詰め込み教育、以前よりマシになったが

汐見:裏を返せば、子どもに愛情を与えて大脳辺縁系を育てることさえできれば、大脳皮質とのつながりが強固なものになり、意欲的にさまざまなことに取り組めるようになっていくのです。

 後で詳しくお話ししますが、1990年代に早期教育がブームになり、未就学児に徹底的に詰め込み教育をさせた弊害として、異常に攻撃的な行動に出る子どもや家に引きこもってしまう子どもが続出しました。

 もっとも、現在は大脳皮質に刺激を与えて「知識を詰め込ませる」ことだけをウリにする(未就学児向け)早期教育のニーズは激減しています。未就学児向けの学習塾も存在しますが、今は「体験学習」をメインにしたものが人気なのではないでしょうか。要は、教育界も親も、早期教育の失敗と限界に気づいてきているのです。

 中学受験の問題も、一昔前までの知識特化型問題というよりは、子どもに考えさせるような設問を多く出すようになっています。今のお受験に全く問題がないとは言いませんが、それでもまだ以前よりはマシにはなってきているでしょう。

──なぜ、未就学児に対する過度な早期教育は必要ない、という意見が教育界で主流になってきたのでしょうか。