り組んでいる。

 コロナ禍において、多くの企業が自社の進むべき道を探っている。提言やアドバイスを行うコンサルティングファームやビジネスプロデュース会社への期待も大きい。DIはそこで、いち早く社内に「アフターコロナ調査・分析」チームを特設。2020年5月には調査レポート「アフターコロナにおける成長・事業創造について」を一般公開した。

 林氏は「他のコンサルティングファームなどのレポートでは、緊急事態宣言などを受けて、『ウォールームを作って指揮命令を一本化すべき』といったトーンのものが多かったようですが、DIのレポートは、前向きに鼓舞し、挑戦を応援するような内容になっていました。DIらしいと好感を持ちました」と振り返る。

 オンラインセミナーでは、このレポートも参照しながら、まさに目下の困難を乗り切り、企業に活力をもたらす処方箋も示された。以下でその内容を紹介しよう。

コロナ禍で加速した生活者の行動や価値観の変化

 野邊氏は「コロナ禍で、さまざまな変化が起こっているため、これらが混在し目線を惑わされがちですが、企業にとって大切なのは、潮流的な変化を見極めることです」と指摘する。

 というと、これまで予想もしていなかった新たな流れが起きているように感じるかもしれないが、「実は、それらの多くは、元々続いていた潮流が、前倒しで起きているような変化なのです」と野邊氏は加える。

株式会社ドリームインキュベータ 執行役員/ビジネスプロデュース担当 野邊 義博 氏

 たとえば、生活者や行動や価値観の変化についても、「VUCA(ブーカ=不安定・不確実・複雑・曖昧)社会」 、「寒冷化社会」、「格差社会」、「低満足社会」といった現象は、コロナの影響で進行が加速されたにすぎないという。

「その結果、生活者の行動(分散化、不寛容化)や、生活者の価値観(個人主義、自己責任論の一方でつながりを求める共感性)も変化しています」(野邊氏)。

生活者の行動や価値観の変化
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 生活者の分散化とは、嗜好が緩やかに多様化する「多様化社会」から、似た者で集まり、関係が薄くなり、時には対立も起きる「分散化社会」へ進むことを示しているという。

「一方で分散化社会は、D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ビジネスなど、新規事業の余地にもつながります」と、野邊氏は紹介する。

 それに対して林氏は「これまでの量の拡大を追うような企業経営から、小さなところでも質を追求する経営にビジネスチャンスが生まれるのではないでしょうか」と語った。

 コロナ禍は企業経営のあり方や企業間の競争や関係性などを変えていることにも注目すべきだという。リモートワークの普及は、企業にジョブ型・副業の推進を促した。好むと好まざるとに関わらず、DX(デジタルトランスフォーメーション)も加速している。

 野邊氏は「私たちは、『企業のスリム化』が進むと予想しています。少数のコア人材とオペレーション職が分かれていくとともに、システム化やロボット化、さらには外部人材の活用が進んでくるでしょう」と語る。

限られた人材でいかに価値を創出するかが企業にとって重要に

 野邊氏によれば、すでに企業においては、拠点の削減や要員カット、アウトソースなどによる「企業のスリム化」を進めるところも出てきているという。欧米の企業の中には、必要な期間・機能だけ、外部の人材を活用するようなところもある。

 林氏は「今後は、企業の存在意義も問われることになるでしょう。これまでは、人にナレッジが紐付いていて、その人が社内にいることが価値になっていました。しかし、それでは、その人がいなくなると使えなくなります。人が代わってもリソースを持ち続けることが企業の生き残りにかかってくるでしょう」

 野邊氏はそのような変化は、一般企業のみならず、コンサルティングファームやプロデュース会社においても同様に起きているという。「かつてのコンサルティングファームは、情報の非対称性が価値になりました。クライアントが知らない情報を知っているということでお金になったのです。しかし、インターネットが発達し、クライアント企業が自分で情報を入手できるようになるとそれは価値ではなくなります。さらに、最近では、優秀な学生がコンサルティングファームに入社するようになりましたので、3、4年もすれば一人前のコンサルタントになる。つまり、ノウハウもあっという間に共有されて、コモディタイズが進むのです」

