食の魅力でさらなる進化を
ビュッフェや和食をはじめ、レストランが豊富なのもトマムの魅力だ。2019年7月にはリゾナーレトマムの31階にコース料理を提供する「OTTO STTE TOMAMU(オット・セッテ・トマム)」がオープンした。リゾートの「食」に長年携わってきた渡辺さんは、「食は旅の大きな目的と考えます」と語る。
北海道は食の宝庫で「素材を楽しむのにはイタリア料理が一番いい」というコンセプトで、「OTTO STTE TOMAMU」では北海道と気候などが似ているイタリアの山岳都市・ピエモンテ州の郷土料理を北海道の食材を使って現代風にアレンジしている。
さらにはファーム事業。これは、リゾート開発前は牧場だったというゴルフ場を「原風景に戻す」という壮大な計画だ。観光と両立するファームプロジェクトは、星野リゾート創世記から構想があったと聞いて驚いた。時を経て、3年ほど前からファームプロジェクトは進んでいる。
現在、飼育している牛は21頭。シーズンには牛追い体験や、利き酒ならぬ牛の個体ごとの利き牛乳などを実施。ベテラン社員の宮武さんをはじめ、宮武さんをリーダーとする「ファーム星野」が取り組むこのプロジェクトは、ホテルリゾートの域を超える情熱を感じずにはいられない。
働きやすい環境づくりが観光人材を増やした
先日、星野代表はSNSでこんな投稿をしていた。
「私の中でリゾート再生は、本来あるべきコンセプトへの長期修正プロジェクト。収益回収は完了ではなく始まりなのです。トマムのゴルフ場を牧場に戻しつつあります。リゾート開発前、元々ここは北海道らしい牧場でした。新しく観光と両立するファームプロジェクトが進行中です。」と。
トマムがある占冠村の人口増を受けての発信で、こうも綴っていた。
「人口増減率ランキング2020全国TOP50が発表され、北海道占冠村が3年連続で第一位になりました。村の主要産業は観光、星野リゾートが唯一の大型施設なので、トマムの業績向上が人口増加に貢献したと感じています。2度の破綻後に再生を担当したのが2004年、業績が本格的に上がり始めたのが5年後、設備改修・改装をさらに5年間繰り返し、その後は高い収益を生み続けています。『桃栗3年柿8年、リゾート再生丸10年』という感じでしょうか。観光は地方経済に貢献できる産業になり得ますが、長期で取り組み持続可能な形を整える必要があります」
どうやらまだ続くウィズコロナの時代。新しい旅のカタチとして、日本人の国内旅行が見直されている。リゾートホテルや温泉旅館を拠点にして、四季を感じ、土地の味覚を楽しみ、地域の文化にふれることで癒されて、エネルギーをもらう。そこにはいつも「お客様を楽しませたい、自分たちも楽しみたい」と頑張る「観光人材」こと、おもてなしの達人たちが待っている。
本連載はここまで。新施設情報など改めての形で行なっていく。