文=甲斐みのり 撮影=平石順一
全国各地の名産品がいただけるお取り寄せ。特に自粛期間中はいつもより利用した方も多いのでは? 今までは通販していなかった商品が可能になったりと、まだまだ話題はつきません。この連載ではお取り寄せの達人で文筆家の甲斐みのりさんに、ちょっと贅沢な大人のお取り寄せをセレクト。自分はもちろん、贈り物にも喜ばれる商品をご紹介します。
贅沢な鯖缶とワインのマリアージュ
以前、山形でスーパーに立ち寄ると、入口の目立つ場所に数種類の鯖缶がワゴンいっぱい販売されていた。地元の人いわく、山形ではどの家庭にも鯖缶の買い置きがいくつもあって、醤油を加えてそのまま食べたり、素麺やうどんに合わせたり、食卓に欠かせない食材という。そんな話を友人にすると、彼女が生まれ育った長野では、鯖缶は味噌汁の具材の定番と聞いて驚いた。
「鯖缶がブーム」とテレビやweb記事で目にするようになったのはその直後。近所の食材屋の店頭にも洗練されたデザインの鯖缶が山積みされ、我が家でもアレンジしやすい食材として常備し、鯖缶を使ったパスタやサラダが定番化。コロナ禍で家にこもっていたときも役にたった。
さらに贈り物にも鯖缶を選ぶようになったのは、自分で購入するにはためらうけれど、プレゼントされたら嬉しい1缶1000円前後の価格帯のものや、家庭では再現しにくいこだわりの調味料を使った味付け、お皿に移さずそのまま食卓に置くだけでも絵になるデザインの缶が増えたことが大きい。
その最たるが、大阪が拠点の広告制作会社・アバランチの『No.38(ナンバー・サーティエイト)』。2017年に会社が創立20周年を迎えた際、他にない記念品として開発し、数量限定で配布したところ、販売の問い合わせが続いたことで商品化された鯖缶だ。
商品開発のスタートは鯖の選定から。様々な鯖を試食し続け、鯖缶に最も適した脂がのった大ぶりのノルウェー産を厳選。下ごしらえからボイルまで、調理工程を手間をかけて手作業でおこなうことで、蓋を開けたとき美しく、箸でつまめば柔らかく身がほぐれる。
その鯖を最大限に活かす味付けをと、0.1g単位で調味料の調整を行い、パッケージデザイン、
ベーシックに鯖の味を堪能できるのは「三種の厳選胡椒仕立て」。「辛味引き立つガーリックオイル仕立て」を発売した2017年には、洋風味の鯖缶がまだなく、さらに驚きと新鮮な味をと開発されたのが「スパイス香る芳醇カレー仕立て」となる。
そのままホームパーティに使えるセットがあればと実現した今回のコラボレーションだが、もうひとつの理由は、「食の都 大阪」にある。
セットの白ワインは、大阪府柏原市で100年以上続く西日本最古のワイナリー「カタシモワイナリー」の自社農園で栽培された、堅下本葡萄(甲州ぶどう)を100%使用した「柏原ワイン」。実は大阪は大正から昭和初期まで日本一の葡萄の産地だったが、戦後、産業構造の変化により衰退。今再び、柏原のワインビジネスの復興に取り組むカタシモワイナリーの思いと、大阪から世界へ良いものを届けたいというアバランチの思いがひとつになり、実現に至った。
白くシンプルな缶は特別手を加えずに、そのまま食卓に置くだけで、パーティーも自宅の食卓も特別な風景に。バゲットと合わせたり、サラダやパスタやピラフなど、料理の贅沢な食材としても幅広く活かせる。
セットのワインは辛口ですっきりと飲みやすく、上品な酸味は鯖缶だけでなく、さまざまな料理を華やかに引き立てる。大切な人への贈りものに選んだり、記念日やご褒美に自分用に求めたり。特別な味わいをもたらしてくれるだろう。