保育士の専門性を高めよ

汐見:「非認知能力」を高めるべく、体験を重視した教育をまず考えるべきだと思います。非認知能力とは「諦めない力」や「試行錯誤する力」、「目標を設定する力」「他人を思いやる力」など、テストの点数では測れない能力で、遊びなどの体験を通じて養われます。

 一方、保護者にとってのパラドックスは、非認知能力を高める環境の構築が難しいところにあるのでしょう。文明が発展すればするほど、生活はラクになり、試行錯誤する経験がなくなっていきます。

 猛暑日にクーラーのリモコンをオンにすれば「暑い」という問題を解決できる時代です。「今日は暑すぎるから、木陰で涼もう」という風に発想力を鍛え上げることができなくなってきているのです。

 ではどうすればいいのか。まず、国として考えるべきは保育の専門性を上げていくことです。

 人類は20万年、家族だけが子育てをしてきたわけではありません。未就学児は地域の中で「遊んで」育ってきたのです。子どもに自分の頭で考え、自分で決断させる環境を用意できるのは、現代では保育・こども園がほとんど唯一と言っていいでしょう。

 親が子育ての責任を持つことは当然ですが、昼間は仕事や家事もある。子どもと遊ぶとなると、少しでも危ないことをしようものなら「危ないでしょ!」とやめさせてしまうのが親心です。

 そこで未就学児の「遊び」に対する専門性の高い保育士が必要になってくるわけです。

 未就学児の発達に知見のある保育士ならば、どこからどこまでが「体験」として必要か、どのラインを越えれば危ないかを見極めることができます。高い専門性を持つ保育士を育てるためにも、給料をせめて小学校教諭並みにすべきだと思います。

 子どもにとっては、昼間は保育園で真剣に遊ぶことでたくましさを身につけ、朝夕は家で親にたくさん愛してもらう、という環境が理想なのです。