 情報をまとめるだけでは、付加価値につながらないということだろう。そうした中、DIでは、優位性をどのように発揮しようとしているのだろうか。

「機械にできることは機械に任せて、人間にしかできないことをやる。それが価値につながると考えています。AIを活用した情報収集や分析もその一つです」と野邊氏は話す。

ドリームインキュベータとストックマークが、実証実験を開始

 DIは2020年6月、ストックマークが提供する「Astrategy(エーストラテジー)」と呼ばれるサービスについて共同で実証実験を開始すると発表した。

 林氏は次のように紹介する。「当社は、日本語の文章を解析するAI(自然言語処理技術)を用いて、企業のデータ変革、データドリブン経営の支援を行っています。『Astrategy』は当社が提供するサービスの一つで、AIが市場の動向や競合の動きを可視化、迅速かつ柔軟な打ち手創出をサポートします」

 具体的には、インターネット上の国内外約3万メディアの記事、毎日約30万件をクローリングし、AIにより膨大な情報量を解析・構造化するという。

 実証実験の目的について、野邊氏は次のように語る。「『アフターコロナ調査・分析』もそうですが、プロジェクトがスタートすると、若手のメンバーなどが中心となって、まず大量のデータを集めます。しかし、情報を収集するだけでは価値になりません。大切なのは集めた情報からどうインサイトを抽出するかです。であれば、収集する工数は機械(Astrategy)に任せて、人間にしかできないことをやれるようにしたいと考えたのです。ただし、最初は、メンバーが楽になるような業務効率化的な使い方を考えていたのですが、いまではもっと高い価値を出すための武器を一緒に作りましょう、とやっているところです」

情報を構造化し、時系列で可視化する「Astrategy」

「Astrategy」は単に情報を収集して見やすく整理するためだけのツールではないという。その「価値」はどこにあるのか。

 林氏は次のように説明する。「『Astrategy』の大きな特長は、集めた膨大な情報を構造化し、その変化をいち早く捉えることができることです」

 具体的には、特定の企業、業界、地域、行動軸などで情報を自動分類できるほか、クロス分析なども容易にできる。さらに特筆すべきは、あるキーワードを入力すると、その用語に関連する業界構造をAIが可視化してくれたり、企業同士の特徴を整理してくれたりもすることだ。さらに、関連する市場の伸びなどを時系列で可視化するといったことまでできる。

『Astrategy』の導入で実現できること
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 人間が数百ページもの記事を1日で読むのは不可能だが「Astrategy」ならそれが可能だ。さらに「最近、このキーワードが来ている」といったことが、グラフなどで明確に示される。「Astrategy」を活用することで、競業企業に先んじて市場の変化を捉えることができるし、先手を打った戦略の立案、実行が可能になりなる。

 仮説を立てて情報を見れば、仮説の検証をすることも可能だ。逆に、「Astrategy」が示す相関図や時系列の変化グラフなどを見ることで、これまで見えていなかった新たな仮説を発見することもできるだろう。

企業のチャレンジを支援し、日本を元気にしたい

『Astrategy』の機能改善もさらに進めています」と林氏は紹介する。
 情報のタイプ分けなどもその一つだ。現状は例えば「MaaS(次世代移動サービス)」という検索ワードを入れると、自動車メーカーから管理システム・ソフト、さらにはMaaSを利用した輸送サービスまでさまざまな情報が検索される。これを自動車メーカーに関連する情報だけを表示するといったようにステークホルダーごとに分けるような機能も開発中だという。

 野邊氏は、「全ての人が情報を集めて、整理・構造化しなければならいというわけでもありません。インプットばかり増やして頭でっかちになってもよくない。仮説を立て、ディスカッションをして発信するといった、人間にしかできないことに注力すべきです。「Astrategy」のようなツールが得意なことは、代替してサポートしてもらえばいいのです」と話す。

 2020年6月1日、ドリームインキュベータは創業20周年を迎えた。野邊氏は「節目となるのを機に、ミッション・ビジョン・バリューを策定しました。ミッションは『社会を変える 事業を創る。』、ビジョンは『挑戦者が 一番会いたい人になる。』、バリューは『枠を超える。』

 日本では今、企業が利用できるツールや制度などのリソースがとても充実しています。チャレンジする企業をお手伝いし、日本をもっと元気にしたいですね」と力を込める。

 さらに進化する「Astrategy」などのツールもその一助になりそうだ。

お問い合わせ

ストックマーク株式会社
Mail:marketing@stockmark.co.jp
Astrategyサービスページ:https://stockmark.co.jp/product/astrategy/

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