関東でも最強のパワースポットとされる蛇の池
本殿でのお参りを終えたら、境内に点在する摂社末社やパワースポットをゆっくり巡ろう。まずは、楼門向かって右側にある門客人神社。こちらの祭神は足摩乳命と手摩乳命。須佐之男命の奥さんの稲田姫命の両親、つまり八岐大蛇に次々と娘を食べられて須佐之男命に助けを請うた出雲の民である。こちらにそうした出雲系の神々が祀られるより前、この場所には別の地主神が祀られていたという。
社伝には、第十三代成務天皇の御代に出雲族の兄多毛比命という人が勅命により武蔵国造となり、この神社を奉崇したと書かれている。武蔵国は遠い昔に出雲からやってきた人々が開拓した土地だという説があるが、この神社の歴史もそれと重なる。
その隣の御嶽神社と参道の右手奥にある天津神社は、実は旧本殿である。本殿が現在の形になる以前は、三柱の御祭神それぞれに本殿があったという。その後現在の本殿には三柱が一緒に祀られ、稲田姫命を祀る本殿だった建物が御嶽神社の社殿、大己貴命を祀る本殿だった建物が天津神社の社殿になった。今は、御嶽神社の祭神が大己貴命と少彦名命、天津神社の祭神が少彦名命であるのも面白いところだ。
楼門の手前には「神池」と呼ばれる池があり、畔に酒造の神である大山咋命を祀る松尾神社、少し離れたところには赤い鳥居が並ぶ稲荷神社もある。池に浮かぶ小島には宗像三女神(多起理比売命、市寸島比売命、田寸津比売命)を祀る宗像神社も鎮座している。市寸島比売命は弁財天と同一視される神であり、このように池の中の小島に祀られていることが多い。
数々の摂社末社でそうそうたる神々にご挨拶したら、最後に、この神社のみならず関東でも最強のパワースポットとされる蛇の池に行こう。本殿に向かって左側の奥まったところにある小さな池だが、実は地中から清水が湧いており、先に歩いた神池やその先に広がる見沼の水源のひとつでもある。このように神秘的な湧水があったために、この地に氷川神社を建てたと言われる。つまりここがこの神社発祥の地ということだ。
かつては一般人が足を踏み入れることができない禁足地だったが、今は道ができて近くまで行くことができる。蛇は龍と同じもので水神の化身と見なされる。祭神の須佐之男命は八岐大蛇を退治したことから水を治める神とされ、そのご神徳を讃えるため蛇の池と呼ばれるのである。この場所の霊気はひじょうに強く、天から降臨する龍神様の姿を見た人もいるそうだ。由緒ある神社の多くは古くからの神域であった場所に存在し続けているため、こんな都会の真ん中にも、異世界を垣間見るようなスポットが残されている。