左にはカルティエ現代美術財団と日本のアーティストとの絆

「カルティエと日本 半世紀のあゆみ「結 MUSUBI」展 ― 美と芸術をめぐる対話」展示風景 © Cartier

 表慶館の左側は、「カルティエ現代美術財団」が所蔵・展示してきた国内外の現代アーティストの作品を展示する。この財団は、企画展、ライブパフォーマンス、講演会、といったプログラムを通して、あらゆる分野の現代美術を世界に広めることをミッションとする民間文化機関で、1984年に創設されている。

 以来、日本人アーティストの発掘や再発見のパイオニアとして、彼らに探求の自由を提供しながら、ヨーロッパの観客に作品を紹介してきた。アーティストのパトロン的な役割に加え、アーティスト同士が出会い、交流するコミュニティも築き上げている。それを伝えるのが、横尾忠則によるアーティストたちの肖像画である。横尾が描く肖像画シリーズ20点を通して、活動の中心に「人間と人間との関係」を置きアーティストを尊重してきたカルティエ財団そのものの肖像が浮かび上がる。

「カルティエと日本 半世紀のあゆみ「結 MUSUBI」展 ― 美と芸術をめぐる対話」展示風景 © Cartier

 本展で紹介されるアーティストは、松井えり菜、村上隆、横尾忠則、杉本博司はじめ総勢28名。ファッションの分野からは三宅一生。彼らがカルティエ現代美術財団と築き上げてきた関係性を軸に、現代アートにおける日仏の結びつきを実感させる。

「カルティエと日本 半世紀のあゆみ「結 MUSUBI」展 ― 美と芸術をめぐる対話」展示風景 © Cartier

 個人的に、このエリアで最も心を動かされたのが、北野武による絵画群だった。映画監督、タレントとして世界に名が轟いている北野だが、画家としても際立った個性を放っている。初期作品から最新作まで、ユーモラスだったり皮肉が効いていたり、あるいは深い洞察を感じさせたり、映画や漫才にも通底する北野節が絵画でも炸裂している。

 実はカルティエが北野武の画家としての活動を初期から支援していたということを、今回、初めて知った。2010年にはパリのカルティエ現代美術財団にて北野氏の個展が開催されている。この展覧会こそが、画家・北野武を国際的なアーティストとして認知させるきっかけの一つとなったという。

 早い時期から特別な才能を発見し、支援するというカルティエ現代美術財団の姿勢をリアルタイムで実感できるのが、ほかならぬ中央のエントランスホールに飾られる澁谷翔の作品である。