最後に、“変えられない”と思っている日常を見直すための一遍の詩、サム・ウォルター・フォスの「子牛の通った小道」を紹介したい。働き方を見直す皆さんにとって改革を考えるきっかけになれば幸いである。

「子牛の通った小道」 サム・ウォルター・フォス
 
 野原があった。そこへ一匹の子牛がやってきた。子牛は気まぐれに、くねくね曲がりながらその野原を通って行った。
 
 その翌日、狩人に追われた鹿がやってきた。鹿は子牛の通った、草がねているあとを逃げて行った。・・・緊急の時は、創造しているひまはない。ひとの通ったあとを通るものだ。・・・狩人もそこを通って追って行った。草はますますふみつけられ、はっきりと曲がった道ができた。
 
 その次の日は羊が来た。羊は、その曲がりくねった小道を、曲がりくねっていると不平を言いながら通っていった。
 
 しばらくたって、こんどは旅人が来た。旅人もその曲がった道を通っていった。
 
 こうして、草はとれ、土面が顔を出し、曲がりくねった小道ができ上った。こうなると、村人も、旅人も、馬車も、犬も、そこを通る。
 
 月日は矢のように過ぎ、その曲がりくねった小道は大通りになった。村の家々は、その通りに沿って曲がりくねって建てられていった。またたくうちに、そこは大都会の中心街となった。
 
 鉄道が敷かれたが、その線路も道に沿って曲がっていった。
 
 何十万人もの人々が、今もなお、三百年も昔に通った、あの子牛に導かれて、くねくね曲がりながら通っていく。
 
 確固たる前例なるものは、こんなにまでも尊ばれるのだ。
 
(出所:『逆M&Aの成長戦略』羽鳥宏著、ダイヤモンド社、1992)
 

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