国宝の本殿と拝殿のある「宇治上神社」

宇治上神社 鳥居と参道 写真=kamogawa/イメージマート

 引き続きお隣の宇治上神社へ。まずは祭神に注目したい。宇治神社では祭神は一柱で菟道稚郎子命のみだったが、宇治上神社では、それに加えて父親の応神天皇と兄の仁徳天皇の三柱が祭神となっている。そもそもこの二つの神社はひとつのものと考えられていたが、明治に入ってから分離されたのだという。

 宇治神社の本殿も国重要文化財に指定された立派な建物だが、宇治上神社の本殿と拝殿はさらに希少性が高く、国宝に指定されている。両社とも創建は古事記、日本書紀の時代にまで遡ると伝承されているが、実際にいつ創建されたかは定かではない。しかし、平安時代に平等院の鎮守社として崇敬されたのは確かなことだ。

宇治上神社 本殿 写真=Gengorou/イメージマート

 宇治上神社の本殿は平安時代後期の造営とされ、現存する神社の建物としては日本最古のものだ。本殿の正面は格子になっており、覗くと内部が見える。そこには正面一間流れ造りの小さな社が三棟並んでいる。祭神が三体であるため社も三棟あるのだ。そして本殿と呼ばれる建物は、実はこの三棟を保護するための覆屋である。これは、他では見られない珍しい形式だ。

宇治上神社 拝殿 写真=Gengorou/イメージマート

 本殿の手前の拝殿は鎌倉時代初期に建てられたもので、これもまた、現存する日本最古の拝殿とのこと。少し前に流行した寝殿造りの形式が継承されているのが特徴である。神社の建物は式年遷宮などで建て直すことが多く、寺の建物と違って古いものが残りにくい。そのためこちらの建物はたいへん貴重であり、国宝だけでなく世界遺産の指定も受けている。

 二社でのお参りを終えたら、源氏物語ゆかりの「さわらびの道」を辿って、源氏物語ミュージアムまで行ってみよう。さわらびという名は、源氏物語の巻のひとつ「早蕨」にちなんでいる。緑濃い美しい道で、土産物屋や飲食店は少なく、雅びな時代に思いをはせながらそぞろ歩くのにぴったりだ。

さわらびの道 写真=フォトライブラリー

 源氏物語ミュージアムはビジュアルで物語の世界を体感できる展示物が多く、ファンでなくとも楽しめる施設となっている。現在の京都はどこに行ってもたいへんな人出で、なるべく人の少ない時期や場所を探さないと、本来の風情を味わうことはできない。宇治上神社一帯やさわらびの道は、わたしが訪れた3月の平日はまだそれほど混雑していなかったが、「光る君へ」が佳境に入ると訪れる人も増えて行くだろうから、できれば早めに行くことをお勧めする。